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設計思想とは何だろう?最強でロングセラーの戦闘機F-15EXイーグルII

設計思想とは?最強の戦闘機F-15EXイーグルII 設計のレベルアップ

ヒットした新製品や設計開発の成功理由の話には、「設計思想」という言葉が出てくることが多いと感じています。

設計思想の言葉の意味を調べてみると、文字通りフィロソフィー、アイディア、あるいは、コンセプトなど。何となくわかったような気にはなりますが、イメージはあいまいです。

「設計思想が重要です」とか、「設計思想がしっかりしている」とかいうこともありますが、そもそも設計思想とはどの様なものなのでしょうか?

これまで、商品企画や設計・開発、モノづくり、品質管理やアフターサービスなどを経験してきましたが、「設計思想は重要なものらしい」ということは何となく理解しているような気がします。

しかし、「設計思想について教えてください」といわれると、何となくわかったようなわからないような説明をしそうですが、「設計思想とは何なのか分かりません」というのが正直なところです。

設計思想の説明になるとは思えませんが、設計思想とはどのようなものか考えるヒントになると思い、好きな戦闘機の1つ最強の戦闘機F-15EXイーグルIIを例に、設計思想について考えてみました。

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設計思想が優れていれば成功するようです

製品が成功した(ロングセラー等)理由を考え整理したら、設計思想について何か分かるかもしれないと思い、

  • 開発した製品が成功したのは、「設計思想が優れていたから成功した」

と仮定します。

ロングセラーになるということは、長く売れているだけでなく、長く作り続けることができるということでもあります。

設計・開発の視点では、基本設計が優れていれば、

  • 長期間(10年以上)にわたり、
  • 基本設計を大きく変更することなく、
  • 環境の変化や新たな要求に対応し、
  • 新しい技術などを取り入れることができる。

といえます。

基本設計が優れているとは、

  • 設計思想も時の流れと共に陳腐化しない。

とも考えることができそうです。

以下、ロングセラーの対象に、個人的に好きな戦闘機の1つF-15EXイーグルIIの基本設計に注目しながら、設計思想について考えます。

最強でロングセラーの戦闘機F-15EXイーグルII

ロングセラーの製品として、基本設計に優れた戦闘機といわれている、F-15イーグルシリーズを取り上げます。

初代はF-15イーグル、最新型がF-15EXイーグルIIです。

同時期に開発された機体には、F-16ファイティング・ファルコンがあります。

  • F-16ファイティング・ファルコンは、戦闘機のベストセラーといわれる戦闘機です。

 

初代F-15イーグルは、1970年代に初飛行していますが、今でも現役で第一線で使用されています。

  • なお、自動車は、車体とエンジンを同一メーカーが開発・製造をするのが一般的ですが、航空機の場合は、機体とエンジンの開発・製造は別メーカーです

機体の基本設計に優れており、中身(アビオニクスや搭載可能武装など)は、段階的にアップグレードされていますが、外観にほとんど変更のない機体です。

F-15イーグルは2基のエンジンを搭載し、マッハ2超の要求満足するため保守的な設計をしたといわれています。

F-15EXイーグルII:最強の戦闘機F-15イーグルの後継機

F-15EXイーグルIIは、最強の戦闘機F-15イーグルの後継機です。

F-15Eストライクイーグルは、ハイパワーのエンジンを2基搭載することで、様々な武装を搭載可能で、最高速度はマッハ2超、長距離航行が可能な最強の戦闘機です。

F-15EXイーグルIIは、外観こそほとん後見分けがつきませんが、最新のアビオニクスに更新されるなど中身は別物です。

  • F-16ファイティング・ファルコンでは当初より採用されていたフライ・バイ・ワイヤ・システムをF-15EXイーグルIIはようやく採用しています。

F-15の米国空軍への導入状況を簡単に説明します。

  • 1972年7月:F-15A初飛行
  • 1974年11月:F-15AとB最初の引き渡しと訓練開始(F-15AとF-15Bは、単座と複座の違いです。)
  • 1976年1月:F-15初号機引き渡し

その後、F-15CとD、F-15Eとなり、最新がF-15EXとなっています。

  • 2024年11月現在、量産8号機までが米国に納入されています。

F-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルの詳細は、以下の記事をご参照ください。

  • F-15EXイーグルII:最強の戦闘機F-15イーグルの後継機
  • ミサイル警報システム(CMWS)
  • F-15Eストライクイーグル:最強のマルチロール戦闘機

最新型でもほぼ変わらない外観

下図は、F-15EXイーグルII初号機の写真です。

  • 外観上の違いは、操縦席付近の機体外側の突起物(CMWS)が追加された程度です。
  • CMWS(Common Missile Warning System)は、ミサイル警報システムです。
F-15EXイーグルII:初号機

370th Flight Test Squadron conducts air refueling operations with F-15EX Eagle II’s An F-15EX Eagle II from the 40th Flight Test Squadron, 96th Test Wing out of Eglin Air Force Base, Florida, flies in formation during an aerial refueling operation above the skies of Northern California, May 14. The Eagle II participated in the Northern Edge 21 exercise in Alaska earlier in May. (Air Force photo by Ethan Wagner)

図1 F-15EXイーグルII:初号機

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、F-15Eストライクイーグルの写真です。

  • F-15EXイーグルIIとほとんど見分けがつきません。
F-15Eストライクイーグル

Strike Eagle over the northeast An F-15E Strike Eagle departs after receiving fuel from a KC-135 Stratotanker, over the northeastern United States, Aug. 24, 2022. The F-15E is a dual-role fighter designed to perform air-to-air and air-to-ground missions with an array of avionics and electronics systems that give it the capability to fight at low altitude, day or night and in all weather. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Hiram Martinez)

図2 F-15Eストライクイーグル

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-15シリーズとフライ・バイ・ワイヤ・システム

最新型のF-15EXイーグルIIの大きな変更点は、フライ・バイ・ワイヤ・システムの採用です。

フライ・バイ・ワイヤ・システムについて簡単に説明します。

飛行中に進行方向を変える場合、パイロットは操縦桿を動かして機体の進行方向を変えることができます。

従来、進行方向を変える時に機体側は、パイロットが操縦桿を動かした分だけ、通常のケーブルやリンケージにより補助翼が動き、機体の進行方向が変わります。

フライ・バイ・ワイヤ・システムを採用すると、パイロットが操縦桿を動した分の(ケーブルやリンケージの代わりに)電気信号が伝わり、アクチュエータが補助翼を動かし、機体の進行方向が変わります。

フライ・バイ・ワイヤ・システムにすることで、ケーブルやリンケージが電気信号を伝えるケーブルに代わるため、軽量化と機体内の省スペース化につながります。

同時代に開発されたF-16ファイティング・ファルコンは、F-15イーグルと同じエンジンを1基搭載し、当時の最新技術の1つであるフライ・バイ・ワイヤ・システムを採用しています。

しかし、F-15イーグルでは、保守的あるいは正統派といえる設計・開発の進め方だったため、F-15EXイーグルIIを待たねばならなかったのかもしれません。

マッハ2超の最高速度、様々な武装の搭載、航続距離などの要求を実現するために、従来とは全く異なる操縦系統となるフライ・バイ・ワイヤ・システムを採用するリスクをとらなかったとも考えられます。

参考:F-15Eストライクイーグルの諸元

F-15EXイーグルIIは最新型なので、諸元等は公開されていません。

そこで、F-15EXイーグルIIの前の世代に当たる最強のマルチロール戦闘機F-15Eストライクイーグルの諸元を下表に示します。

全長 19.44 m
全高 5.6 m
全幅 13 m
エンジン
  • P&W製F-100-PW-220 or 229
  • アフターバーナー付ターボファンエンジン
  • 推力:11,339~13,154kgf (1基当たり)
  • 推力:22,679kg~26,308kg (2基)
重量 17,010 kg
最大離陸重量 36,450 kg
速度 3,017 km/h (マッハ2.5以上)
高度 18,288m
航続距離

3,840km

  • コンフォーマル燃料タンクと外部燃料タンク3基を使用した場合のフェリー航続距離

F-15イーグルの設計思想とは

Webサイトの製品紹介には、製品のセールスポイント(優れた点など)が説明されています。

そこで、F-15EXイーグルIIのWebサイトを調べてみました。以下、意訳なので正確ではないことご了承願います。

F-15EXイーグルIIのキャッチコピーを列挙します。

  • 戦術戦闘機隊のバックボーン
  • クラス最高のペイロード(搭載できる武装の種類・量)、航続距離、速度
  • 現在および将来のあらゆる戦術戦闘機部隊のバックボーン(基幹)として機能
  • 実績(無敗の戦闘記録)と最先端の設計および技術を組み合わせた、次世代能力を提供
  • (ステルス機よりは)手頃な価格で信頼性の高いパフォーマンス
  • 将来の状況に応じたアップグレード
  • 米国以外の国を含めた相互運用性

キャッチコピーからは、

F-15EXイーグルIIへの要求は、

  • 戦闘機部隊の主力
  • ペイロード、航続距離、速度
  • 将来のアップグレードや相互運用性

を重視していると考えています。

見方を変えてみると、

  • これらの要求は、機体の基本設計を大きく変更することなく、将来のアップグレードは機体の中身を更新することで対応できる。

ということになります。

つまり、初代F-15(F-15シリーズ)の基本設計が、

  • 構造的にはペイロード・航続距離・速度の要求に耐える機体設計
  • アップグレードは、内部システムを更新で対応できるシステム設計

といえますので、これが設計思想といわれるものなのではないかと考えています。

はかせ
はかせ

優れた設計思想とは、モノにより違い、時の流れによる陳腐化を受けにくい設計の考え方のようなイメージです。

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まとめ

ヒットした新製品や設計開発の成功理由の話には、「設計思想が重要です」とか、「設計思想がしっかりしている」などといわれます。

そもそも設計思想とはどの様なものなのでしょうか?

「設計思想は重要なものらしい」ということは何となくわかりますが、しかし、「設計思想について教えてください」といわれると、正直なところ困ってしまいます。

設計思想とはどのようなものか考えるヒントになると思い、好きな戦闘機の1つ最強の戦闘機F-15EXイーグルIIを例に、設計思想について以下の項目で説明しました。

  • 設計思想が優れていれば成功すると考えると
  • 最強でロングセラーの戦闘機F-15EXイーグルII
    • F-15EXイーグルII:最強の戦闘機F-15イーグルの後継機
    • 最新型でもほぼ変わらない外観
    • F-15シリーズとフライ・バイ・ワイヤ・システム
    • 参考:F-15Eストライクイーグルの諸元
  • F-15イーグルの設計思想とは
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
はかせの詳細は「はかせ」をクリック

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