設計と製図、あまり意識的な使い分けはしていないようですが、設計する人と製図をする人のイメージには、次の様な違いがあります。
- 設計をする人:QCD(品質、コスト、納期)の要求のバランスとるために、頭を使ってうまくとって図面を仕上げるイメージ
- 製図をする人:(今ではあまり聞かなくなりましたが、)トレーサー、CADオペレーター、あるいは、モデラーのイメージ
ここでは、設計と製図の違いについて説明します。
設計と製図の関係
設計をする人には、QCD(品質、コスト、納期)の要求のバランスとるために、頭を使ってうまくとって図面を仕上げるという技術者のイメージがあります。
製図をする人には、(今ではあまり聞かなくなりましたが、)トレーサー、CADオペレーター、あるいは、モデラーといった図面を描く作業をする人のイメージがあります。
設計をしている人と製図をしている人を見ていると、どちらもCADの操作をしているようにしか見えません。
大きい会社では、設計する人と製図をする人が別の場合もありますが、小さいモノづくりの会社では、ある製品を担当する設計者は基本1人です。つまり、設計も製図もするということです。
ある製品の利害関係者から見てよい設計者のイメージは、
- お客様や担当営業にとっては、要望を満たすのは当然で期限までに図面を出してくれる。変更にも柔軟に対応してくれる技術担当者
- 実際にモノづくりを行う自社あるいは協力会社にとっては、誤りがなく、モノが作れる、できれば作りやすい図面を描いてくれる技術担当者
実際にこの様な技術担当者であれば、結果的に次の様なことになりますので、会社として利益を確保できるともいえます。
- 自社にとっては、競合他社よりも同じコストであれば短納期で出荷できる。
- ムダ(図面誤りなどによる追加コスト)のないモノづくりができる。
設計と製図の関係
ここで、設計と製図との関係について整理してみます。
設計は、お客様からの要求だけでなく、自社の要求を満たすために、必要な材料、形状(寸法)など様々なことを考慮して、要求を満たす製品を作り上げていく業務です。
製図は、設計作業の最終工程の1つで、設計のアウトプット(組図)を実際の製品にするための部品に分解し、実際に制作できる1つ1つの部品の図面(部品図)を作る作業です。
製図が設計作業最終工程であり、製作に必須な部品図を作る業務であることから、次の様な環境に置かれていることも珍しくはないようです。つまり、製図が設計の下請け作業(業務)の様に思われているようです。
- 「設計は終わっているのだから早く図面を出してくれ」と、設計を含めたこれまでの遅れを取り戻すかのように急がされる。
- 「図面(部品図)はミスが無くて当たり前」というプレッシャーがある。
別の視点から、実際にモノづくりをする側から見てみると、極論すればどんな設計をしたかよりも、図面(部品図)を見てモノが作れること、つまり、製図の方が重要です。
製図とは、CADの計画図(組立図)を投影図にして、部品加工のための寸法を記入した図面(紙の資料)を作る作業ではありません。
製図とは、設計者が作り出した1つ1つの部品について、品質やコストを満足させ、設計意図を実現させるための作業です。
製図には、次の情報が必要です。これらの情報を的確に製図作業者に指示することなしに、図面品質や製品品質を向上させることはできないのです。
- 寸法基準を決める。(部品のどこを基準にするか)
- バラツキを制御するために寸法公差、幾何公差を決めて記入する。
- 表面性状を決める。
- 材質を決める。
- 表面処理を決める。
CAD上の計画図(組立図)は、製図しなければ、部品というオブジェクト(形状)をCAD上にレイアウトしたイメージ図のままです。
設計とは、CAD上にアイデアを駆使した計画図(組立図)を描くことだけではなく、上述した製図に必要な情報を決めたり指示したりすることです。
設計者への製図の教育
小さい会社では、そもそも設計者が少ないため、設計と製図を1人で担当する場合がほとんどです。
また、設計案件についても、全くの新規設計は少なく、過去の類似品の修正で済む場合が多いため、必然的に過去の類似のCADデータを利用して設計し図面を描くことになります。
この過去のCADデータというのが、実は設計者自身の大変さを増やす原因になっている場合があります。
そもそもの話になりますが、類似のCADデータを探して、加工して設計・製図しているような場合には、設計の根拠となった資料も(当然)なく、CADデータの品質も標準化されたものではない(設計者によって図面の描き方が違う)ものです。
それでもゼロからCADデータを作るよりは楽なので、必要に迫られ類似データをコピーしてきて加工を加え・・・となっている場合が少なくありません。
この様な状況(環境)では、設計・製図をするというより、過去のCADデータを探して、修正する作業に追われることになります。
必然的な結果として、アウトプットとして出てくる図面に誤りがあります。さらに、数多くの設計・製図を経験しているにも関わらず、現実には次のような状態が続いていたりします。
- 加工できる形状とできない形状の違いがわからない(加工の知識が無い)
- 設計者自身がどこに公差を入れるべきか分からない(設計思想がない)
- どのくらいの公差値を記入すればよいのかわからない(加工の知識が無い)
モノづくり側から図面の問い合わせがあっても、「コピペしました。」と言い訳したところで、ではどうするかは結局その設計者が考え図面を修正して対応することになります。
このような誤りのある図面に対する対応時間も、目立ちませんが設計者の時間を奪う要因の1つとなっています。
設計思想の基本もなにもないのですから、仕方ないというより必然的にそうなってしまう訳で、これを設計者の力量(スキル)不足というのは、ちょっと違うと考えています。
こうして見た目には経験を積んでいる設計者ですが、設計・製図の力量(スキル)向上は、よくて自分が失敗したことを繰り返さないというレベルとなります。
会社全体で見ると、設計者はいつも忙しく時間がなく、いつまでも似たような設計や製図のミスが繰り返されます。人(設計者)が変わっても設計や製図のミスは繰り返されてしまいます。
設計や製図のミスの繰返しを減らしていくには、設計・製図、特に新規設計の少ない小規模の会社では製図についての教育が重要かつ必要です。
設計経験者はいるけれど、教えられる人がもはや会社にいないというのが現実かもしれません。
改めて製図の重要性を知る
設計作業と比べると、製図作業は技術的なレベルが低いというイメージがあるようです。設計者の中でも、製図より設計の方が上だというイメージがあるようです。
設計のアウトプットと実際のモノをつなぐのが製図によって作られた図面です。
設計のアウトプットを、モノづくりの現場では、製図のアウトプットである図面によりモノを作っています。
設計作業と製図の作業は、どちらが重要かといったものではなく、車の両輪の様にどちらも重要で、車(自社)にあった設計と製図のバランスを取ることがポイントです。
ノウハウの蓄積という点では、設計の記録は設計資料、製図の記録が図面と考えています。
製図のルール
製図にはルールがあります。JIS規格にも定められていますが、これに加え会社独自の製図のリールもあるのが一般的です。
では、何のために製図のルールが必要なのか?
極論かもしれませんが、製図には「図面を見た人が同じ解釈になる図面であること」が求められるから製図のルールが必要です。
「図面には、加工に必要な寸法漏れがなければよい。」わけではないのです。
では、どうするか?
この答えは、
- 自社の外ではなく、社内にある。
- まずは、自分たちでできることがある。
と私は考えています。
具体的にどうするか、抽象的な表現しかできなくて申し訳ありませんが、次の様なイメージです。
- 現在の実力や環境を見つめて、あるべき姿を想像して、今できることはすぐやって小さな成功体験を積む。
- 自部署でできる、1年でできることに取り組む。
- 良くも悪くも結果は出るので、やがて他部署をからめた目標設定もできるようになる。
製図のルールがあると、実は設計者も楽になります。
設計者自身が設計業務を通じて製図のルールの効果を感じることは難しいのかもしれません。
部外者から「(いい意味で)最近図面が変わったね」と言われ、ある時振り返ってみてふと気づくといった感じだと思います。
DoからはじめるPDCAや、あきらめない継続的改善と共にISO9100(品質マネジメントシステム)を自分たちのために利用して欲しいと考えています。
まとめ
設計と製図、あまり意識的な使い分けはしていないようですが、設計する人と製図をする人のイメージには、次の様な違いがあります。
- 設計をする人:QCD(品質、コスト、納期)の要求のバランスとるために、頭を使ってうまくとって図面を仕上げるイメージ
- 製図をする人:(今ではあまり聞かなくなりましたが、)トレーサー、CADオペレーター、あるいは、モデラーのイメージ
ここでは、設計と製図の違いについて以下の項目で説明しました。
- 設計と製図の関係
- 設計と製図の関係
- 設計者への製図の教育
- 改めて製図の重要性を知る
- 製図のルール