目には見えない音や振動を可視化することができる計測や分析などの様々なツールがあります。
ここでは、直接目にすることができな音や振動を、計測データから可視化する音振の可視化について説明します。
計測データから音や振動を可視化するイメージ
音振のデータを計測するセンサーと得られるデータとの関係は次の通りです。
- 加速度センサーを使うと、センサー設置点の振動(加速度)を計測することができます。
- マイクロフォンを使うと、マイクロフォン設置点の音(音圧)を計測することができます。
振動計測を例に振動の可視化のイメージについて説明します。
下図は、計測データから可視化するイメージ図です。
- 計測点が1か所の場合、計測点の1つのデータしかわかりません。
- 計測点が2つに増えると、各計測点間をつないだ直線で表すことができます。
- 計測点が3つになると、各計測点をつないだ面で表すことができます。

音振の計測データを可視化するイメージ
図1 音振の計測データを可視化するイメージ
言い方を変えると、次のようなイメージとなります。
- 計測データが1つの場合、数値のみです。
- 計測データが2つになると直線になります。つまり、向き(方向)を表すことができます。
- 計測データが3つになると三角形の面になります。つまり、分布を表すことができます。
野球のバットの振動を可視化するイメージ
音や振動の可視化について、Google先生に聞いてみると、ほぼ音の可視化の情報がでてきます。

音振もニッチですが、振動は音よりもニッチということなのでしょう。
さて、音を計測するセンサーは、マイクロホンです。
- マイクロホンは、音が伝わってくる空気の圧力を検出します。
- マイクロホンを多数並べれば、その空間の音場(音の分布)を可視化できます。
振動についても同様で、振動を計測するのは加速度センサーです。
- 加速度センサーは、センサーを設置した点の振動(加速度)を検出します。
- 加速度センサーを多数なればれば、計測対象のセンサー接地面の振動状態を可視化できます。
下図は、バットの振動データ(伝達関数)から、バットの振動モード形として可視化するイメージです。
- 1つの計測点からは伝達関数(アクセレランスと位相、振動の大きさと向き)がわかります。
- 加速度センサーの設置場所を変えて、5点で計測した伝達関数を使うと、下図左側の振動モード形を得ることができます。これが、振動の可視化です。

バットの振動データ(伝達関数)を可視化するイメージ
図2 バットの振動データ(伝達関数)を可視化するイメージ
可視化の詳細は、以下のKindle本をご参照ください。
- 「ハンマリング試験から始めるモード解析入門」
- 「FreeCADで始めるCAE設計入門」
参考:可視化の落とし穴
計測データ(計測点)の数が増えれば増える程、音や振動を表す画像はきれいになっていきます。
音振の可視化では、各計測点の間を直線で結ぶのが基本です。
このため、計測点を増やすことで、各計測点の間の距離が短くなり、可視化した曲線や曲面は滑らかになっていきます。
可視化した曲線や曲面を滑らかにするだけであれば、各計測点の間を補間することでも可能です。
しかし、この補間することは、各計測点の間のデータを作り出してしまうことになり、計測データの信頼性を下げることになってしまいます。
多点計測による振動モード形を観察する時には、きれいなグラデーションによる振動モード形だけでなく、ワイヤーフレームによる振動モード形も観察します。
一見するときれいなグラデーションの方が実際の振動モードを表していると思いがちですが、実測データから判断するためにはワイヤフレームをよく観察した方がよいと考えています。
まとめ
目には見えない音や振動を可視化することができる計測や分析などの様々なツールがあります。
ここでは、直接目にすることができな音や振動を、計測データから可視化する音振の可視化について、以下の項目で説明しました。
- 計測データから音や振動を可視化するイメージ
- 野球のバットの振動を可視化するイメージ
- 参考:可視化の落とし穴

可視化では、何のデータ、どのこデータを見ているのか意識するようにしています。