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設計思想とは?最強のステルス機F-22ラプターとライバル試作機YF-23

YF-23ブラックウィドウIIとF-22ラプター 設計のレベルアップ

設計思想という言葉から入ると難しいイメージがありますが、要求をどの様に実現していくかの考え方と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

ステルス機であれば、機体に受けたレーダー波をできるだけレーダーに反射しないようにすることが要求です。

  • この要求を満たすために、レーダー波を吸収したり、レーダーの方向とは違う方向に反射すればよいこととなります。
  • レーダー波の吸収は機体の表面処理の設計問題になり、レーダー波の反射はどの様に反射させればよいのかの設計問題となります。

ここでは、最強のステルス機F-22ラプターのライバル試作機だったYF-23を例に、ステルス性の高い機体形状について説明します。

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戦闘機のステルス性とは

最新のステルス機は、航空自衛隊でも採用されているF-35AライトニングIIです。

最新のステルス機F-35AライトニングII

220511-F-KM531-1379 F-35A Lightning II Take Off An F-35A Lightning II assigned to the 419th Fighter Wing, Hill Air Force Base, Utah takes off from the Air Dominance Center during Sentry Savannah on May 11, 2022. Sentry Savannah is the Air National Guard’s largest air-to-air, joint aerial combat exercise which tests the capabilities of our warfighters in a simulated environment and trains the next generation of fighter pilots for tomorrow’s fight. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Erica Webster)

図1-1 最新のステルス機F-35AライトニングII

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

ステルス性が高いとは、航空機や地上のレーダーでは全く観測されない(映らない)ということではありません。

航空機や地上のレーダーから、実際の大きさよりも小さい物体として観測されるということで、

  • ステルス性能が高いとは、低観測性に優れている

ということです。

もう少し具体的に説明します。

レーダーに映るとは、

  • レーダーから放射されたレーダー波が、目標(航空機)に当たり、反射されて戻ってくるレーダー波を検出する。

ことです。

目標(航空機)から反射されてくるレーダー波を処理することで、航空機の大きさや位置を知ることができます。

イメージ的には、第5世代のステルス戦闘機は、第4世代の戦闘機よりも、受けたレーダー波を反射する量が1/1,000から1/10,000になっているといわれています。

  • 第5世代戦闘機:最強のステルス機F-22ラプターや最新のステルス機F-35AライトニングIIなど
  • 第4世代戦闘機:最強の戦闘機F-15EXイーグルIIやF-15Eストライクイーグル、F-16ファイティング・ファルコンなど

代表的な機体の写真と詳細説明のリンクを以下に示します。

最新のステルス機F-35AライトニングII

F-35ライトニングIIシリーズは、標準タイプのF-35A、短距離離陸/垂直着陸が可能なF-35B、及び、空母艦載機のF-35Cとがあります。

下図は、最新のステルス機F-35AライトニングIIの写真です。

  • 米国以外でも運用されている機体で、ステルス機のベストセラーになるのかもしれません。
最新のステルス機F-35AライトニングII

220511-F-KM531-1379 F-35A Lightning II Take Off An F-35A Lightning II assigned to the 419th Fighter Wing, Hill Air Force Base, Utah takes off from the Air Dominance Center during Sentry Savannah on May 11, 2022. Sentry Savannah is the Air National Guard’s largest air-to-air, joint aerial combat exercise which tests the capabilities of our warfighters in a simulated environment and trains the next generation of fighter pilots for tomorrow’s fight. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Erica Webster)

図1-1(再掲) 最新のステルス機F-35AライトニングII

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-35AライトニングIIの詳細は、以下の記事をご参照ください。

F-35AライトニングII:ステルス戦闘機標準型の空軍タイプ
F-35AライトニングIIは次世代のステルス機で、F-16やA-10などの後継機でもあり同盟国にも提供されます。F-35シリーズには、F-35Aの他、艦載機のF-35C、垂直離着陸可能なF-35Bがあります。F-35Aについて米国空軍のWe...
比べてみよう:F-35ライトニングII、標準のA、STOVLのB、艦載機のC
F-35ライトニングIIには、標準型のF-35A、短距離離陸/垂直着陸可能なF-35B、空母艦載機F-35Cがあります。戦闘機として最も優れたF-35A、ステルス性などを共通化し用途に適した変更が加えられたF-35BとF-35Cについて、F...

最強のステルス機F-22ラプター

下図は、最強のステルス戦闘機F-22ラプターの写真です。

強のステルス機F-22ラプター

210308-F-AO039-9017 F-16 Viper and F-22 Raptor demo teams refuel with Okies An F-22 Raptor Demonstration Team pilot flies towards Joint Base Langley?Eustis, Va., March 8, 2021. The F-22 team, assigned to Air Combat Command, received fuel from the 507th Air Refueling Wing during their flight back home after performing at an air show. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Mary Begy)

図1-2 最強のステルス機F-22ラプター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。

F-22ラプター:戦域での航空支配という新しい戦い方を実現
F-22ラプターは第5世代のステルス戦闘機です。F-15Eストライクイーグルが航空優勢(制空権)を獲得する最強の戦闘機とすれば、F-22ラプターはより広い範囲の戦域全体を支配する航空支配を実現する、F-15シリーズとは違う意味で最強の戦闘機...

最強の戦闘機F-15シリーズ最新型F-15EXイーグルII

F-15EXイーグルIIは、外観はF-15Eストライクイーグルとほぼ同じですが、中身は最新技術を使った別物の機体となっています。

下図は、F-15EXイーグルIIの初号機の写真です。

最強の戦闘機F-15シリーズ最新型F-15EXイーグルII

220614-F-VG448-015 Testing the Eagle II Lt. Col. Richard Turner, 40th Flight Test Squadron commander flies a test sortie in the F-15EX Eagle II over the Gulf of Mexico on June 14, 2022. Assigned to the 96th Test Wing at Eglin Air Force Base, Fla., the F-15EX Eagle II is the Air Force’s newest 4th generation fighter being tested at the 40th FLTS. (U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. John McRell)

図1-3 最強の戦闘機F-15シリーズ最新型F-15EXイーグルII

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-15EXイーグルIIの詳細は、以下の記事をご参照ください。

F-15EXイーグルII:最強の戦闘機F-15イーグルの後継機
F-15イーグルは、初飛行からおよそ半世紀を経てのリニューアル(近代化)です。ちなみに航空自衛隊へのF-15初号機納入は1981年、すでに40年以上です。F-15EXイーグルIIについて、米国空軍とボーイング社のWebサイト情報から写真を使...

最強の戦闘機F-15Eストライクイーグル

下図は、F-15Eストライクイーグルの写真です。

最強の戦闘機F-15Eストライクイーグル

220824-F-OH732-9077 Strike Eagle over the northeast An F-15E Strike Eagle departs after receiving fuel from a KC-135 Stratotanker, over the northeastern United States, Aug. 24, 2022. The F-15E is a dual-role fighter designed to perform air-to-air and air-to-ground missions with an array of avionics and electronics systems that give it the capability to fight at low altitude, day or night and in all weather. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Hiram Martinez)

図1-4 最強の戦闘機F-15Eストライクイーグル

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-15Eストライクイーグルの詳細は、以下の記事をご参照ください。

戦闘機界のベストセラーF-16ファイティング・ファルコン

下図は、戦闘機界のベストセラーF-16ファイティング・ファルコンの写真です。

図1-3 戦闘機界のベストセラーF-16ファイティング・ファルコン

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

F-16ファイティング・ファルコンの詳細は、以下の記事をご参照ください。

F-16ファイティング・ファルコン:戦闘機界のベストセラー
F-16ファイティング・ファルコンは、コンパクトなマルチロール戦闘機です。機動性に優れ空対空と空対地戦闘にも対応可能で比較的低コストで同盟国にも提供され、戦闘機界のベストセラーとも言われます。米国空軍のWebサイト情報を主に写真を使い説明し...

写真で見る機体形状に見る設計思想の違い

F-22ラプターとライバル試作機YF-23ブラックウィドウIIの機体形状を写真で比べ、設計思想(機体形状)の違いについて説明します。

F-22ラプターの試作機はYF-22ですが、制式化されましたのでF-22とYF-23の比較としています。

機体の全体形状

F-22ラプターとYF-23の機体全体の違いを飛行中の写真で比べます。

下図は、F-22ラプターです。

  • ステルス機特有の機体形状で、表面が滑らかです。
  • 機体形状は直線を基調としており、垂直尾翼と水平尾翼を備えています。
F-22ラプター

210308-F-AO039-9017 F-16 Viper and F-22 Raptor demo teams refuel with Okies An F-22 Raptor Demonstration Team pilot flies towards Joint Base Langley?Eustis, Va., March 8, 2021. The F-22 team, assigned to Air Combat Command, received fuel from the 507th Air Refueling Wing during their flight back home after performing at an air show. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Mary Begy)

図2-1 F-22ラプター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、試作機のYF-23ブラックウィドウIIの写真です。

  • F-22ラプターの直線的な形状とは違い、曲線を滑らかにつないだ形状となっています。
  • 垂直尾翼と水平尾翼をまとめた垂直尾翼?形状となっています。
  • YF-23ブラックウィドウIIは2機製作されました。
YF-23ブラックウィドウII

080902-F-1234S-001 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 The two Northrop-McDonnell Douglas YF-23 prototypes in flight. The aircraft on display at the National Museum of the United States Air Force is the darker one on the right. (U.S. Air Force photo)

図2-2 YF-23ブラックウィドウII

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > Upcoming > Photos>からの画像

空気取入口(インテーク)

F-22ラプターとYF-23の空気取入口(インテーク)に注目して写真で比べます。

下図は、F-22ラプターの写真です。

  • エンジンを2基搭載しているF-15EXイーグルIIのインテークを発展させてステルス性を高めた形状になっています。
  • 写真では分かりませんが、インテークは機体内で機体中心側曲げられています。
  • 機体下面と機体上面をつないだ形状はステルス性を高めるための工夫の1つです。
F-22ラプター

201107-F-VA182-9004 Raptor Soars Over Stuart Maj. Josh Gunderson, F-22 Raptor Demonstration Team commander, lands in preparation for a performance in Stuart, Fla., Nov. 7, 2020. The F-22 Demo Team travels to air shows worldwide to showcase the unique performance and capabilities of the world’s premier 5th-generation stealth fighter. (U.S. Air Force photo by 1st Lt. Sam Eckholm)

図3-1 F-22ラプター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、試作機のYF-23ブラックウィドウIIの写真です。

  • コクピットを含めた機首部分、2基のエンジン部とが滑らかな曲線でつながれていることが分かります。
  • 水平尾翼を上方に曲げて垂直尾翼とまとめたような独特な形状であることが分かります。
  • インテークは主翼下面にあり、主翼上面側に曲げられています。
F-23ブラックウィドウII

080904-F-1234S-001 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 DAYTON, Ohio — Northrop-McDonnell Douglas YF-23 at the National Museum of the United States Air Force. (U.S. Air Force photo)

図3-2 YF-23ブラックウィドウII

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > Upcoming > Photos>からの画像

機体上面

F-22ラプターとYF-23の機体上面に注目して写真で比べます。

下図は、F-22ラプターです。

  • ステルス機特有の主翼、補助翼の形状や配置となっています。
  • 上部から見ると、コクピット横のインテークから、機体最後部の排気ノズルが直線状に配置されていないことが分かります。
F-22ラプター

140929-F-SI013-001 Wings over the Pacific An F-22 Raptor demonstrates its maneuverability during the Wings Over the Pacific air show Sept. 28, 2014, at Joint Base Pearl Harbor-Hickam, Hawaii. The Raptor’s sophisticated aero design, advanced flight controls, thrust vectoring, and high thrust-to-weight ratio provide the capability to outmaneuver all current and projected aircraft. (U.S. Air Force photo/Capt. Raymond Geoffroy)

図4-1 F-22ラプター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、試作機のYF-23ブラックウィドウIIの写真です。

ステルス性を追求した特徴的な形状であることが分かります。

  • コクピット部分と2基のエンジン部をなめらかな曲線でつなげる機体形状
  • インテークが機体上部にないことから、主翼下面にあるインテークが上方に曲げられ排気口へとつながる配置
  • 主翼形状に加え、水平尾翼と垂直尾翼をまとめた尾翼形状
  • 排気熱感知されないよう、機体下部側をふさいだ排気口周辺の形状
YF-23ブラックウィドウII

060810-F-1234S-004 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 Top view of the Northrop-McDonnell Douglas YF-23 in flight. (U.S. Air Force photo)

図4-2 YF-23ブラックウィドウII

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > Upcoming > Photos>からの画像

考察:ステルス性と機体形状

考察といっても、写真を見て私が知っている技術的な知識の範囲になりますので、私見と言ってもよい内容になります。

F-22ラプター(YF-22)とYF-23ブラックウィドウIIは、同じ要求から設計された試作機ですが、上述の写真をみても受ける印象が大きく違います。

米国空軍などのWebサイトの情報や写真から、

  • 保守的な設計のF-22ラプター
  • 最新技術を盛り込んだ挑戦的な設計のYF-23

という大きな違いがあると考えています。

機体形状に大きな違いが出ているということは、ステルス性、つまり、レーダー波の反射を極力抑える考え方の違いだともいえます。

しいて言えば、

  • F-22ラプターは、レーダー波の反射方向をコントロールする。
  • YF-23ブラックウィドウIIは、レーダー波を受け流す。

違いなのではないかと思っています。

ステルス性のために使われる技術や理論は、少なくともF-22ラプターが現役を完全に引退するまでは公表されることはないでしょう。

ステルス機を支えているのは、技術的な設計ノウハウであり、設計を実現するモノづくりのノウハウなのだと考えています。

モノづくりへのかかわり方は、ハードとソフト、設計・開発と量産、部品とシステムなどなど、多様なものがありますし、その人の環境や運にも左右されることもあります。

モノづくりはリアルなモノなので、面倒だというイメージも少なくないようですが、面倒だからこその達成感や満足感もありますので、まずは知ること、体験することからはじめてみてはいかがでしょうか?

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まとめ

設計思想という言葉から入ると難しいイメージがありますが、要求をどの様に実現していくかの考え方と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

ステルス機であれば、機体に受けたレーダー波をできるだけレーダーに反射しないようにすることが要求です。

  • この要求を満たすためには、レーダー波を吸収したり、レーダーの方向とは違う方向に反射すればよいことになります。
  • レーダー波の吸収は機体の表面処理の設計問題となり、レーダー波の反射はどの様に反射させればよいのかの設計問題となります。

ここでは、最強のステルス機F-22ラプターのライバル試作機だったYF-23を例に、ステルス性の高い機体形状について、以下の項目で説明しました。

  • 戦闘機のステルス性とは
    • 最新のステルス機F-35AライトニングII
    • 最強のステルス機F-22ラプター
    • 最強の戦闘機F-15シリーズ最新型F-15EXイーグルII
    • 最強の戦闘機F-15Eストライクイーグル
    • 戦闘機界のベストセラーF-16ファイティング・ファルコン
  • 写真で見る機体形状に見る設計思想の違い
    • 機体の全体形状
    • 空気取入口(インテーク)
    • 機体上面
  • 考察:ステルス性と機体形状
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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