モノづくりでは、設計者が作成した図面を使い、製作者が加工することで設計したモノができあがります。
このため誤りのない図面を作成することが設計者には求められます。
また、図面には、設計者の意思や思いを製作者に伝えるための言葉の役割を果たす側面もあります。
ここでは、図面作成における検図と、設計者が使う検図前のチェックシートについて説明します。
設計者と製作者をつなぐ図面のミスと設計者
図面は、設計者が設計した通りのモノを製作者が素材(材料)を加工して作り上げるために不可欠なものです。
- 図面は、素材(材料)、形、加工方法、大きさなどを紙(平面)に表したものです。
- 製作者は、図面を見て、どの機械を使い、どの様に加工し、仕上げるかを判断して製作します。
良く聞こえてくる、設計に関するトラブルは、
- そもそも、この図面通りには作れないといった設計ミス
- 寸法などの抜け漏れなどによるケアレスミス
が多いと感じています。
これらの設計トラブルについてもう少し観察していると、
- 設計ミスやケアレスミスが多い設計者
- 設計ミスやケアレスミスが少ない(ほぼない)設計者
とに分かれるようです。
設計ミスについては、設計者としての力量も関わってきますので、図面のケアレスミスについて注目してみると、
- ケアレスミスが多い設計者は、何度でも同じ様なミスを繰り返している。
- ケアレスミスが減っていく設計者もいる。
ことが分かりました。
同じ様なケアレスミスを少なくするためには、品質管理ではおなじみのチェックシートが使えます。
以下、設計者専用のチェックシートについて説明します。
検図でのケアレスミスと設計者のやっていること
設計が作成した図面は、検図された後、承認され発行(出図)されます。
検図でのケアレスミスが少ない設計者は、
- 図面の作り方の手順が決まっている(定型化されたフローになっている)
- 自分でミスしやすいことが分かっている
といった傾向があります。
つまり、次の様な継続的改善が行われていることになります。
- 図面作成の手順が定型化されていくので、抜け漏れを減らせる。
- 自分のミスが分かれば、意識することでミスを減らせる。
検図でのケアレスミスが多い設計者は、
- 図面の作り方の手順が決まっていない(類似図面データをコピーして、気づいたところから修正作業をはじめるイメージ)
- 検図で同じ様なケアレスミスを指摘されていることを意識していない(指摘されると、うっかりしてましたで終わるイメージ)
といった傾向があります。
つまり、次の理由で改善するのが難しく、結果的に変わらずミスをしていることになります。
- 指摘されたミスをその場限りの対応で忘れてしまう。
- 図面の手順が決まっていないので、抜け漏れを防ぐのは難しい。
設計者専用チェックシートのすすめ
検図は、設計者のミスをみつける意味合いもありますので、設計者のケアレスミスをみつけることに意味がないとは思いませんが、
検図本来の目的は、
- 設計が妥当であるかどうかを自分以外の人にレビューしてもらう
ことだと考えています。
このため、図面のケアレスミスは、検図前に自分自身でみつけて修正しておくことが必要になります。
また、検図前に自分でチェックすることは、ケアレスミスや抜け漏れを防ぐだけでなく、
- 設計した品物(部品)の設計を自分自身で改めて確認すること
でもあります。
設計について見直すために、ケアレスミスを効率的にみつけて修正するために使えるのが、自分専用の検図前チェックシートです。
以下、検図前のチェックのポイントと検図前チェックシートについて説明します。
検図前チェックのポイント(心構え)
自分で作ったモノを自分でチェックするのは意外に難しいモノです。
検図前に、作成した図面をチェックする際には、
- 先入観を持たないこと(思い込みなどを含む)
- 自分で作成した図面と思わずに、他の人が作成した図面を確認したり検討したりするつもりでチェックすること
がポイントになります。
自分専用の検図前チェックシートのメリット
自分の図面のケアレスミスをみつけたり、検図で指摘されたことを次の設計(図面)に反映していくために、チェックシートを利用することができます。
検図前チェックシートを作ると、
- ケアレスミスは、文字通り、うっかり気づかなかったミスなので、チェックシートにすることで、確実に確認することができるようになります。
ケアレスミス対策以外にも、
- 自分で気づいたことや検図での注意点などをチェックリストに残す。
- 検図で指摘されたことをチェックリストに残す。
ことで、設計者としての力量を高めるこができます。
検図前チェックシートの作り方
検図前チェックシートの作り方の一例を説明します。
検図前のチェックで確認することは、
- 製図規則(図面の様式や作図ルール)
- 設計したモノについての要求(機能)
とに分けることができます。
チェック項目については、キーワード的に列挙します。
検図前の自分用のチェックシートなので、正解はありませんし、チェックシートを使い続けることや経験を積むことにより変わっていくものです。
自分に合わせて作ることが重要です。
- まずは、ケアレスミスを減らすため、無くすためのチェック項目を入れる。
- 慣れてきたら、検図等で指摘されたことをチェック項目に入れる。
といった進め方はいかがでしょうか。
製図規則についてのチェック項目
表題欄や部品表
- 誤記、正しい品名や数量かなど
- 材料、表面処理は適切か
形状について
- 投影図:配置、拡大図、断面図などが適切か
- 投影法:第三角法か、第一角法か
ケースとしては少ないと思いますが、第三角法か第一角法か、出来上がったモノの形が違います。
寸法や記号について
- 公差は適切か(指定公差を入れすぎていないか)
設計への要求(機能)のチェック項目
全体的な要求について
- 組図と部品図
- 公差
- 表面処理や加工
- かどの処理(エッジを避ける、Rをつける)
- 累積公差
加工方法について
- 加工できるか、加工しやすいか
- 表面処理は適切か
- めっきや塗装による影響を考慮しているか
- 溶接や熱処理などの指示は適切か
部品について
- 板金部品のバリや曲げR
- 樹脂部品の肉厚、そりやヒケ
まとめ
モノづくりでは、設計者が作成した図面を使い、製作者が加工することで設計したモノができあがります。
設計者には、誤りのない図面であることが求められます。
また。図面には、設計者の意思や思いを製作者に伝えるための言葉の役割もあります。
ここでは、図面作成における検図と、設計者が使う検図前のチェックシートについて、以下の項目で説明しました。
- 設計者と製作者をつなぐ図面のミスと設計者
- 検図でのケアレスミスと設計者のやっていること
- 設計者専用チェックシートのすすめ
- 検図前チェックのポイント(心構え)
- 自分専用の検図前チェックシートのメリット
- 検図前チェックシートの作り方
- 製図規則についてのチェック項目
- 表題欄や部品表
- 形状について
- 寸法や記号について
- 設計への要求(機能)のチェック項目
- 全体的な要求について
- 加工方法について
- 部品について
- 製図規則についてのチェック項目