私の知識や経験の範囲ではありますが、新商品の企画や開発といっても、すべてが新しい商品を開発する機会はあまりないようです。
むしろ、既存製品の部品が製造中止となったり、何らかの理由で作り続けることができなくなり、新商品を開発せざる得ないことも少なくないように思います。
また、自社製品がデファクトスタンダードの様な場合も少なく、たいていは、類似製品を他社でも販売していることも多いようです。現在では、同業に限らず異業種の場合もあります。
さて、新商品を開発するとなった場合、既存製品を現在使える技術、入手できる材料や部品を利用することになります。
新商品を具体化するとなると、商品企画の担当者や設計技術者が、アイディアを形にしていきますが、この時、他社の製品や類似の製品の状況を調べます。
いわゆる後継機の開発であっても自社製品だけでなく、他社製品や類似の製品を調べ学ぶことは、企画力や設計力を向上させたり広げたりするよい手段だと考えています。
ここでは、自社製品と他社製品を調べる(分析する)ことについて説明します。
他社製品や類似製品を分析するメリット
自社製品だけしか見ていないと商品の企画や設計者などの社内の目だけで製品を分析することになります。
特に製品寿命の長い製品の場合、知らず知らずのうちに社内の目が優先され支配的になっていますので、その製品を使うお客様の使い方や使われる環境などが時代により変わっていることに気づきにくくなります。
お客様と直接接する営業であれば、直接お客様に聞くこともできますが、それは、営業が前向きに聞き取りに行かないと、実際のお客様の製品の使い方や使用環境などを知ることは難しいですし、ましてや、これからどう変わっていくのかを伺い知ることもできません。
新商品開発の場合であれば、新商品開発を考えている、進めていることさえもあまり社外には口外したくないという一面もあります。
新商品を購入する側の立場になると、新商品開発と聞けば、どの様な製品が、何時頃、どの程度の価格帯で販売開始になるのか聞きたくなるのが当たり前です。
つまり、新商品に関する情報は、お客様を含め社外はもちろん、社内的にも限定したい場合が通常です。
しかし、自社製品や他社製品を調べる必要性があります。そのための1つの手段として、
他社製品や類似製品を入手(購入)して分析する
方法があります。
実際に製品を購入すれば、機能・性能、使い方まで自ら調べることができます。
同業社には購入が難しいケースもあるようですが、そこは頭の使いどころでもあります。
購入品を分解すれば、メカ的な構造についてはある程度分かりますが、機能・性能などはどの様に実現しているか推測することになります。
同じ様に強度をもたせる場合でも、自社とは違う考え方であったり、部品を組み上げることで機能を発揮するなど、学びも多いものです。
他社製品や類似製品の分析ができない
新商品開発でのケースはあまり聞きませんが、不具合対応などでも他社製品や類似製品の分析をする場合があります。
この時、他社製品を入手しても分析できないというケースがあるようです。
ここでの「分析ができない」とは、例えば自社製品と比べて、強度的に強いのか弱いのか同等なのかや、どの様な加工をしているかや組立方法などが分からないという意味合いです。
自社製品の設計を担当していても、製品の一部しか担当しない技術者が多い、材料や部品の入手は調達部門、加工・組立は製造部門が担当しているので、ある製品の材料や製造については見たこともなければ、どの様にしているかも知らない設計者も少なくないからです。
半面、商品企画の担当者の方が調達や製造についてよく知っていたりします。
商品の企画には、材料・部品の入手や加工などもある程度は目途をつけないと、商品価格や原価目標も算定できないからです。
他社製品や類似製品の分析方法
他社製品や類似製品の分析方法について、私の経験したことや知識から、自社製品と他社製品の分析(比較)の1例について説明します。
以下、分析のポイントについて列挙します。
カタログ・スペックで比較
- カタログ・スペックで比較します。
- セールス的にはヒントになるかもしれませんが、カタログ・スペックで購入を決める製品でないと、興味を引くことはできても購入決定を後押しするほどの力はないことが多いようです。
使ってみる
- 使ってみる。
- 自ら触る、使ってみることが重要です。
- 使ってみての感想は、はじめて、慣れると、使い続ける場合を想定して記録します。
分解する
- 製品にもよりますが、分解すると使っている部品や構造が分かります。
- ただし、今どきの製品は、分解すると元に戻せないことが多いので、注意が必要です。
- 修理できるように設計すると、設計・原価・製造コストは上がります。このため、コスト優先であれば修理対応は基本交換と考えることもあります。
量産数
- 量産といっても、会社や製品によりその数量は様々です。年間100個の場合もあれば、1万個という場合もあります。
- 一般的な量産数ではないが、2個以上作るのであれば、同じような出来映えであることは必要になるなど
設計では、何を優先しているのか
- 設計者の立場で、何を優先しているのかを推測します。コスト、使い方や機能のどれを優先しているのか。
- 一点集中かバランスを重視した設計か。
製造者の立場
- 製造(加工や組立)の立場で、部品点数、組み立てやすさをどこまで求めるか。
- ミス(ヒューマンエラー)を防ぐ構造とコストのバランス
使用者の立場
- その製品を購入する立場、使用者の立場、製品の維持管理の立場、により、何を優先しているのか。
- 購入者ならコスト、使用者は使いやすさ、維持管理者ならメンテナンス性など
優先順位
- 製品を、作る人、買う人、使う人により、優先すること重視することが違う。
- QCDに加え、業界や技術の流行とか今後のトレンドと製品寿命(販売・サポート期間)で分析する。
リバース・エンジニアリングというと、スマートなイメージを受けますが、やっていることは、いわゆる泥臭いことをきっちりとやることだったりします。
まとめ
新商品の企画や開発といっても、すべてが新しい商品を開発する機会はあまりないようです。むしろ、部品の製造中止など、何らかの理由で作り続けることができなくなり、新商品開発となることも少なくないように思います。
いわゆる後継機の開発であっても自社製品だけでなく、他社製品や類似の製品を調べ学ぶことは、企画力や設計力を向上させたり広げたりするよい手段だと考えています。
ここでは、自社製品と他社製品を調べる(分析する)ことについて、以下の項目で説明しました。
- 他社製品や類似製品を分析するメリット
- 他社製品や類似製品の分析ができない
- 他社製品や類似製品の分析方法
- カタログ・スペックで比較
- 使ってみる
- 分解する
- 量産数
- 設計では、何を優先しているのか
- 製造者の立場
- 使用者の立場
- 優先順位