「音速とは、音が伝わる速度」のことです。
音が伝わる速度は、音を伝える空間や物(媒質という)により変わります。
日常生活は空気の中で過ごしているため、音を伝える空間や物による音速の違いを意識することはないように思われるかもしれませんが、意外なことに身近で経験していることもあります。
ここでは、音の速さが、空間や物により変わる身近な経験(現象)や、航空機の速度を例に比較のポイントなどについて説明します。
音の速度や空気中以外でも聞こえる音の経験
ここでは、空気中、水中、固体を伝わってくる音の例を説明します。
音を伝える空間や物が、空気、水や固体の場合、音の速さまでは分からないかもしれませんが、音が空気中だけでなく、水中や固体からも伝わる(聞こえる)ことが分かります。
空気中を伝わる音
普通の生活をしている中でも、空気中を伝わってくる音の経験の1つに、
- 雷が光ってから音がするまでの時間を計った。
ことがないでしょうか。
雷が落ちた場所を、次のような計算で推測したことはありませんか?
雷の光を見てから音がするまでの時間を(頭の中で)計ったら6(s)
音速が340(m/s)
6(s)だから「340×6」で2,040
約2(km)先に落ちたな。
また、救急車が近づき遠ざかることが分かるサイレンの音も、音を意識する経験の1つです。
救急車のサイレンの音が変化する現象は、ここでは説明しませんがドップラー効果とよばれる現象です。
水中を伝わる音
水中を伝わる音については、
- プールで潜っているときに聞こえる音が、水面上で聞く音とは違うこと
に気づいたことがありませんか?
また、水中で音を利用しているモノには、次のようなモノがあります。
- 魚釣りで使う魚群探知機
- 潜水艦のソナー
- 非破壊試験で使う超音波計測器
いずれも、音を発生させて、反射してきた音を検出することで、音を反射したモノまでの距離を計っています。
固体を伝わる音
固体を伝わる音を身近に感じる例はあまりないかもしれませんが、代表的な例として次のような音があります。
- マンションなどで床や壁などから伝わってくる音
- 電車が近づいてくることが分かる、線路を伝わって聞こえる音
などがあります。
音の伝わる速さの例
音を伝える媒質(空間や物)による音の速さの例を、参考値として紹介します。
例えば、空気中であれば気圧や気温によっても音速は変化します。比較するための参考値です。
空気中:約340(m/s)
水中:約1,500(m/s)
金属(鉄鋼):約5,800(m/s)
上記の音速を、航空機でよく使われるマッハ数で表すと、以下のようになります。
空気中:マッハ1(これを基準とします)
水中:マッハ4.4
金属(鉄鋼):マッハ17
下図は、音の伝わる速さのイメージ図です。
- 簡単な図ですが、図にすることで違い(速度差)が分かりやすくなります。
図 空間や物による音の伝わる速さのイメージ
つまり、
- 水中では、空気中より約4.4倍の速さで音が伝わる。
- 金属(鉄鋼)では、空気中より約17倍の速さで音が伝わる。
ことになります。
気体、液体、固体の順で、音の伝わる速さが増加します。
これは、空間や物の密度の違いと考えると分かりやすいと思います。
[参考]マッハ数と速度域の呼び方
マッハ数とは、音速を1とした場合の航空機の速度の比を表しています。
航空機のことを超音速機ということもありますが、航空機の速度域とマッハ数との関係は、以下のようになっています。
極超音速:マッハ5以上
超音速:マッハ1.2~5
遷音速:マッハ0.75~1.25
亜音速:マッハ0.75
音速を超える(マッハ1を超える)と衝撃波が発生します。
衝撃波は、航空機の速度がマッハ1を超える前にも発生します。
これは、航空機の翼の表面の速度は一定ではなく、マッハ1に近づくにつれ翼の表面の一部では機体速度よりも空気流の速度が速くなる部分が発生するためです。
航空機の速度について考えてみる
ここまで、音の速さについて説明してきましたが、マッハ数が出てきたので航空機の速度について説明します。
世界最速のジェット機の速度
世界最速のジェット機のマッハ数は、SR-71ブラックバードのマッハ3.2です。
ちなみに、最高高度も世界No.1の25,000m超えです。
SR-71ブラックバードの詳細は、以下の記事をご参照ください。
航空機の速度の比較
私が運営している別のブログの記事では、軍用機の最高速度や最高高度を単純に比べています。
「単純に比べて」の意味するところについて、比較するための考え方の一例を紹介します。
航空機の最高速度は、航空機そのものが性能だけでなく、気象を含む外部環境によっても変わります。
航空機を構成する要素は、エンジンと機体に分類することができます。
- 一般的にエンジンと機体の開発・製造は、別会社です。
- エンジンの性能(推力)と大きさ(パッケージとして)は、機体性能(パフォーマンス)の制約条件の1つと考えられます。
実際に飛行速度を比べる際には、パイロットは飛行状態や気象条件に応じた操作を行うため、
- パイロットのエンジンや機体の操作(コントロール)による影響
もあります。
このため、航空機の速度は、パイロット、航空機、及び、外部環境(気象や飛行エリア)とが相互に影響を与え合った結果となっています。
このため、2種類の航空機の飛行速度を全く同じ条件で比較することは難しくなりますが、それらの条件を考慮することで、計測した速度を比べることはできます。
実測値(ここでは飛行速度)を比較することで、予想していなかった、想定外の違いに気づくこともあります。
また、どうしても同一条件で比較したい場合には、風洞試験という方法もありますが、風洞試験用の設備(施設)の大きさや風洞の能力が制約になります。
航空機の速度を比べる場合でも、何のために比べるのかという目的を明確にしておくことが重要です。
[参考]航空機の速度には種類がある
航空機の速度は、大きく分けて次の大気速度と対地速度の2つがあります。
- 対地速度:空気に対する(相対)速度
- 対地速度:地面に対する(水平)速度
車の速度は、対地速度に分類されます。
その値(速度などの物理量)は、何を基準にしているか、比較をする際に忘れてはならない考慮事項の1つです。
まとめ
音が伝わる速度は、音を伝える空間や物により変わります。
日常生活では、音を伝える空間や物による音速の違いを意識することはないように思われるかもしれませんが、意外なことに身近で経験していることもあります。
ここでは、音の速さが、空間や物により変わる身近な経験(現象)や、航空機の速度を例に比較のポイントなどについて、以下の項目で説明しました。
- 音の速度や空気中以外でも聞こえる音の経験
- 空気中を伝わる音
- 水中を伝わる音
- 固体を伝わる音
- 音の伝わる速さの例
- [参考]マッハ数と速度域の呼び方
- 航空機の速度について考えてみる
- 世界最速のジェット機の速度
- 航空機の速度の比較
- [参考]航空機の速度には種類がある