金属には、鉄、ステンレス、アルミ、チタンなど様々な種類があり、用途に応じて使われています。
鉄は様々な製品や場所で使われていますが、鉄にも様々な種類があります。
ここでは、鉄(鋼)の製造方法について説明します。
鉄がどの様にして作られているのか知ることは、加工や強度を求めるための熱処理などを理解するのにも役立ちます。
鉄鋼材料(鋼)の製造プロセス
鉄の主な原料は鉄鉱石です。どうやって鉄を作り出すかについての詳細は後述しますが、製鉄所のシンボルと言えば高炉です。
高炉の中に焼結鋼とコークスを投入し銑鉄を取り出します。高炉の中を直接見ることはできませんが、私は火山の溶岩に近いイメージだと思っています。
鉄鉱石を溶かすだけの熱量を必要とするので、高炉は一度火が入ると24時間365日その火が絶えることはないそうです。
以下、鉄の製造工程を簡略化した下図を使い、どの様にして原料から製品としての鉄鋼材料の製造プロセスについて説明します。
図1 鉄鋼材料の製造プロセス
焼結鋼やコークスを高炉に投入すると、その後の工程は連続しています。
製鉄所が海沿いにある理由は、原料が海路での輸入、製鉄には大量の水が必要だからです。
製鉄所のWebサイトでは、動画も公開されています。リンクは後述します。
原料調達
鉄鉱石、石炭とも輸入しています。
日本では鉄の需要は減ってきていますし、国内製鉄所は経営的にも大変なようです。
海外メーカーの製鉄所は、国内とは規模が違います。
原料処理(前処理)
鉄鉱石から焼結鋼、石炭からコークスを製造します。
鉄鉱石と石灰石を焼結炉に投入し、鉄鉱石を焼き固めた焼結鉱を製造します。
石炭をコークス炉に投入し、石炭を蒸し焼きにしてコークスを製造します。
製銑(高炉)
製鉄所のシンボルともいわれるのが高炉です。
高炉に焼結鋼とコークスを入れます。
高炉に高温(約1,200℃)の熱風を吹き込むことで、焼結鋼を溶かして銑鉄を取り出します。
焼結鋼に含まれている不純物は、スラグとして取り出します。
製鋼(転炉)
転炉に銑鉄や鉄くず(スクラップ)を入れます。
転炉に高圧の酸素を吹き込むことで、銑鉄中のリンや硫黄などの不純物や炭素分を取り除いたり、他の成分(合金)を加えて鉄(鋼)の成分を調整します。
連続鋳造
成分調整後の溶けた鋼を連続して鋼片(中間素材)にしていきます。
鋼片(半製品)は、最終製品(鉄鋼材料)により形状が異なり、例えば平板や角材の鋼片はスラブやブルームと呼ばれています。
図2 連続鋳造:ブルームの例
出典:MartinelleによるPixabayからの画像
圧延
最終製品(鉄鋼材料)の形状に適した圧延設備で、鉄鋼材料としての形状を仕上げていきます。
圧延加工には、熱間加工と冷間加工がありますが、詳細は別途説明します。
最終製品(鉄鋼材料)
製鉄所で作られた鉄鋼材料は、さらに別の工場に送られ、様々な形状の鉄鋼材料として市場に出ていきます。
例えば、1枚の鉄板は、製鉄所ではロール鋼板、次の工場で市販サイズに切断され、材料商社等を通じて販売されます。
モノづくりメーカーで検査成績書を発行すると材料証明書(ミルシート)を添付します。製品に使用した材料のミルシートを確認することで、素材加工した工場や製鉄所を追うことができます。
鉄と鋼(はがね)
日本語では、「鉄」と言う場合、「鋼(はがね)」のことを言っていることが少なくありません。
ちなみに、英語では次の様に区別されています。
- iron:鉄、銑鉄
- steel:鋼
金属の元素レベルでは、鉄は元素記号:Fe、原子番号:26です。
元素周期表は、文部科学省の「一家に1枚」があります。
車や構造物など様々な物に使われている鉄は、Feに炭素(C)などが含まれています。
鋼は、鉄(銑鉄)よりも、炭素(C)の含有量が多く含まれています。
- 鉄(銑鉄):炭素が1.7%以上
- 鋼:炭素が1.7%未満
性質には次の様に大きな違いがあります。
- 銑鉄:硬くてもろい。
- 鋼:軟らかくて伸びやすく強靭。
参考:鉄鋼に関するWebサイト
リンクは貼っていませんのでご注意ください。
一般社団法人日本鉄鋼連盟
- <https://www.jisf.or.jp/>
- ホーム > 鉄鋼を知る
日本製鉄株式会社
- <https://www.nipponsteel.com/company/tour/vr_tour.html>
- HOME > 企業情報 > 工場見学 > 製造工程のご紹介
JFE(ジェイ エフ イー)スチール株式会社
- <https://www.jfe-steel.co.jp/saiyou/about/ironworks/index.html>
- JFEスチールの魅力 > 製鉄所
まとめ
鉄は様々な製品や場所で使われていますが、鉄にも様々な種類があります。
鉄(鋼)の製造方法を知っていると、加工や強度を求めるための熱処理などを理解するのにも役立ちます。
ここでは、鉄(鋼)の製造方法について以下の項目で説明しました。
- 鉄鋼材料(鋼)の製造プロセス
- 原料調達
- 原料処理(前処理)
- 製銑(高炉)
- 製鋼(転炉)
- 連続鋳造
- 圧延
- 最終製品(鉄鋼材料)
- 鉄と鋼(はがね)
- 参考:鉄鋼に関するWebサイト