PR

ねじの基礎知識:なぜステンレス製ねじはかじり(焼き付き)やすいのか

はじめての金属材料

ステンレス製のねじは、鉄製のねじよりもコスト的には高くなるものの、錆びにくいというメリットがあります。

そこで、ライフサイクルコストを考慮して、普段使っている部品のねじを鉄製からステンレスに変更したところ、「ねじがかじって部品が使えなくなった」といったトラブルが急に増えることがあります。

ここでは、鉄製のねじ(ボルトとナット)からステンレス製のねじ(ボルトとナット)に変えると、なぜ「ねじがかじる」のかについて説明します。

スポンサーリンク

ステンレス製ねじのかじりとは

ステンレス製のボルトとナットがかじるとは、どんな状態になるのかについて説明します。

下図は、かじった(焼き付いた)後も締め続けて、過大トルクにより破断させたボルトとナットの写真です。

  • この例では、焼き付きはナットのねじ部分なので、観察することができません。
  • 見たことはないのです、産業用X線カメラを使えば分かるかもしれません。
破断させたステンレス製ボルトとナット

破断させたステンレス製ボルトとナット

図1 破断させたステンレス製ボルトとナット

下図は、破談させたステンレス製ボルトの破断面の写真です。

  • 焼き付いた後も締め続けたことで、ボルトがねじ切れています。
はかせ
はかせ

破断面を観察すると、ボルトが破断に至る過程を推測することができます。

破断させたステンレス製ボルトの破断面

破断させたステンレス製ボルトの破断面

図2 破断させたステンレス製ボルトの破断面

ステンレス製のねじが「かじりやすい」理由

鉄製のねじ(ボルトとナット)をステンレス製のねじに変更すると、かじりやすくなります。

はかせ
はかせ

「かじる」とは焼き付きのことで、ボルトとナットが溶着してしまい(溶けて固まってしまい)ナットが回らなくなることです。

なぜステンレス製のボルトとナットは鉄製に比べかじりやすくなるかの理由は、以下のステンレス材の特性と締め方に分けられます。

ステンレス材の特性

ステンレス材は、鉄よりも錆びにくいだけでなく、以下の特性があります。

  • 鉄に比べて滑りにくい(ボルトとナット間の摩擦による抵抗が大きい)。
  • 熱伝導率が低いため、熱が材料内にこもりやすい。
  • 熱膨張率が大きい。

これらの特性のため、ステンレス製のボルトやナットをインパクトレンチなどで一気に締め付けると、

  • ボルトとナットに締め付けによる摩擦が発生する。
  • 摩擦により熱が発生する。
  • 発生した摩擦熱により、ボルトとナットの接触部が膨張し密着する(動かなくなる)

これが、かじり(焼き付き)です。

かじった後もインパクトレンチなどで締め続けると、過大なトルクにより、ボルトがねじ切れることもあります。

かじりやすい締め方

ステンレス製のボルトとナットを鉄製のボルトと同じ様な感じで、インパクトレンチなどで締め付ける場合を考えます。

ステンレス製のボルトに対し、ナットが少し傾いた状態(ボルトに対し真っすぐ乗っていない状態)で、インパクトレンチで締め付けるとかじりやすくなります。

ベテランの方は、ステンレス製のボルトとナットを使う場合には、ボルトに対し真っすぐナットが入ることを確認してから本締めしているので、かじりにくいのですが、指先の感覚で判断していたり、ほとんど無意識のうちにそうしているようです。

最近(とはいっても10年以上になると思いますが)、現場作業をする方が高齢化などによる影響で、現場では次の様なことが起きています。

  • ベテランの方が定年などで現場にいない。
  • 現場作業が初めての人が増えている。
  • 現場で作業を教える人も少なく、教える時間がとれない。

このため、昔は発生していなかった現場でのボルトかじりが増えています。

かじりを防ぐ方法

かじりを防ぐ方法には、ボルトやナットへの対策と、締め方の2つがあります。

ステンレス製ボルトナットのかじり対策

締め付け作業におけるかじり防止のためには、

  • ボルトやナットにフッ素系のコーティングをする。
  • 焼き付き防止剤を使用する。

方法があります。

フッ素系コーティングが必須の製品もありますが、コーティングしてあるからかじらない(焼き付かない)わけではありません。

フッ素系のコーティングをしてあっても、一度締め込んだ後、緩めて再利用しようとするとかじりやすくなります。

現場にもよりますが、部品取り付け時にかじってしまうと、ボルトを切断しないと部品を外せなくなりますので、ステンレス製のボルトとナットを使う場合には、かじり(焼き付き)について、事前に現場に周知させることが必要です。

締め方

特に従来は鉄製のボルトとナットだった部品などを、ステンレス製のボルトとナットに変更した場合には、

  • 取扱上の注意説明の文書(紙)をボルトやナットに添付する。
  • ステンレス製に変更したことによるかじり(焼き付き)の講習会をする。

といったことをしています。

最初は、かじりの発生件数が多くても、上記のような対策が現場に浸透してくると、かじりについてのクレームや問い合わせは減っていきます。

はかせ
はかせ

注意すれば防げるステンレス製ボルトとナットのかじり(焼き付き)ですが、周知するのは別の意味で大変です。

参考書籍:ねじ

ねじについての基本的なことを知るために以下の2冊が参考になりました。

ねじのおはなし(おはなし科学・技術シリーズ)  山本 晃(著)

https://amzn.to/3FBaDni

絵とき「ねじ」基礎のきそ  門田 和雄(著)

https://amzn.to/3MoAD95
スポンサーリンク

まとめ

ステンレス製のねじは錆びにくいというメリットがありますが、普段使っている部品のねじを鉄製からステンレスに変更したところ、「ねじがかじって部品が使えなくなった」といったトラブルが急に増えることがあります。

ここでは、鉄製のねじ(ボルトとナット)からステンレス製のねじ(ボルトとナット)に変えると、なぜ「ねじがかじる」のかについて以下の項目で説明しました。

  • ステンレス製ねじのかじりとは
  • ステンレス製のねじが「かじりやすい」理由
    • ステンレス材の特性
    • かじりやすい締め方
  • かじりを防ぐ方法
    • ステンレス製ボルトナットのかじり対策
    • 締め方
  • 参考書籍:ねじ
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
はかせの詳細は「はかせ」をクリック

はかせをフォローする
はじめての金属材料
スポンサーリンク
シェアする
はかせをフォローする
タイトルとURLをコピーしました