多点の振動・騒音計測事例として、米国空軍の戦略輸送機C-5Mスーパーギャラクシーの事例を紹介します。
飛行中の貨物室の騒音はマイクロホンを12本、振動は1軸と3軸の加速度計を使い合計17チャンネル、マイクロホンと加速度計を合わせた全部で29チャンネルの振動・騒音計測事例です。
多点計測は大がかりですが、計測データから音場や振動状態を可視化できるメリットがあります。
C-5Mスーパーギャラクシーとは
C-5Mスーパーギャラクシーは、米国空軍最大の戦略輸送機です。
どのくらい大きいかというと、米国陸軍の主力戦車M1エイブラムス（約60トン）を2両空輸できます。
ちなみに、米国空軍の大型輸送機C-17グローブマスターIIIは、M1エイブラムスを1両（約60トン）空輸できます。
下図は、C-5Mスーパーギャラクシーの写真です。
写真では大きさが分かりにくいので、数字を上げます。
- 機体：全長75.3m、全高19.84m、全幅67.89m
- 貨物室：全長43.8 m、全幅5.79 m、全高4.11 m
190914-F-NX530-1007 A C-5M Super Galaxy flies over the 2019 Thunder Over Dover Air Show, at Dover Air Force Base, Del., Sept. 14, 2019. The event featured more than 20 aircraft static displays and numerous aerial demonstrations. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Christopher Quail)
図1 C-5Mスーパーギャラクシー（その1）
出典：USAF（米国空軍）のWebサイト＜Home > News > Photos＞からの画像
輸送機は似たような形状をしていますが、機首部分が上方に90度開く構造となっています。
下図は、輸送ヘリのCH-47Dチヌーク（Chinook）を積載している写真です。
131029-F-VV898-950 Army CH-47D Chinook helicopters and their components are unloaded from a C-5M Super Galaxy Oct. 29, 2013, at Dover Air Force Base, Del. The helicopters were used in Afghanistan and are being returned to the United States as military forces are withdrawn from the country. The C-5s are assigned to the 436th Airlift Wing.
図1 C-5Mスーパーギャラクシー（その2）
出典：USAF（米国空軍）のWebサイト＜Home > News > Photos＞からの画像
C5Mスーパーギャラクシー貨物室の騒音・振動計測
下図は、C-5Mスーパーギャラクシーの貨物室の写真です。
- 貨物室の大きさは、全長43.8 m、全幅5.79 m、全高4.11 mです。
humanitarian supplies Reserve Airmen from the 512th Airlift Wing deliver humanitarian supplies to Nicaragua aboard a C-5M Super Galaxy Dec. 20, 2014, just in time for the holidays. The massive delivery was made possible through the Denton Program, a Defense Department humanitarian assistance transportation program that utilizes space available military air, surface and sea-lift assets. The supplies were provided to World Missions Outreach, which is an international nonprofit organization based in Nicaragua that provides food, education, medical and ministry services to the country’s citizens. (U.S. Air Force photo/2nd Lt. Steve Lewis)
図2 C-5Mスーパーギャラクシー：貨物室
出典：USAF（米国空軍）のWebサイト＜Home > News > Photos＞からの画像
騒音・振動の計測システム
C-5Mスーパーギャラクシーの飛行中に貨物室の騒音・振動データを計測しています。
試用したセンサーは、以下の通りです。
- マイクロホン：12個
- 1軸の加速度計：5個
- 3軸の加速度計：4個
計測システムとしては、合計27チャンネルとなります。
- マイクロホン：12チャンネル
- 1軸の加速度計：5チャンネル
- 3軸の加速度計：12チャンネル
下図は、貨物室内に設置したマイクロホンの写真です。
- 貨物室内にジグザグに配置されているようです。
Twelve microphones, five single-axis accelerometers and four triaxle accelerometers were mounted in the cargo compartment of a C-5M Super Galaxy to collect interior noise and vibration data during a flight Sept. 24, 2015, at Travis Air Force Base, Calif. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Charles Rivezzo)
図3 C-5Mスーパーギャラクシー：貨物室内のセンサ
出典：USAF（米国空軍）のWebサイト＜Home > News > Photos＞からの画像
下図は、計測システム（データ収集装置）の写真です。
- オレンジ色のケーブルが加速度、白いケーブルがマイクロホンのようです。
Twelve microphones, five single-axis accelerometers and four triaxle accelerometers were mounted in the cargo compartment of a C-5M Super Galaxy to collect interior noise and vibration data during a flight Sept. 24, 2015, at Travis Air Force Base, Calif. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Charles Rivezzo)
図4 C-5Mスーパーギャラクシー：貨物室内の計測システム
出典：USAF（米国空軍）のWebサイト＜Home > News > Photos＞からの画像
騒音・振動の計測ポイント（推測）
振動・騒音計測の目的が飛行中であることと上述の写真意外に情報がありませんので、以下は推測です。
- 離陸時、上昇中、巡航中、加工中、着陸時の周波数や振幅の計測・評価を行う。
- 加速度計は、構造的に重要な部分の振動を計測しているのではないか。
- マイクロホンは、貨物室全体のざっくりとした音場を計測しているのではないか。
多点計測では、一度に計測するデータ量が大きくなりますので、以下の点がポイントになります。
- あらかじめ計測目的を明確（具体的）にする。
- 計測目的に適したセンサーの設置場所を事前に決める。
- センサーと計測システムを確実に設置する。
まとめ
多点の振動・騒音計測事例として、米国空軍の戦略輸送機C-5Mスーパーギャラクシーの飛行中の貨物室の騒音をマイクロホン12チャンネル、振動は1軸と3軸の加速度計を使い計17チャンネル、マイクロホンと加速度計を使った合計29チャンネルの振動・騒音の計測事例について、以下の項目で説明しました。
- C-5Mスーパーギャラクシーとは
- C5Mスーパーギャラクシー貨物室の騒音・振動計測
- 騒音・振動の計測システム
- 騒音・振動の計測ポイント（推測）
