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輸送機の燃費改善技術:マイクローベーンによる空気抵抗低減

3Dプリンタ製マイクローベーンによるC-17グローバルマスターの燃費改善 航空機の実機試験

米国空軍では様々な空力技術(エアロダイナミクス)に関する取り組みがなされています。

ここでは、米国空軍のWebサイトの記事から、C-17 Globemaster(グローバルマスター) IIIに3Dプリンタで作ったマイクロベーン(Microvane)を適用した空気抵抗低減による燃費改善について紹介します。

  • マイクロベーン:ボルテックス・ジェネレータとも呼ばれ、日本語では渦発生器のことです。

輸送機のワイパーの向きを変えることで、空力的な改善(空気抵抗削減)をCAE(CFD)と実機で確認した事例は、以下をご参照ください。

  • CFD(Computational fluid dynamics):流体解析
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空気抵抗を減らす機体形状

航空機の空気抵抗を減らす、燃料消費量を減らすことになり、結果的に航続距離やより多くの物を運ぶことができます。また、燃料の消費量削減効果を考えると、小型機よりも大型機の方がメリットがあります。

航空機の空気抵抗を減らす方法としては、機首や翼の形状を薄く、滑らかにしていくことが有効です。

大型機として、米国空軍の戦略爆撃機の機体形状を比べてみます。

下図は、B-52Hストラトーフォートレス、旅客機のような形状です。

B-52Hストラトーフォートレス(その1)

A U.S. B-52H Stratofortress prepares to join with Qatar Emiri Air Force Mirage 2000s and U.S. F-35A Lightning IIs to fly in formation over Southwest Asia, May 21, 2019. This flight was conducted to continue building military-to-military relationships with the QEAF. The B-52H is part of the Bomber Task Force deployed to the U.S. Central Command area of responsibility to defend U.S. forces and interests in the region. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Keifer Bowes)

図1-1 B-52Hストラトーフォートレス(その1)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、横から見たB-52Hストラトーフォートレスです。

B-52Hストラトーフォートレス(その2)

BTF Europe-Eastern Mediterranean A B-52H Stratofortress, assigned to the 5th Bomb Wing at Minot Air Force Base, N.D., flies over the Mediterranean Sea on a Bomber Task Force Europe mission, Sept. 16, 2020. Bomber Task Force missions familiarize aircrews with conducting operations in various geographic combatant commands’ areas of responsibility to enhance readiness and provide the training necessary to respond to any potential crisis or challenge around the globe. (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Burt Traynor)

図1-2 B-52Hストラトーフォートレス(その2)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、B-2スピリット、無尾翼のステルス・ボンバーです。

B-2スピリット(その1)

Air Force officials have awarded a contract to Northrop Grumman Corporation to provide advanced state-of-the-art radar components as part of a radar modernization program for the for the B-2 Spirit bomber. (U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Bennie J. Davis III)

図2-1 B-2スピリット(その1)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図から、B-2スピリットの薄さが分かりやすいと思います。

B-2スピリット(その2)

A 509th Bomb Wing B-2 Spirit conducts a fly-by during the Scott Air Force Base 2017 air show and open house June 11, 2017, which celebrates the base’s 100th anniversary. The B-2 is a multi-role bomber capable of delivering both conventional and nuclear munitions and represents a major milestone in the bomber modernization program. With a crew of two pilots, this aircraft brings a massive firepower to bear, in a short time, anywhere on the globe through impenetrable defenses. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Tristin English)

図2-2 B-2スピリット(その2)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

乱流を利用した空気抵抗低減

空気抵抗には、機体や主翼の形状による抵抗とは別に、機体や主翼表面の空気の流れによるものがあります。

主翼を例に説明すると、主翼表面機体表面を流れる空気は、翼端で翼からはがれて渦(乱流)になります。

この翼端の渦による空気抵抗を小さくするために、下図の様に主翼上で小さな渦を発生させ、主翼全体の抵抗を小さくすることができます。

下図の主翼上の小さな突起物は、ボルテックス・ジェネレータ(渦発生器)と呼ばれています。

ボルテックス・ジェネレータの例

ボルテックス・ジェネレータの例

図3 ボルテックス・ジェネレータの例

出典:Pixabayの画像(加工しています)

ボルテックス・ジェネレータを主翼に追加すると、小さな渦(乱流)が発生し空気抵抗が増えます。

しかし、ボルテックス・ジェネレータにより発生させた小さな渦(乱流)は、主翼の乱流による空気抵抗を小さくすることができます。

つまり、ボルテックス・ジェネレータを付けることで、主翼全体の空気抵抗が小さくなるため、燃費改善の効果が得られるということです。

マイクロベーン(Microvane)とは

下図は、C-17グローブマスターIIIの胴体後部に取り付けられたマイクロベーンと呼ばれるフィンのような形状の抗力(空気抵抗)低減装置です。

C-17グローバルマスターに設置されたマイクロベーン(その1)

The drag reduction devices known as microvanes are shown on the aft-end of a C-17 Globemaster III at Joint Base Lewis-McChord, Wash. As part of its effort to increase readiness and capability, the Air Force is working to introduce aerodynamic technologies on mobility aircraft to improve airflow, reduce maintenance issues, increase payload capability, and decrease fuel demand. (U.S. Air Force photo)

図4-1 C-17グローバルマスターに設置されたマイクロベーン(その1)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、上図のマイクロベーンを拡大した写真です。

C-17グローバルマスターに設置されたマイクロベーン(その2)

上図のマイクロベーンを拡大

図4-2 C-17グローバルマスターに設置されたマイクロベーン(その2)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

C-17グローバルマスターに取り付けられたマイクロベーンは、3Dプリンタで作られています。

マイクロベーンは、空気抵抗の大きい部分の気流の方向を変えることで、全体の燃料消費を約1%削減する効果があるそうです。

わずか1%と思うかもしれませんが、マイクロベーンをC-17の米国空軍の全機種に導入すると、マイクロベーンの投資額は約7か月で回収でき、年間1,000万ドル以上の燃料費削減効果が見込まれています。

C-17グローバルマスターIIIを簡単に紹介

C-17グローバルマスターIIIは、60トン超の主力戦車M1A2を空輸できる、米国空軍の大型輸送機(cargo aircraft)です。

C-17グローバルマスターIIIは、米国陸軍の60トン(60,000kg)超えの主力戦車M1A2エイブラムスを空輸するだけではなく、様々なミッションに使用されており、輸送機には戦闘機やステルス機の様な外見のスマートさはありませんが、様々なミッションを支える兵站の一翼を支えています。

C-17グローバルマスター(Globemaster) III

A U.S. Air Force C-17 Globemaster III heavy-lift transport aircraft flies over Travis Air Force Base, Calif., Mar. 27, 2017. This aircraft was developed for the USAF in the 1980s to the early 1990s by McDonnell Douglas. The C-17 carries forward the name of two previous piston-engined military cargo aircraft, the Douglas C-74 Globemaster and the Douglas C-124 Globemaster II. The C-17 commonly performs strategic airlift missions, transporting troops and cargo throughout the world; additional roles include tactical airlift, medical evacuation and airdrop duties.(U.S. Air Force photo/ Heide Couch)

図5-1 C-17グローバルマスター(Globemaster) III(その1)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、米国陸軍の主力戦車M1A2 Abrams(エイブラムス)を搭載している写真です。

M1A2 Abramsは、60トン(60,000kg)超、重量だけでなく戦車(装軌車)の自走に耐える機体の設計・製造も目立ちませんが技術力あればこそです。

下図の写真では、砲塔を後方に向けています。

C-17グローバルマスター(Globemaster) III(その2)

Heavy cargo U.S. Air Force Airmen assigned to the 816th Expeditionary Airlift Squadron load a U.S. Army M1A2 Abrams into a U.S. C-17A Globemaster III at Ali Al Salem Air Base, Kuwait, Aug. 27, 2022. The 816th EAS conducts rapid global mobility operations vital to the multinational coalition effort dedicated to militarily defeating the Islamic State group of Iraq and Syria. (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Matthew Plew)

図5-2 C-17グローバルマスター(Globemaster) III(その2)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

C-17グローバルマスターIIIの詳細は、以下の記事をご参照ください。

参考リンク(米国空軍のWebサイト)

空力的な改善に関する米国空軍の取り組みについて参考にした記事を紹介します。

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まとめ

米国空軍では様々な空力技術(エアロダイナミクス)に関する取り組みがなされています。

ここでは、米国空軍のWebサイトの記事から、C-17 Globemaster(グローバルマスター) IIIに3Dプリンタで作ったマイクロベーン(Microvane)を適用した空気抵抗低減について、以下の項目で説明しました。

  • 空気抵抗を減らす機体形状
  • 乱流を利用した空気抵抗低減
  • マイクロベーン(Microvane)とは
  • C-17グローバルマスターIIIを簡単に紹介
  • 参考リンク(米国空軍のWebサイト)
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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