音の試験をする施設の1つに無響室があります。
無響室は外からの音を遮断するだけでなく、部屋の壁、床、天井に吸音材を設置しており、無響室の中に設置した音源からの音が壁などによる反射を防ぐこともできる部屋です。
無響室の中では、音が全く響かない(壁や天井からの反響音がない)ため、個人差はありますが中にいると違和感を感じるだけでなく、少々気持ち悪い感じがします。
この無響室の電磁波版が、電波暗室です。
ここでは、世界最大の電波暗室といわれる米国空軍のBenefield Anechoic Facilityでの電磁波試験について写真を使い説明します。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)にも規模は違いますが試験設備があります。
電波暗室とは
電波暗室は、電波無響室ともいわれます。
- 英語では、electromagnetic-anechoic-chamberやAnechoic Facilityです。
電波暗室では、機体から放射される電磁波の計測、機体に放射した電磁波による機体への影響などを調べることができます。
世界最大の電波暗室Benefield Anechoic Facilityは、米国空軍の施設で、次のような用途に使用されます。
- 航空機の無線周波数(RF:radio frequency)帯の試験
- 航空機の通信システムに関する試験
- 航空機から放射される電磁波、あるいは、航空機への電磁波への影響を調べる試験
- GPS(Global Positioning System)に関する試験
- レーダーやアンテナに関する試験
測定対象から放射される電磁波を計測したり、逆に、測定対象に電磁波を照射して測定対象が正常に機能するか検証する試験を行えます。
電磁波のシミュレーションや、実機への影響を検証したりすることができます。
写真で見る航空機の電磁波試験
ここでは、航空機の電磁波試験として、輸送機と戦闘機のソフトウェア更新に伴う電磁波試験を紹介します。
F-15Eストライク・イーグルの電磁波試験
F-15Eストライク・イーグルは、ステルス機ではありませんが最強の戦闘機ともいわれています。
基本設計に優れた機体であり、最新のF-15EXイーグルIIは、フライバイ・ワイヤを搭載するなど、F-22ラプターやF-35AライトニングIIなどのステルス機同等の最新のアビオニクスに更新されています。
下図は、F-15Eストライク・イーグルのミサイル防衛システムEPAWSSの試験の様子です。
- EPAWSS(Eagle Passive/Active Warning and Survivability System)
- イーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム
図1 F-15Eストライク・イーグルの電磁波試験
出典:AIR FORCE MATERIAL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-15Eストライク・イーグルの全長は19.44 m、主翼幅は13 m、機体重量は17,010 kgあります。
Benefield Anechoic Facilityの電波暗室の大きさが分かります。
F-15シリーズの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-16ファイティング・ファルコンの電磁波試験
F-16ファイティング・ファルコンは、戦闘機界のベストセラーともいわれており、基本設計に優れた機体です。
下図は、F-16ファイティング・ファルコンのソフトウェア・アップグレードに伴う試験の様子です。
- 搭載されているシステムやソフトウェアは、ブロック単位でアップグレードすることで最新の技術を利用することができます。
図2 F-16ファイティング・ファルコンの電磁波試験
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-16ファイティング・ファルコンの全長は14.8 m、主翼幅は9.8 m、機体重量は16,875 kgあります。
F-16ファイティング・ファルコンの詳細は、以下の記事をご参照ください。
B-1Bランサーの電磁波試験
B-1Bランサーは、可変翼の戦略爆撃機です。
下図は、B-1Bランサーのソフトウェア・アップグレードに伴う試験の様子です。
図3 B-1Bランサーの電磁波試験
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1Bランサーの全長は44.5 m、主翼幅は最大41.8 m最小24.1 m、機体重量は86,183 kgあります。
B-1Bランサーの詳細は、以下の記事をご参照ください。
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- EDWARDS AIR FORCE BASEの(米国空軍)の772nd Test Squadron – Benefield Anechoic Facility(BAF – Anechoic Chamber)に関するページ
まとめ
音の試験をする施設の1つに無響室があります。
無響室は外からの音を遮断するだけでなく、部屋の壁、床、天井に吸音材を設置しており、無響室の中に設置した音源からの音が壁などによる反射を防ぐこともできる部屋です。
この無響室の電磁波版が、電波暗室です。
ここでは、世界最大の電波暗室といわれる米国空軍のBenefield Anechoic Facilityでの電磁波試験について、写真を使い以下の項目で説明しました。
- 電波暗室とは
- 写真で見る航空機の電磁波試験
- F-15Eストライク・イーグルの電磁波試験
- F-16ファイティング・ファルコンの電磁波試験
- B-1Bランサーの電磁波試験
- 参考リンク