商品企画の仕事といえば、
アイディアマンが社内を説得して新商品をリリース、業績回復に貢献
といった、TVや映画になりそうなイメージもありますが、
私の経験した商品企画は、
- 既存製品の維持で手一杯で新商品などやめてくれという技術
- ライバル社のように何でもありなら売れるという営業
- どうすればいいんだと考えるも先が見えない商品企画
といったと感じでした。
大型のプロジェクトが中止となり、商品企画もおもしろそうだと思い、受け入れ先も喜んでいる様なので社内異動、売れるものを企画するという得難い経験をさせて頂きました。
ここでは、商品企画担当者だけでなく、実際に設計やモノづくりにかかわる設計者の方に、モノづくりメーカーでの商品企画とモノづくりについて説明します。
売れる商品を企画する?
「売れる商品を企画するのは簡単なことではない。」というのは、とある転職サービスの担当の方と話をしていた時に、はじめて聞いた言葉です。
「売れる商品を企画する」ことが、商品企画担当者の仕事だと思っていたので、意外だなという気持ちで聞いたことを思い出します。
個人的には、「売れる商品を企画する」という言葉が気になったためか、その後の経験を踏まえ商品企画をキーワードに振り返ってみると、次のようなことが分かりました。
- 優秀な(売り上げや利益がNo.1の)営業だから、売れる商品を企画できるわけではない。
- 優秀な技術だから、売れる商品を企画できるわけではない。
これらを見方を変えてみると、
- お客様はこんな商品が欲しいと営業がいっても、それが売れる商品になるとは限らない。
- 最新の技術を取り込んだ商品なら売れると技術がいっても、それが売れる商品になるとは限らない。
ということでもあります。
言葉遊びのようですが、次の2つは大きく違います。
- 「売れる商品を企画する」
- 「企画した商品が売れる」
売れる商品を企画するために
売れる商品を企画するための考え方やポイントについて、自分の経験を振り返りつつ説明します。
商品企画担当としてうれしかったできごと
「売れる商品を企画しました。」といえることでもあり、自分が商品企画の仕事をして本当によかったなと思う経験があります。
その商品の特徴を列挙すると、
- 主力製品の売上に寄与するのが目的(短期開発)
- 既存の技術を組み合わせた商品(目新しい技術はない)
- 見た目はお世辞にもスマートとはいえないが、使用者のニーズには答えた商品
といったものです。
当時を思い起こすと、商品を企画し開発がはじまってからも、営業会議で担当執行役員にダメ出しされたりもしましたが、出荷後即受注することができ、それなりの年間販売台数となりました。
この商品で、うれしかったのが、とある展示会に出展していたところ、まさに想定していた使用者が、出張の途中でわざわざ展示会場のブースにまで来て、「こういう商品が欲しかったんだよ。」と伝えに来ていただけたことです。
自分が直接対応したわけではありませんが、離れたところでやりとりを聞いていて、とてもうれしく思ったことを今でも思い出します。
要求と仕様の違いを意識する
設計開発において要求仕様書といった言葉がありますが、要求と仕様との違いは明確に意識することが必要です。
ここでの要求と仕様とは、次の意味合いです。
- 要求:お客様(使用者)がこうしたいということです。
- 仕様:お客様(使用者)がしたいことを実現するための商品の仕様(機能など)
お客様の欲しいものが売れるものではないということは、iPhoneの例を出すまでもなく一般的にいわれていることです。
商品企画の担当者としては、
- 企画する商品を使って何をするのか、どんなことがしたいのか
については、継続して考え続け、自分の中で文書化(言葉で表せるように)することが必要です。
商品開発とは、お客様のやりたいことを実現するために、
- 商品に対する要求を明確にし、
- 求められる要求を実現できる仕様(ハードやソフト)を具体化すること
だと考えています。
要求の内容と優先順位
要求とは、要求をする人により違ってきます。
要求の優先順位も人により違うことは、当たり前です。
例えば、要求の優先順位は、次のようなイメージになります。
- 使う人:やりたいことができる→簡単にできる→教えやすい
- 要求を聞いてくる人(営業など):並列の要求が増えがち。多機能こそ最善となりがち。優先順位が好みで決まりがち。
- 設計する人:できることに変換しがち。
- 作る人:作りやすさが最優先になりがち。
商品企画担当者としての心構え(覚悟)
企画する商品について一番長く深く考えているのは、商品企画担当者です。
このことは、商品企画として提案した時点が、商品企画担当者が盛り込みたいと考える機能や仕様が最も多く、その後は、減る方向になるということです。
新商品というと商品企画が何でも決められると思われがちですが、実際には自分で決めることよりも、必然的に決まる(制約)条件も少なくありません。
思いついたアイディアを、商品企画という形にして、まずは、試作に進むまででさえ、機能や仕様、あるいは、デザインなどでの妥協が必要になります。
このため、様々な立場からの要求を見極め、優先順位を決めることが必要になります。
様々な要求について、商品企画担当者としての優先順位は決めておきます。この優先順位は公開する必要性はありませんが、担当者としての優先順位の決め方から必然的に決まってくるものだと考えています。
なお、優先順位の考え方は、立場で変わりますので、公開すればよいというものではありません。むしろ、商品企画段階での情報は、利用される危険性もありますので注意が必要です。
商品企画担当としての考え方:ロードマップのすすめ
商品企画担当のお仕事をしていた時は、四六時中そのことを考えているわけではありませんが、次のことに注意するようにしていました。
- 今を知る:製品、ユーザー
- ニーズ:ユーザーだけでなく作る側も
- 実力:アイディア、企画、設計・開発、モノづくり、アフターサービス
これらのことには、次のことに注意して、客観的裏付けを意識しながら情報を整理します。
- 正解はない(ことを忘れない)。
- 聞くことは必要ですが、自分の判断に与える影響を意識する。
- 社内、利害関係者、社外の客観性を意識する。
例えば、ニーズについて考えるときは、新商品開発というと全く新しい商品というより、
- 売れてる商品の隣接エリアの商品
- 既存のモノや技術の組み合わせ
を意識する。
自社製品全体の商品企画なら、
- これまでと、今、これからの商品構成
を意識する。
商品企画と開発期間は、中期の3年間をリアルにイメージしていました。
売れる商品を企画するようにいわれると、経営戦略ならぬ商品戦略を作りはじめたりしますが、本当に必要なのは、
- 過去3年間の自社の製品ラインナップ、売上や利益
- 製品ラインナップの製品寿命(部品のディスコンなど)
です。
まずは、主力製品とNo.2の製品から手をつけてみてはいかがでしょうか?
- 願望や希望ではなく、現実やリアルな製品ロードマップを作るイメージです。
- 製品ロードマップというと商品寿命(販売期間)だけですが、実際の開発リソース(技術者の割当てなど)を考慮すると、商品企画に使えるロードマップを作れます。
商品企画担当者としてぶれないようにすること
商品企画担当者として、商品企画がある程度イメージできるようになってからは、販売開始まで次のことを意識するようにしていました。
- 担当者としての商品イメージや判断は維持する。
- 企画部署、営業、技術、製造の考えは自部署(自分)が最優先であることを忘れない。
- 売れれば企画を除く部署の成果、売れなければ企画の責任(企画がダメだ・・・)となりがちなので、気にしない。
商品イメージが具体的になってきたら、他の人の声や話は聞くけれども気にしないが成功の鍵なのかもしれません。
企画した商品が売れるマーケティング
企画した商品が売れるためには、まず、知ってもらうことが必要です。
知ってもらうためには、様々な手段を使い早めに動きます。
- 新規の顧客よりは、既存顧客へのマーケティングを重視
- 新規顧客よりは、既存顧客重視
- 既存顧客から関連業界、関連しそうなお客様に広げる取り組み
- Webサイト(ホームページ)、SNS、展示会もリアルとバーチャル
今の時代、想像力が必要なので、まずは、思い込みに気づくことからはじめるイメージになります。
まとめ
商品企画の仕事といえば、新商品で業績回復といった、TVや映画になりそうなイメージもありますが、
私の経験した商品企画は、
- 既存製品の維持で手一杯で新商品などやめてくれという技術
- ライバル社のように何でもありなら売れるという営業
- どうすればいいんだと考えるも先が見えない商品企画
といったと感じでした。
ここでは、商品企画担当者だけでなく、実際に設計やモノづくりにかかわる設計者の方に、モノづくりメーカーでの商品企画とモノづくりについて、以下の項目で説明しました。
- 売れる商品を企画する?
- 売れる商品を企画するために
- 商品企画担当としてうれしかったできごと
- 要求と仕様の違いを意識する
- 要求の内容と優先順位
- 商品企画担当者としての心構え(覚悟)
- 商品企画担当としての考え方:ロードマップのすすめ
- 商品企画担当者としてぶれないようにすること
- 企画した商品が売れるマーケティング