樹脂成型のシミュレーションは難しいことは知識としては知っていましたが、ガンプラをきっかけに、
- バンダイの4色成形機のキーパーツは型の様だ。
- プラモデルのランナーはどうやって作るのだろうか?
- 樹脂成型って何だろう?
と実際のモノづくりについて疑問に思い、コツコツ調べていたところ以下のページをみつけました。
2000年頃の資料ですが、中小製造業の技能教本マニュアルとしてまとめられています。
実際にモノづくりに携わっていないと理解の難しい資料ではありますが、私が興味を持った部分についてまとめています。
モノづくりと品質
品質は、次の3つに分けることができます。
- モノづくりにおける設計品質(いわゆる設計図)
- 製造品質(でき上がった物)
- 顧客品質(お客様にとっての品質)
「品質は製造で作り込む」とも言われており、モノづくりの品質(満足度、採点、評価)は、お客様の要望から設計開発、製造、納品までを含む結果となるため、検査だけ強化しても品質は上がりません。
以下、製造品質に関わるモノづくりの技術・技能マニュアルについて説明します。
モノづくり技術・技能教本マニュアルとは
溶接、鋳造(鋳物)、金型、めっきなどについて平成11年から13年(1999年~2001年)に発行された教本マニュアルです。
「ものづくり基盤技術・技能教本マニュアル」のページから引用します。
本コンテンツは、中小製造業の生産現場を支えてきたものづくり基盤技術・技能の継承に活用できるように、中小企業総合事業団[現:(独)中小企業基盤整備機構]が業界の協力を得て、教本マニュアル形式にまとめたものです。
自動車や産業用機械、電気製品、日用品などの広範囲な産業分野に用いられている共通基盤的加工技術・技能分野を対象としています。
産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
ものづくり基盤技術・技能教本マニュアル より引用
パソコン(Windows 2000)が本格的に使われ始めた頃ですが、
- 紙のマニュアルをスキャンしたマニュアル
- きれいなPDF担っているマニュアル
- 目次だけHTMLが準備されたマニュアル
があり、何となく時代を感じます。
プラスチック成型
プラスチック成型についてのマニュアルは3つあります。
私は、以下の順で読んでみました。
ここで紹介しているマニュアルに限らず、成型と成形は同じ意味で使われているようです。
プラスチック用金型製作の技術・技能マニュアル
「プラスチック用金型製作の技術・技能マニュアル」は、全部で18頁のマニュアルで、以下についてまとめられています。
いわゆる職人芸のような技量が必要なモノづくりだということが分かりました。
- 身近にあるプラスチック製品
- プラすっちっくの射出成形と金型
- 金型の基本構造と製作プロセス
- 射出成形と成形不良
- 成形品の品質管理
プラスチック成型用金型(その1)
「プラスチック成型用金型(その1)」は、230頁あります。
技術的なことが230頁にわたり書かれているとかなりのボリュームです。
まずは、図や絵をざっとみて、ゲート、ランナー、アンダーカットなど知っている言葉のある部分を軽く読み、前の方から流し読みをしました。
私の様にプラスチック成型の経験はない場合には、はじめに、冒頭の「本マニュアル作成にあたって」に目を通し、プラスチック成型についておおまかにつかむと分かりやすいと思います。
その後、興味のある部分を読んでいくというよりは、興味のない部分についてはどんどん飛ばし読みをしてとりあえずマニュアルの最後まで目を通してみるのがよいと思います。
不具合調査のためにその原因を調べたり、製造工程を確認したことはありますが、再現性のない場合も多く樹脂成型品の不具合原因調査はすっきりしないことが多いです。
主な内容は以下の通りです。
- プラスチック成形品、成形金型の動向
- ゲート、ランナ、ウェルド
- パーテング面
- キャビティ・コア
- アンダカット
- 成形品の加飾、2次加工
- 金型構造
- 抜き勾配
- エジェクタピン
- 金型の強さ
- 金型材料、処理
- 機械加工等
- 手仕上げ、組立
- 新材料のための金型
- 金型の検査と保守
プラスチック成形用金型(その2)
このマニュアルは、プラスチック成形材料についてまとめられています。
2010年頃の話なので、エンジニアリングプラスチック、FRPやケプラー、ポリマーアロイなどについて書かれています。
金属製品のプレス加工
プラスチック以外に読んでみたマニュアルについて紹介します。
プレス加工用金型の製作に係る技能(順送型の製作)
順送型による金属部品の製造は見たことがありますが、プレスが進むごとに素材から部品へと形を変えていくのはとても興味深いものでした。
技能的プレス加工の製作マニュアル
全312頁、ざっと目を通しただけなのですが、プレス加工とはどの様なものなのかが分かるかと思います。
主な内容を以下に列挙します。
- プレス加工と金型
- プレス加工法
- プレス機械と附属装置
- 金型各部の名称と機能
- 金型加工に用いられる工作機械と工具
- 金型用材料と熱処理
- 金型製作の基本作業
- 外形抜き型の製作
- V曲げ型の製作
- 絞り型の製作
鋳物の製造
鋳物工場を見学させていただいたことがありますが、3Kと呼ばれる職場ですが、きっちりと工程管理がなされ安定した鋳造をしているのには驚きました。
キュポラといえば埼玉県川口市が有名ですが、今は電気炉が使われていることが多いようです。
銑鉄鋳物生産技術標準マニュアル(誘導炉)
このマニュアルは、全152頁です。
鋳物製品は、素材から工程を進むにつれて材料の特性(成分)が変わっていきます。
材料分析や素材の変化などは、金属の組成などについての知識も必要ですが、材料に求められる特性をどのようにして作り上げ管理していくのかという面からもおもしろく読みました。
鋳物工場を見学して経験があっただけに、より興味を持って読めたようです。
主な内容を以下に列挙します。
- 目標中間品質
- ねずみ鋳鉄品
- ダクタイル鋳鉄品
- 原材料・副資材
- 主要設備の能力及び寸法
- 築炉
- 製造条件
- 製造方法
- 仕様試験計測器の能力及び精度
- 製造作業の注意事項
- 作業環境
- 管理項目と管理方法
- 使用設備の日常点検
鍛造
自動車部品などによく使われる鍛造についてのマニュアルです。
製造ロット(一度に生産する数量)は、万のオーダーです。
自動車部品で不具合品(不良品)が1個出てしまうと、残りを全数検査するそうですが、結果的には不良はみつかった1個だけということが多いと聞いたことがあります。
アルミ鍛造マニュアル
全168頁、マニュアルを読むとビデオも作られたようです。
主な内容を以下に列挙します。
- アルミニウムの魅力
- アルミニウムの製造方法
- アルミニウムの使われ方
- アルミニウム鍛造部品の使われ方
- 鍛造加工とは
- 鍛造における基本的変形の種類
- 工程全体の流れ
- 切断
- 鍛造用素材
- 鍛造機の種類
- 鍛造金型の製作
- 潤滑
- 鍛造(熱間/冷間)
- 熱処理
- 検査
- 製品のできるまで
- 鍛造工程製品事例
鍛造加工技術・技能マニュアル
全207頁です。
主な内容を以下に列挙します。
- 鍛造加工の概要
- 鍛造の目的
- 鍛造の種類と特徴
- 鍛造素材
- 鍛造法案(方法)
- 鍛造機械および設備
- 技術・技能マニュアル
- 素材切断
- 加熱
- 潤滑
- 熱処理
- 仕上・検査
- 主要型鍛造品の製造工程事例
技能教本マニュアルを作った方へのお礼
実験とシミュレーションの連携を扱うテキスト作成は、後から振り返るとなかなか大変でしたが、「ものづくり基盤技術・技能教本マニュアル」をまとめるのも多くの人の協力あってできたものだと思われます。
中小製造業の生産現場では、なかなかマニュアル化が進まず、技能者の高齢化などにより、実際に機械等を使ってモノづくりをする技術が途絶え、昔はできていたことが今はゼロから始めないと作れないことも珍しくありません。
ここで紹介した資料は、モノづくりに必要な完璧なマニュアルではありませんが、それでも必要な人がいて、役立つ場面も少なくないと考えています。
まだ一部しか読んでいませんし、内容を理解しているわけでもありませんが、「ものづくり基盤技術・技能教本マニュアル」を文書として残してくださった方々に感謝します。
まとめ
ガンプラがきっかけで樹脂成型について調べて始め、産総研のサイトに技能教本マニュアルをみつけました。
2010年頃に作られたもので私には難しい部分もありますが、樹脂成型、鋳造、鍛造等のリアルなモノづくりを知るため図表を眺めることから始めています。
ここでは、以下の項目で説明しました。
- モノづくりと品質
- モノづくり技術・技能教本マニュアルとは
- プラスチック成型プラスチック用金型製作の技術・技能マニュアル
- プラスチック成型用金型(その1)
- プラスチック成形用金型(その2)
- 金属製品のプレス加工プレス加工用金型の製作に係る技能(順送型の製作)
- 技能的プレス加工の製作マニュアル
- 鋳物の製造銑鉄鋳物生産技術標準マニュアル(誘導炉)
- 鍛造
- アルミ鍛造マニュアル
- 鍛造加工技術・技能マニュアル
- 技能教本マニュアルを作った方へのお礼