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非破壊試験:鉄製アングルの溶接部分のカラーチェック(浸透探傷試験)

金属の強度試験

非破壊検査とは、文字通り、検査対象を壊すことなく、表面や内部のキズがないかなどを調べる検査です。

例えば、溶接部分にピンホールやクラックがないかを調べる場合に非破壊検査を行います。

  • 非破壊試験と非破壊検査の違いは、検査は試験結果の評価を含むことで、実際に行うことは同じです。

非破壊試験には、放射線(X線)投下試験、超音波探傷試験、磁粉探傷試験、浸透探傷試験などがあります。

ここでは、非破壊試験の1つでカラーチェックともいわれる浸透探傷試験について説明します。

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浸透探傷試験とは

浸透探傷試験とは、非破壊検査の1つの方法で、試験対象の表面を調べます。

はかせ
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ずいぶん昔のことですが、61式戦車のクラッチ板のカラーチェックを見たことがあります。クラッチ板の洗浄とふき取り作業が大変そうだった印象があります。

浸透探傷試験の手順は、

  • 試験対象の表面をきれいにする(前処理)。
  • 染める(赤い浸透液をスプレーする)。
  • 洗浄とふき取り。
  • 現像する(白いスプレーをする)。

浸透探傷試験のイメージ

以下、浸透探傷試験のイメージを説明します。

下図は、浸透探傷試験の前処理のイメージ図です。

  • 下図は、表面にキズのある部分のイメージです。
  • 試験対象の表面を徹底的にきれいにします。
浸透探傷試験のイメージ:前処理

浸透探傷試験のイメージ:前処理

図1-1 浸透探傷試験のイメージ:前処理

下図は、試験対象の表面に、浸透液(赤いスプレー)を塗布したイメージ図です。

  • 浸透液が試験対象の表面のキズに浸透しているイメージです。
浸透探傷試験のイメージ:浸透(赤いスプレー)

浸透探傷試験のイメージ:浸透(赤いスプレー)

図1-2 浸透探傷試験のイメージ:浸透(赤いスプレー)

下図は、余分な浸透液をふき取り、表面を洗浄した後のイメージ図です。

  • 洗浄が不十分で、試験対象の表面に浸透液が残っていると、現像(白いスプレー塗布)してもキズかどうかの判別が難しくなります。
はかせ
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初めてカラーチェックを見ていた時は、こんなに洗浄して大丈夫なのかと思っていましたが、逆にやり過ぎと思うくらい洗浄しないときれいに現像できないことに驚いた覚えがあります。

浸透探傷試験のイメージ:洗浄

浸透探傷試験のイメージ:洗浄

図1-3 浸透探傷試験のイメージ:洗浄

下図は、現像(白いスプレーを塗布)したイメージ図です。

  • キズがあると、現像液(白)に浸透液(赤)がにじみ出てきます。
浸透探傷試験のイメージ:現像(白いスプレー)

浸透探傷試験のイメージ:現像(白いスプレー)

図1-4 浸透探傷試験のイメージ:現像(白いスプレー)

浸透探傷試験では、

  • 前処理で徹底的に表面をきれいにすること
  • 赤いスプレーを浸透させた後、徹底的に洗浄すること

が、キズを発見するために重要です。

鉄製Lアングルの溶接部分の浸透探傷試験

鉄製のLアングルの溶接部分を浸透探傷試験の例を写真で説明します。

はかせ
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以下の写真は、溶接部分を浸透探傷試験(カラーチェック)するとどうなるかを教育目的で行った場合のもので、イメージが伝われば幸いです。

溶接部分のカラーチェック

下図は、浸透探傷試験の前処理後の写真です。

  • 下図は、鉄製のLアングルを溶接した部分です。
  • 溶接部分(下図斜めの盛り上がった部分)周辺をきれいにします。
溶接部分の浸透探傷試験:前処理

溶接部分の浸透探傷試験:前処理

図2-1 溶接部分の浸透探傷試験:前処理

下図は、試験対象の表面に、浸透液(赤いスプレー)を塗布した写真です。

  • 浸透液を溶接部分にスプレーしています。
溶接部分の浸透探傷試験:浸透(赤いスプレー)

溶接部分の浸透探傷試験:浸透(赤いスプレー)

図2-2 溶接部分の浸透探傷試験:浸透(赤いスプレー)

下図は、余分な浸透液をふき取り、表面を洗浄した後の写真です。

  • うっすらと赤い浸透液が残っているように見えます。
はかせ
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浸透探傷試験では、洗浄液、浸透液、現像液の3種類のスプレーを使用します。

各スプレーの使用量は、浸透液1本に対し、洗浄液は2本(足りないことも)、現像液は1本でも余る量です。

前処理や洗浄でウェスを大量に使います。

溶接部分の浸透探傷試験:洗浄

溶接部分の浸透探傷試験:洗浄

図2-3 溶接部分の浸透探傷試験:洗浄

下図は、現像(白いスプレーを塗布)した写真です。

  • キズがあると、現像液(白)に浸透液(赤)がにじみ出てきます。
  • 下図では、きれいに溶接されているようです。
溶接部分の浸透探傷試験:現像(白いスプレー)

溶接部分の浸透探傷試験:現像(白いスプレー)

はかせ
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浸透探傷試験は、試験をする人と現像結果を判断する人とで必要な資格(講習)が違います。

図2-4 溶接部分の浸透探傷試験:現像(白いスプレー)

浸透探傷試験では、

  • 前処理で徹底的に表面をきれいにすること
  • 赤いスプレーを浸透させた後、徹底的に洗浄すること

が、キズを発見するために重要なことが、ここまでの写真で伝われば幸いです。

参考:浸透探傷試験の資格

浸透探傷試験には、資格はありません。

浸透探傷試験は、手作業の試験で試験方法は技術的に難しいものではありません。

しかし、浸透探傷試験結果の精度(キズの検出)は、試験者の技量に大きく左右され、キズ等を見落とすリスクもあります。

このため、浸透探傷試験の技術レベルを一定にするため、一般社団法人 日本非破壊検査協会により、JIS Z 2305に基づく技量認定試験が実施されており、合格者には技術資格証明書が発行されます。

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まとめ

非破壊検査とは、文字通り、検査対象を壊すことなく、表面や内部のキズがないかなどを調べる検査です。

例えば、溶接部分にピンホールやクラックがないかを調べる場合に非破壊検査を行います。

ここでは、非破壊試験の1つでカラーチェックともいわれる浸透探傷試験について、以下の項目で説明しました。

  • 浸透探傷試験とは
    • 浸透探傷試験のイメージ
  • 鉄製Lアングルの溶接部分の浸透探傷試験
    • 溶接部分のカラーチェック
  • 参考:浸透探傷試験の資格
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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