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試験片による強度試験:意外に難しいばね用ステンレス鋼線の引張試験

金属の強度試験

引張試験は金属材料の強度を評価するためによく使われる強度試験の1つです。

例えば、次のような場合があります。

  • 製品ロットの材料の強度に変化はないか確認する。
  • 不具合ロットの材料の試験結果を確認する。
  • 形状や目的にもよりますが、製品そのものの強度試験をする。

ここでは、金属材料の強度試験について、スプリング用のステンレス鋼線(SUS304)の引張試験(破断試験)について説明します。

金属材料の強度試験(引張試験)の概要とアルミニウム合金鋳物(AC7A)の引張試験については、以下の記事をご参照ください。

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ステンレス製ばねの引張試験

引張試験には、引張試験専用機ではなく、万能試験機やアムスラーと呼ばれる引張や圧縮試験もできる試験機が使われています。試験機の大きさは試験荷重により様々ですが、縦型と横型に大きく分かれています。

なお、試験機の詳細については、試験機メーカーのWebサイトなどでご確認ください。

ここでは、下図に示す縦型の引張試験機による、ばね用ステンレス鋼線(SUS304)の引張試験について説明します。

下図は、縦型の引張試験機のイメージ図です。

  • 下図の青い試験片を試験機のチャックで固定し、試験機では試験片に引張荷重を与えます。
  • 右側のメーターは、試験荷重値を示しています。(アナログの針でも中身はデジタルです。自動車などと同じです。)
引張試験のイメージ

引張試験のイメージ

図1 引張試験のイメージ

ばね用ステンレス鋼線について

引張試験の対象は、ばね用ステンレス鋼線(SUS304)です。

下図は、ばね用ステンレス鋼線(SUS304)と加工したばねのイメージ図です。

ステンレス鋼線とばねのイメージ

ステンレス鋼線とばねのイメージ

図2 ステンレス鋼線とばねのイメージ

試験片は、上図の様にコイル状に巻かれたステンレス鋼線を切断したものになります。

下図は、試験片の写真です。

コイル状に巻かれたステンレス鋼線は、円弧上に曲がっていますので、できるだけ直線状になるようにします。

  • 巻きのクセが残る鋼線を直線上にしたり、引張試験機に固定する方法は、職人芸の様な面があり経験を積み、自分で体得していかないと、試験片の中央付近で破断させるのは難しいようです。
はかせ
はかせ

引張試験機のチャックに固定する場合についても同様なのですが、理論上は試験片は中央で破断するはずなのですが、実際には、引張試験機による荷重方向とチャックに固定した試験片の方向が完全に一致はしないこともあり、試験片の中央付近で破断させるには観察力と経験が必要です。

なお、図2の右側のばねを作る際には、巻いてあるステンレス鋼製の巻き癖を取ってから加工します。ばねを作るノウハウの1つです。

引張試験で分かること

引張試験をすることで、金属材料の機械的な強さが分かります。

具体的には、引張力に対する以下の特性(性質)が分かります。

  • 降伏点
  • 引張耐力
  • 応力とひずみの関係
  • 伸びやひずみ
  • 破断や降伏の状態

引張試験は、試験片に引張力を与え、破断に至るまでのひずみを加えることで、材料の機械的性質を明らかにします。

後述する引張試験では、ばね用のステンレス鋼線の引張強度、伸び率を確認しています。

応力やひずみについては、以下の記事を参照してください。

ステンレス鋼線(SUS304)の引張試験

ステンレス鋼線(SUS304)の引張試験結果の一例を紹介します。

下図は、ばね用ステンレス鋼線(SUS304)の引張試験前後の試験片の写真です。

  • 試験前の試験片は、できるだけ直線状になるようにしています。
  • 引張試験で荷重を加えていくと、弾性変形から塑性変形となり、さらに荷重を加えていくと破断します。
  • 試験片の黒いマーキングは標点です。破断箇所が評点間中央付近になるとよいのですが、下図では偏っています。これは、試験片の形状や引張試験機のチャックでの固定方法によるものです。
引張試験により破断した試験片(その1)

引張試験により破断した試験片(その1)

図3 引張試験により破断した試験片(その1)

下図は、試験片の破断部分を拡大した写真です。

  • 延性破壊しています。
引張試験により破断した試験片(その2)

引張試験により破断した試験片(その2)

図3 引張試験により破断した試験片(その2)

下図は、試験片の断面の写真です。

引張試験により破断した試験片の断面

引張試験により破断した試験片の断面

図3 引張試験により破断した試験片の断面

引張試験結果は、以下のデータをまとめます。

  • 試験片の直径から断面積を求め、破断荷重(N)と強さ(N/m2)を求めます。
  • 荷重前後の標点距離(50mm)に対し、全伸び(mm)と伸び率(%)を求めます。
  • ミルシートは、例えばJIS規格の素材であることを示す証明記録(エビデンス)として使います。

引張試験による試験片の破断位置について

正確な説明ではありませんが、部品の素材試験の場合、規格値(設計値)の引張強度以上であることを確認できれば、試験目的は達成できたと考えられます。

つまり、試験片の標点間で破断していればよく、破断位置が標点間の中央になければならない理由はないのです。

引張試験は、試験片の両端を把持して、引張荷重を加えるシンプルな試験であり、理論上は試験片の中央で破断すると考えられます。

しかし、実際に引張試験をやってみると、同じ試験者であっても材料により、試験片の中央付近で破断する場合もあれば、この記事のステンレス鋼線のように試験片の中央付近で破断させることが難しい場合もあります。

試験片の中央で破断させられるようになるには、一言でいえば「経験を積む」ことになるのですが、引張試験機の操作に加え、具体的には次のようなことが必要になってきます。

  • 試験片(巻き癖がある場合、これを修正する)
  • チャックによる固定方法
  • 試験をはじめる前に、わずかに荷重をかけて試験片の両端への荷重のかかり具合、チャック状態の確認
  • 素材(材料)に関する知識(素材の特性、応力とかひずみなどの力学的な知識)

また、チャックによる対策も可能ではありますが、あくまでも試験片の中央付近で破断する確率を上げるための対策としかならないようです。

この記事の試験では、下図の様に平型のチャックを使っていますが、試験片に合わせた丸棒用のチャックを使う方法もあります。

引張試験機のチャックの例

引張試験機のチャックの例

図4 引張試験機のチャックの例

専用チャック(ジグ)は、新たなコストもかかりますし、専用ジグを使うことで試験片の中央を破断させる確率が上げられるというのが実状なので、やはり、経験を積むしかないのかもしれません。

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まとめ

引張試験は、次のような金属材料の強度を評価するためによく使われる強度試験の1つです。

  • 製品ロットの材料の強度に変化はないか確認する。
  • 不具合ロットの材料の試験結果を確認する。
  • 形状や目的にもよりますが、製品そのものの強度試験をする。

ここでは、金属材料の強度試験について、スプリング用のステンレス鋼線(SUS304)の引張試験(破断試験)について、以下の項目で説明しました。

  • ステンレス製ばねの引張試験
    • ばね用ステンレス鋼線について
    • 引張試験で分かること
  • ステンレス鋼線(SUS304)の引張試験
  • 引張試験による試験片の破断位置について
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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