これはすごいと感じたモノづくり技術の1つとして、ガンプラに使われている樹脂成形技術について、RG(リアルグレード)シリーズのν(ニュー)ガンダムを例に紹介します。
新発売の時に予約はできなかったのですが、発売直後にヨドバシカメラの通販で購入しました。部品が細かい(小さい)ため延び延びにしていましたが、2020年の5月に作り始めました。
ここでは、バンダイの4色成形機が作り出すイロプラと多重インサート成形についてまとめています。
ガンプラは、HGシリーズから始まり、MG、RG、PG、時にはBB戦士とずいぶん作りましたが、飾るよりも作ることそのものが今でも好きです。
ガンプラに使われている樹脂成形機とランナー
プラモデルの部品がついているパーツの集合体をランナーといいます。
バンダイには自社開発の4色成形機があり、この4色成形機から作り出される2種類のランナーがあります。
1つ目はイロプラと呼ばれるランナーです。
1枚のランナーに最大4色のプラモデルのパーツが同時成形されています。
2つ目は、多重インサート成型と呼ばれ、例えばランナーから手の部品を切り出すと、手の指関節が曲がるのです。
この4色成形機の技術的に優れた点は、4色のパーツを1枚のランナーに成形できるということは、次のことを実現していることになります。
- 4色の樹脂材料を1枚のランナーに成形できる。
- 色だけでなく、違う受持材料を使って1枚のランナーに成形できる。
この2点について、実際のガンプラ(RGニュー・ガンダム)を例に説明します。
4色成形のランナー(イロプラ)
RG(リアルグレード)のニュー・ガンダムに含まれる、イロプラを下図に示します。色は、グレー、レッド、クリアピンク、クリアグリーンの4色です。
図1 RGニュー・ガンダムのイロプラのランナー
下図は、イロプラの色の違うランナーの接合部分の拡大図です。
図中の青枠の部分をよく見ると、レッドとグレー、グレートクリアピンクの接合部分がともてきれいに、色が混じることなく、きれいな形でつながっていることが分かります。
バンダイの独自の4色成形機を使い、複数の樹脂材料を完璧にコントロールして量産する技術力には驚くばかりです。
図2 RGニュー・ガンダムのイロプラの拡大
シミュレーションなら樹脂流動解析になるのでしょうが、解析結果を現物に近づけるだけでも大変そうです。
複数の素材を組み合わせて1枚のランナーを作る(多重インサート成型)
RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネルのフレームに使われているランナーで、アドバンストMSジョイントと呼ばれています。
まずは、完成したフィン・ファンネルから説明していきます。
下図は、RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネルの完成品です。
下図の最下段が、両側を伸ばした状態、中央が片側のみ折りたたんだ状態、最上段が両側を曲げた状態です。
図3 RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネル
下図は、フィン・ファンネルの中央部分のパーツです。
左側の4つの部品を組み立てると、右側の完成品となります。
図4 RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネル:折り曲げ部分
組み立てに接着剤を使用しないスナップフィットなので、取扱説明書(組立図)をみながら各部品を組み立てていきます。
上図のフィン・ファンネルであれば、各パーツ同士が「スッ」とはまっていく感触です。
下図が、アドバンストMSジョイントのフィン・ファンネルの部品です。
図5 RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネル:アドバンストMSジョイント
上図の左側が両側を伸ばした状態、右側が両側を曲げた状態です。
両側が曲がるということで、RGニュー・ガンダムのアドバンストMSジョイントは、3つの部品が組み合わされていることになります。
3つの部品を1枚のランナーに成形するとは、「4色成形は伊達じゃない!」。
下図に、アドバンストMSジョイントのランナーの表・裏を示します。見た目では2種類のパーツが組み合わされていることがよく分かりませんでしたが、ランナーから切り離すと動くのです。
図 RGニュー・ガンダムのアドバンストMSジョイントのランナー
参考までに、フィン・ファンネルの組立図を下図に示します。
図 RGニュー・ガンダムのフィン・ファンネル組立図
【参考】ランナーの成形方法
ランナーの成形は、成形機でランナーの型に樹脂を注入して作ります。この際、樹脂材料を注入する際の温度、樹脂の注入速度、圧力などの調整が必要です。
型に樹脂を注入していくと、注入される樹脂の速度も温度も変わりますし、Rランナーを量産できる数多くの条件をどのように決めたのかとても興味深いです。
ガンプラの指の関節を一体どうやって成形しているのか、2枚のランナーを組み合わせて1枚のRランナーに仕上げているのか、想像してみるのもおもしろいと思います。
【参考】スナップフィット
「スナップフィットとは何なのか?」、文字で表現するのが難しいのですが、その特徴をいくつか列挙します。
- 組み立てに接着剤を使用しないはめ込み式のこと
- 図4のフィン・ファンネルであれば、各パーツ同士が「スッ」とはまっていく感触です。
- バンダイのサイトなどでは、「パーツ同士を合わせるだけで」と表現されている。
スナップフィットを理解するにはガンプラを実際に作ってみるのが一番分かりやすいです。
- パーツがスッとはまる。
- はめ込む場合は「パチン」とはまる場合もあります。
- 一度はめてしまうと簡単にはとれない。
- 間違った場合には、あせらず少しづつ、パーツにキズをつけないようにはめ込まれているパーツ間の隙間を少しづつ広げるようにして外す。
スナップフィットを実現している技術は、バンダイの4色成形機を使って作り出されるランナーの精度がすごいことになっているためです。
【参考】はかせのガンプラ作りに必要なもの
私のガンプラ作りは、
- ランカーからパーツを切り離す。
- ゲート跡が気になるパーツはデザインナイフで処理する。
- 組み立てる。
- 付属のシールを貼る。
これで、完成です。
使っている道具は、次の通りです。
- ニッパー(タミヤ製の薄刃ニッパー No.35)
- これはおすすめです。切るときの感触が好みです。
- デザインナイフ(オルファ製)
- パーツに残ったゲートの後処理
- ピンセット、つまようじ&綿棒
- シール貼りに必須です。
ちなみに、
- ヤスリは合わせ目消しとかできないので、使っていません。
- 塗装はできないし、前処理も必要ですし、技術もやる気もありません。
でもガンプラ作りは楽しいと思います。
まとめ
ここでは、ガンプラに使われている樹脂成形技術として、バンダイの4色成形機から作られる4色ランナー(イロプラ)と1枚のランナーに複数の部品を組み合わせて成形する技術(多重インサート成型)について、RGニュー・ガンダムを例に紹介しました。
なお、内容については技術的な裏付けがある訳ではなく、あくまでも私の個人的な考えなのでご注意ください。
ここで説明した主な項目は次の通りです。
- ガンプラに使われている樹脂成形機とランナー
- 4色成形のランナー(イロプラ)
- 複数の素材を組み合わせて1枚のランナーを作る(多重インサート成型)
- 【参考】ランナーの成形方法
- 【参考】スナップフィット
- 【参考】はかせのガンプラ作りに必要なもの