技術職で採用され設計をすることになったものの、なぜか品証の私に「OJTと称して過去図面の修正やトレースをしていれば設計ができるようになるのでしょうか?」と質問がありました。
ISOと言えば私(はかせ)のところに聞きに来るので分からないでもないのですが、設計はさすがになと思いつつ設計・開発規定を見直して作成していたりもするので、これは設計者になるつもりで実際にやってみるしかないかと、FreeCADを使ってやってみることにしました。
大学で立体図学や製図の勉強はしましたが、苦手意識が残っていて3D CADによるモデリングもなかなか手強いと思っている私(はかせ)ですが、2022年1月、はじめての設計を始めます。
前回は立体の投影法(3次元を2次元で表現する方法)について説明しました。
ここでは、3Dの立体を2Dの図面に表す第三角法とモノを作りやすい図面作成について説明します。
第三角法で立体を平面に投影する
3次元の立体を2Dの図面として表す場合、立体を平面(座標面)に投影した図として表します。
下図は立体を平面に投影するイメージです。
図1 第三角法で立体を平面に投影するイメージ
第三角法では、対象となる立体を上図の第三象限に置き、右や上から見た図を座標面に投影します。
JISの投影法は第三角法です。
下図は、立体を第三角法で表した図面のイメージです。
図2 立体を第三角法で表した図面のイメージ
上図の左側の図の左下にある図を正面図、上側を平面図、右側を右側面図と呼びます。
立体の特徴を最もよく表す方向から見た図を正面図にします。
次に右側面図、平面図を描いていきます。
なお、上図にはありませんが、左側から投影した面は左側面図、下側に投影した図を下面図、正面図の反対側に投影した図を背面図といいます。
立体の上側は「正面図」で「上面図とはいわない」のでご注意ください。
なお、第三角法の他に第一角法があります。第一角法では、図1の第一象限に立体を置いて投影します。
3Dモデルと2D図面
3D CADを使う場合、3D形状を最初から意識して3Dモデルを作っていきます。
図2の形状であれば、次の様な作り方が考えられます。
- 正面図の形状を作成し、作成した正面の形状を奥行き方向に延ばす。
- 直方体の形状を作成し、不要な三角柱の形状を引き算する。
3D CADのモデルを再利用するためには、3Dモデルの作り方を決めないと、再利用できないモデルができてしまうなど、3D CADの良さを活かすために守るべきルールも整備していくことが必要です。
自己流を避けるということで、これは2D CADでも共通の課題です。
3D CADは初期投資も維持費も2D CADより大きく、3Dの良さを活かすためにも、ルール(標準)を定めた設計(モデリング)手法を徹底させる必要があるということです。
モノを作りやすい図面を描くためのポイント
図面を描く時に意識することは、
- 描いた図面を誰が何のために見るか
だと考えています。
モノづくりの工程順に考えていくと、少なくとも次のような立場で図面を見ることになります。
- モノを作る加工担当者
- 図面通りにできているか確認する検査員
検査は加工されたモノが図面通りに作られたか確認することでもあるので、「モノを作りやすい図面」がよい図面といってよいと考えています。
そして、「モノを作りやすい図面」は、どの様に加工するのかを知らないと描けないのも事実です。
図面の正面図の選び方1つとっても、設計者の力量が現れるのですが、「モノを作りやすい図面」を描けるようになるために、次工程でもあるモノづくり(加工)の手順を知る、実際に素材から部品に加工していく工程を知っていることが重要です。
加工を体験してみると、自ら学ぶことも多いのですが、実験を知らずCAEから入る設計者が多くなっています。
モノづくりメーカーが教育・訓練することは、少なくともCAE以前の頃よりは増えていると考えています。
まとめ
3Dの立体を2Dの図面に表す第三角法について説明しました。
第三角法はJISの投影法ですが、モノづくりでは「モノを作りやすい図面」が求められます。
「モノを作りやすい図面」を描くためには、モノづくりの現場でどの様に素材からモノが加工されていくのか知ることが重要です。
ここでは、第三角法によるモノを作りやすい図面作成について以下の項目で説明しました。
- 第三角法で立体を平面に投影する
- モノを作りやすい図面を描くためのポイント