軸と穴との関係である「はめあい」とはどの様なものなのかについて、「すきまばめ」と「しばりばめ」について以下の記事で説明しました。
「はめあい」のJIS規格JIS B 0401は、以下の2部構成となっています。
JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎
JIS B 0401-2:2016 第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表
ここでは、「JIS B0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」から「はめあい」と公差について説明します。
「はめあい」の公差を決める考え方:JIS規格
「はめあい」の公差を決めることは、軸と穴の公差を決めることです。
公差と言えばJIS規格ということで、はめあい(すきまばめ、しばりばめ)の公差について調べてみると、JIS規格番号は JIS B 0401なのですが、1998年版を引用している場合と、最新の2016年版を使用している場合とがあります。
JIS B 0401の最新版は2016年版ですが、実際に「はめあい」の公差をつかう幾何公差(サイズ公差)となっているのが大きな違いです。
以下、「はめあい」の基礎については、2016年版を使い説明します。
「はめあいの」に関する2つのJIS規格の正式名称は以下の通りです。
JIS B0401-1:2016(ISO 286-1:2010)
製品の幾何特性仕様(GPS)-
長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-
第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎
JIS B 0401-2:2016(ISO 286-2:2010)
製品の幾何特性仕様(GPS)-
長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-
第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表
以下、「JIS B0401-1 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」から、「はめあい」の方式や決め方などについて説明します。
【参考】JIS規格の参照先
JIS規格は、登録が必要ですが日本産業標準調査会(JISC)のWebサイトで全文を見ることができます。
日本産業標準調査会(JISC)の「JIS検索」は、以下のリンク先を参照してください。
JIS B 0401-1の序文から「何がいいたいのか・・・」
JIS B 0401-1の序文を何度か読んでみましたが、規格の文章であることを前提にしても、少なくとも私には非常に分かりにくい文章です。
私の理解した内容を以下に列挙しますが、結局よく分からない(説明できない)ので、ここは読み飛ばして頂いた方がよいかもしれません。
- サイズ公差(幾何公差)となってからも、製造方法のバラツキと部品が大量生産されることから、「はめあい」は必要とされている。
- 「はめあい」の機能を満足させるためには、加工物のサイズが公差の間に入るように製造する必要がある。ここでの公差は、製造によるサイズのバラツキが、製品の機能的な「はめあい」の仕様を満足していることである。
- 特別な「はめあい」を求める場合には、必要な「すきま」又は「しめしろ」をもたせるために、図示サイズ(基準寸法)に対して許容範囲をもたせる必要がある。
以下、この規格の適用範囲に関することです。
- 長さに関するサイズについてのISO公差方式(公差に関するISOコード方式)と、「円筒」及び「相対する平行二平面」という2種類の形体に適用できる公差及びサイズ差を規定している。
- 旧規格「JIS B 0401-1:1998(ISO 286-1:1988)」では、形体のサイズについての標準的な当てはめ基準は、包絡の条件だった。しかし、「JIS B 0420-1(ISO 14405-1)」では、2点サイズを標準としている。つまり、サイズの標準仕様によって形状は管理されないということである。
- 多くの場合、この規格で規定する直径公差は、意図する「はめあい」の機能を有効に管理するには不十分である。JIS B 0420-1に規定する包格の条件が必要な場合もある。
- 幾何公差及び表面性状の要求も、機能の管理を改善することもある。
JIS B 0401-1の適用範囲
JIS B 0401-1の適用範囲を引用します。
適用範囲から、用語の定義と公差クラスの選定方法(穴基準と軸基準)について書かれていることが分かります。
この後は用語の定義など、「はめあい」についてというよりも規格の説明を読むような感じが強いので、何度か図表を見たり飛ばし読みをしながら読み進めました。
1 JIS B 0401-1の適用範囲
この規格は、次に示す形体の長さに関わるサイズ(以下、サイズという。)に用いるサイズ公差のためのISOコード方式について規定する。
a)円筒
b)相対する平行二平面
この規格は、このコード方式のための基本的な概念及び関連する用語を定義する。それは多くの公差の組合せの中から、標準的な公差クラスの選択方法を示す。
さらに、姿勢及び位置の制約を受けない二つのサイズ形体間のはめあいに関する基本的な用語を定義し、”穴基準”及び”軸基準”の原理を示す。
引用先:「JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」より
「はめあい」に関するサイズ公差について
ここでは、「JIS B 0401-1 4 長さに関わるサイズのサイズ公差のISOコード方式」の記載内容の紹介と「はめあい」の公差について、JIS B 0401-1の記載順にポイントと考える部分について説明します。
JIS B 0420-1との関係
- サイズ形体は、この規格で定義するISOコード方式又はJIS B 0420-1による+-(プラスマイナス)公差方式を使用してもよい。
- はめあいを求める場合、JIS B 0420-1による包絡の条件を指示することができます。
公差クラス
公差クラスには、サイズ形体の図示サイズに関連するサイズ公差の大きさ及びサイズ許容区間の位置の情報が含まれます。
サイズ公差の大きさ
- サイズ公差の大きさを表すのが公差クラスです。
- サイズ公差の大きさは、基本サイズ公差等級番号と公差付き形体の図示サイズとの関係によって決まります。
- 基本サイズ公差等級は、例えば、IT7のようにITの文字に続く等級番号によって指定します。
サイズ許容区間の配置
サイズ許容区間(旧規格の用語「公差域」)は、上の許容サイズと下の許容サイズとの間にある変動値になります。
公差クラスは、基礎となる許容差を用いて、図示サイズに関連するサイズ許容区間の位置を表します。
規格には、図示サイズに関するサイズ許容区間の位置、及び穴又は軸に対する基礎となる許容差の符号(+又は-)に関する概略図として以下の図が示されています。
- 図1 穴を例として用いた定義
- 図2 すきまばめの定義(図示モデル)
- 図3 しまりばめの定義(図示モデル)
- 図4 中間ばめの定義(図示モデル)
- 図5 穴基準はめ合い方式
- 図6 軸基準はめ合い方式
- 図7 図示サイズに関するサイズ許容区間の配置(基礎となる許容差)の概要図
- 図8 穴の許容差
- 図9 軸の許容差
文章と図を組み合わせて読んでいくと分かりやすいと思います。
基礎となる許容差
基礎となる許容差とは、図示サイズから最も近い許容限界サイズを定義するサイズ差のことで、次のように区別して管理します。
- 穴は、大文字(A、…、ZC)で表す。(表2及び表3参照)
- 軸は、小文字(a、…、zc)で表す。(表4及び表5参照)
基礎となる許容差は、個々の特定の図示サイズに対して定義するものではなく、ある範囲の図示サイズに対して定義するものです。
規格には、以下の表があります。
- 表1 3150mmまでの図示サイズに対する基本サイズ公差等級の数値
- 表2 穴のA~Mに対する基礎となる許容差の数値
- 表3 穴のN~ZCに対する基礎となる許容差の数値
- 表4 軸のa~jに対する基礎となる許容差の数値
- 表5 軸のk~zcに対する基礎となる許容差の数値
表1~表5の補足説明を列挙します。
- マイクロメートル(μm)単位で表す基礎となる許容差は、識別文字と公差付き形体の図示サイズとの関係によって決まります。
- 上又は下の許容差は、基本サイズ公差(IT)と基礎となる許容差とによって決まります。(図8及び図9参照)
公差クラスの指示(表示の規則)
公差クラスは、基礎となるサイズ許容差を特定する、穴用の大文字と軸用の小文字との組合せ、及び基本サイズ公差等級を表す数字によって、例えば、「H7(穴)、h7(軸)」の様に指示します。
サイズ及びサイズ公差は、図示サイズの後に続いて要求された公差クラスの指定、あるいは、+-(プラスマイナス)の許容差によって指示します(詳細は、JIS B 0420-1を参照してください)。
JIS B 0420-1 製品の幾何特性仕様(GPS)-
寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ
公差クラスの決定は、はめあいの要求(すきま、しめしろ)から得ます。
許容差の決定(読み方の規則)
公差付きサイズに対する許容差の決定、例えば、公差クラスから+-公差方式への変換は、次のいずれかの方法によって行うことができます。
- JIS B 0401-1の表1~表5
- JIS B 0401-2の表。(選択された場合にだけ対象とする。)
この規格の表を使用した許容差の決定
公差クラスは、例えば次の様に基礎となる許容差の識別文字と基本サイズ公差等級番号とに分かれます。
穴の公差付きサイズ:90 F7
軸の公差付きサイズ:90 f7
ここで、
90:図示サイズ(mm)
F:穴に対する基礎となる許容差の識別文字
f:軸に対する基礎となる許容差の厳別文字
7:基本サイズ公差等級番号
- 基本サイズ公差等級:
- 基本サイズ公差等級(ITx)は、基本サイズ公差等級番号から得ることができます。
- サイズ公差の大小は、図示サイズ及び基本サイズ公差等級番号によって決まります。
- サイズ許容区間の位置:
- 図示サイズ及び基礎となる許容差の識別文字により、基礎となる許容差(上又は下の許容差)は、穴については表2及び表3(大文字)から、軸については表4及び表5(小文字)から得ることができます。
- 許容差の決定:
- (上又は下の)許容差のいずれか一方は、サイズ許容区間の位置で決定されています。
- もう一方の(上又は下の)許容差は、表1の基本サイズ公差値と図8及び図9に示す式とを用いた計算によって求めることができます。
- Δ値を使用した許容差の決定:
- IT8以下の基本サイズ公差等級に対する基礎となる許容差K、M及びN、並びにIT7以下の公差等級に対する基礎となる許容差P〜ZCを決めるためには、表3の値を使用します。
JIS B 0401-2の表を使用した許容差の決定
公差付きサイズの許容差は、JIS B 0401-2の表から得られます。
クラスの選定
基本的な公差クラスは、図1及び図2に示された穴及び曲に対する等級から選択します。
まずは、枠で囲まれた公差クラスの中から選ぶのがよいとされています。
図1 穴の基本的な公差クラス
出典:「JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」より(アレンジしています。
図2 軸の基本的な公差クラス
出典:「JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」より(アレンジしています。
ISOはめ合い方式
ISOはめあい方式は、サイズ形体の「長さのサイズ公差に関するISOコード方式」に基づいています。
互いにはまり合う部品の公差クラスは、できるだけ上述の「クラスの選定」及び以下の「一般的はめあい」により選択します。
一般的はめあい
組み合わせる形体間のはめあいは、次の様に指示します。
(共通の図示サイズ) (穴に対する公差クラス)/(軸に対する公差クラス)
52 H7/g6
はめあいの決定
はめあいを決めるには、以下の2つの方法がありますが、ここでは、前者について説明します。
- 経験によるもの。
- 互いにはまり合う部品の機能的要求及び生産性を考慮した許容可能なすきま及び/又はしめしろ
はめあいを決定するための実用的な推奨基準
はまり合う部品のサイズ及びそれらの公差には多くの特性があり、はめあいの機能に影響します。
例えば、組み合わされる部品の形状・姿勢・位置の偏差、表面性状、材料の密度、温度、熱処理及び材質などによる影響も考慮する必要があります。
はめあい方式の選択
最初に「穴基準はめあい方式(穴H)」又は「軸基準はめあい方式(軸h)」のどちらを採るか決めます。
この際、部品の機能に関しては技術的な違いがなく、はめあい方式は経済性に基づいて選択するのがよいとされています。
- 穴基準はめあい方式:
- 一般的な使用に対して選択するのがよい。
- 工具(例えば、リーマ)及びゲージの不要な重複を回避することができる。
- 軸基準はめあい方式:
- 経済的な利点が確実にある場合にだけ用いるのがよい。
- 例えば、機械加工のない引抜きの単一軸に、異なるサイズ差をもつ穴のあいた複数の部品を組み付ける必要がある場合など。
実際に軸と穴のサイズを決める時、軸は材料となる丸棒は、入手できる材料の中から選択しますので、軸にするための加工量が少ない方がコスト的に有利になります。
経験によるはめあい方式の決定
はめ合い方式を決めたら、サイズ公差等級及び基礎となるサイズ(サイズ許容区間での配置)は、軸及び穴に対して最も良い条件となる最小及び最大の「すきま」又は「しめしろ」を選択するのがよいとされています。
理論的には多くの組合せ可能な「はめあい」がありますが、通常は少数の組合せだけが必要となります。
図3及び図4は、多くの場合に用いられるはめあいを示しています。
図3 推奨する穴基準はめあい方式でのはめあい状態
出典:「JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」より(アレンジしています。
図4 推奨する軸基準はめあい方式でのはめあい状態
出典:「JIS B 0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」より(アレンジしています。
経済的な理由から、「はめあい」のための最初の選択肢は、図3及び4のできるだけ枠で囲まれた公差クラスの中から選ぶのがよいとされています。
良好な「はめあい」は、穴基準はめあい方式の組合せ(図3)によるか又は特別な用途の軸基準はめあい方式の組合せ(図4)によって得ることができます。
読みにくい文章となってしまいましたが、規格の図表と実際の物(軸と穴)をイメージして規格を読んでいくと、理解しやすいと思います。
また、最後に紹介している企業のWebサイトを参考にして、体験してみるのが「はめあい」を知るのには分かりやすいのかもしれません。
まとめ
「はめあい」のJIS規格JIS B 0401は、以下の2部構成となっています。
JIS B 0401-1:2016第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎
JIS B 0401-2:2016第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表
ここでは、「JIS B0401-1:2016 第1部:サイズ公差、サイズ差及びはめあいの基礎」から「はめあい」と公差について以下の項目で説明しました。
- 「はめあい」の公差を決める考え方:JIS規格
- 【参考】JIS規格の参照先
- JIS B 0401-1の序文から「何がいいたいのか・・・」
- JIS B 0401-1の適用範囲
- 「はめあい」に関するサイズ公差について
- JIS B 0420-1との関係
- 公差クラス
- サイズ公差の大きさ
- サイズ許容区間の配置
- 基礎となる許容差
- 公差クラスの指示(表示の規則)
- 許容差の決定(読み方の規則)
- この規格の表を使用した許容差の決定
- JIS B 0401-2の表を使用した許容差の決定
- クラスの選定
- ISOはめ合い方式
- 一般的はめあい
- はめあいの決定
- はめあいを決定するための実用的な推奨基準
- はめあい方式の選択
- 経験によるはめあい方式の決定
思いのほかボリュームが大きくなってしまいました。