アルミニウム鋳造とは、砂型を作り、作った砂型に溶かしたアルミニウム合金を注ぎ、冷えて固まったら砂型から取り出し砂を落とし、加工して部品の最終形状に仕上げます。
米国空軍のWebサイトに、航空機のアルミニウム部品の砂型鋳造についての記事がありましたので紹介します。
砂型を3Dプリンタで作り、アルミニウム部品を鋳造する事例として説明します。
砂型で作る鋳造
鋳造品は、溶かした金属材料を型に流し込み、製品の形にします。
下図は、砂型を使った鋳造のイメージ図です。
鋳造の工程は、大きく造型(砂型を作る)と鋳込みに分かれます。
- 造型では、製品形状の木型を作り、木型で砂型を作ります。
- 鋳込みでは、砂型に湯(溶けた金属)を流し込み、冷えて固まった後型から取り出します。

鋳造のイメージ
図1 鋳造のイメージ
鋳造品のメリットは、
- 複雑な形状でも、比較的容易に加工できる。
- 上図では上型と下型のみですが、中子(なかご)を入れることで中空の部品を成形できる。
- 形状や大きさにもよりますが、製作コストを下げることができる。
半面、
- 強度を持たせるには鋳物の肉厚を確保するため重量増となる。
- 型から取り出した直後は、湯口(湯の通り道)が残っているため、荒化工と仕上げ加工が必要となる。
- 砂型での量産は、基本的には単品製作と同様となる。(鍛造ほどは均一に作れない。)
といったデメリットもあります。
また、複雑な形や精密な鋳物を作る場合には、砂型ではなく金型を使ったシェル鋳物があります。
溶かして成形する鋳造の詳細や、叩いて成形する鍛造については、以下の記事をご参照ください。

3Dプリンタで砂型を作り、アルミ鋳造部品を作る
ここでは、アルミニウム部品例として、可変翼の戦略爆撃機B-1Bランサーのアルミ鋳造品のハウジングを例にアルミ鋳造部品の砂型鋳造について説明します。

B-1Bランサーはレガシー機であり、長期運用されているということは、部品の供給も難しくなってるということです。
空軍でアルミニウム鋳造部品を内製できることは、不稼働時間を短くする手段の1つとなります。
B-1Bランサーとは
B-1Bランサーは、米国空軍の可変翼を備えた戦略爆撃機です。
可変翼やボルテックス・ジェネレーターなど、技術的な興味のある機体です。

221119-F-PW483-0013 909th ARS delivers fuel to B-1B Lancers A U.S. Air Force B-1B Lancer assigned to the 37th Expeditionary Bomb Squadron flies over the Pacific Ocean, Nov. 19, 2022. Aerial operations contribute to Joint Force lethality and help deter aggression in the Indo-Pacific by demonstrating the U.S. Air Force’s ability to operate anywhere in the world in support of the National Defense Strategy. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Jessi Roth)
図2 B-1Bランサー
出典:PACIFIC AIR FORCES(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1Bランサーとボルテックス・ジェネレーターについては、以下の記事をご参照ください。


3Dプリンタの活用方法
調達の難しくなったアルミニウム鋳造部品を3Dプリンタで製造することは、新しい製造方法になるので、様々な試験などが必要になるハードルの高い選択となります。
砂型を3Dプリンタで作ることは、アルミニウム鋳造することに変わりはないので、製造場所が協力会社から内製に代わるだけなので、調達の難しい部品を内製化することにメリットがあります。
ハウジングの完成品と鋳造品
ここで紹介するアルミニウム鋳造部品は、B-1Bランサーのアビオニクス冷却システム用のベアリングのハウジングです。
下図は、ハウジングの砂型、鋳造品、完成品の写真です。
- 下図の一番奥にあるのは、ハウジング用の砂型です。
- 砂型の手前にあるのは、砂型から取り出した未加工のハウジング
- 下図手前が、完成したハウジングです。

230413-F-HI919-1001 Building the ‘Sandcastle’: 76 CMXG starts sand casting aluminum parts A finished bearing housing for a B-1B Lancer aircraft avionics cooling system, in front of a rough aluminum casting and the mold from which it was created, at Tinker Air Force Base, Oklahoma, April 13, 2023. The bearing housing is an example of an aluminum part that can be created by the 76th Commodities Maintenance Group using its new sand casting capability. (U.S. Air Force photo by Paul Shirk)
図3 ハウジングの完成品、砂型から出した鋳造品、砂型
出典:TINKER AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
上図中央の砂型から取り出した未加工のハウジングは、ハウジング以外の部分は多いのですが、これが鋳物の特長でもあります。
後述する鋳造作業の様に、溶かしたアルミニウム合金(湯)を砂型に流し込んで作るためにこのような形状が必要となります。
3Dプリンタによる砂型製作
下図は、3Dプリンタで製作された砂型の写真です。
- 白いのが砂です。
- 砂に結合剤を混ぜてプリントします。

230413-F-HI919-1004 Building the ‘Sandcastle’: 76 CMXG starts sand casting aluminum parts An example of a sand mold and raw sand sitting inside a 3D sand printer at Tinker Air Force Base, Oklahoma, April 13, 2023. Using 3D-printed molds to cast aluminum aircraft parts gives the 76th Commodities Maintenance Group another avenue for sourcing hard-to-acquire parts. (U.S. Air Force photo by Paul Shirk)
図4 3Dプリンタで製作した砂型
出典:TINKER AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
鋳造作業
下図は、鋳造作業の写真です。
- 溶けて液状になったアルミニウム合金を砂型に流し込んでいます。
- とても熱いので防護服を装着しています。

AC7Aのアルミニウム鋳造品の例では、炉で溶かしたアルミニウム合金(湯)は約700℃で管理されていました。

230601-F-HI919-1002 Building the ‘Sandcastle’: 76 CMXG starts sand casting aluminum parts Ted Fetchik, a 553rd Commodities Maintenance Squadron welder, pours molten aluminum into a mold at Tinker Air Force Base, Oklahoma, June 1, 2023. The 76th Commodities Maintenance Group and the Reverse Engineering and Critical Tooling Lab have recently added the ability to sand cast in aluminum, creating parts weighing up to 120 pounds through its newly launched foundry. (U.S. Air Force photo by Paul Shirk)
図5 鋳造の様子
出典:TINKER AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- Building the ‘Sandcastle’: 76 CMXG starts sand casting aluminum parts
まとめ
アルミニウム鋳造とは、砂型を作り、作った砂型に溶かしたアルミニウム号機を注ぎ、冷えて固まったら砂型から取り出して、砂を落とし成型して部品の最終形状に仕上げます。
米国空軍のWebサイトに、航空機のアルミニウム部品の砂型鋳造についての記事がありました。
ここでは、砂型を3Dプリンタで作り、アルミニウム部品を鋳造する事例として、以下の項目で説明しました。
- 砂型で作る鋳造
- 3Dプリンタで砂型を作り、アルミ鋳造部品を作る
- B-1Bランサーとは
- 3Dプリンタの活用方法
- ハウジングの完成品と鋳造品
- 3Dプリンタによる砂型製作
- 鋳造作業
- 参考リンク