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小型航空機の工学的知識の参考にFAAパイロットハンドブック日本語版

JAXAのモノづくり

米国空軍最大の輸送機C-5Mスーパーギャラクシーについて調べていたところ、米国空軍のWebサイトで下図の写真を見つけました。

C-5Mスーパーギャラクシーの機首についているオレンジ色の突起は、ノーズ・ブーム(nose boom)といわれるもので、速度等を計測する機器が搭載されていることが分かりました。

C-5Mスーパーギャラクシー

C-5 still going strong after 38 years A modernized version of the C-5 Galaxy, known as the C-5M, made its maiden flight at Dobbins Air Reserve Base, Ga., on Monday, June 19. Upgrades to the venerable airlifter include new, more powerful engines; a modern cockpit with a digital, all weather flight control system, a new communications suite and enhanced navigation and safety equipment. (Lockheed Martin photo)

図1 C-5Mスーパーギャラクシー

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

そこで、ノーズ・ブームや航空機の速度計測について調べていくと、国土交通省のWebサイトに「FAA発行のPilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」の和訳(仮訳)にたどり着きました。

この資料によると、速度を直接測定しているのではなく、圧力を計測して速度を計測していることが分かりました。

前置きが長くなりました。

ここでは、航空機の速度計測ではなく、航空機の基本的な構造や操縦について知る参考資料として、最新版ではありませんが国土交通省の日本語に訳されたFAA(アメリカ連邦航空局)発行のパイロットハンドブックを紹介します。

パイロット向けのガイドブックですが、操縦だけでなく航空機の工学的な知識についてもイラストやデータを使って書かれています。

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航空機の関する専門的なことを調べようとすると

ブログ記事を作成していく過程では、私の知識や経験では分からないことやより深く知りたいことも出てきます。

航空機の性能に興味を持ち、飛行機の機能や構造に興味を持ち、詳しく知りたくなると、まずはGoogle先生に聞きますが、正確な情報やより詳しい情報となると専門書しかなく、なかなか手ごろなものがありません。

例えば、航空機は空中を飛びますので、航空機の運動の自由度は次の様になります。

  • 航空機の位置を表す座標系は、6自由度(X、Y、Zの3軸と、X、Y、Z周りの回転の3軸)になります。
  • これが、空戦となれば、相手も同じ6自由度で動きますので、自機と相手機との相対的な関係はさらに複雑な関係式で表されます。

最高速度や機動性は、主翼と補助翼などの航空機としての基本機能に加え、飛行環境(高度や気象)にも影響を受けます。

例えば、航空機の性能を評価するためには、機体の速度などを知る(計測する)必要があります。

航空機の速度を計測するセンサーについてGoogle先生に聞いてみると、

  • ピトー管で航空機の速度を計測できる。

ことが分かり、さらに調べていくと、なぜか、国土交通省のWebサイトに、飛行計器としてピトー管を使った速度計測システムについての説明資料を見つけたのでした。

【FAA発行Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge】

(日本語訳) 第8章 飛行計器

航空:諸外国等の安全情報サイト - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

「(日本語訳) 第8章 飛行計器」のPDFを開いてい見ると、いかにもアメリカ的なイラストでピトー静的飛行計器の説明がありました。

  • 「諸外国等の安全情報サイト」のページにあります。

下図は、「(日本語訳) 第8章 飛行計器」の図8-1を抜粋したものです。

ピトー静的システムと計器

ピトー静的システムと計器

図2 ピトー静的システムと計器

出典:国土交通省のWebサイト「諸外国等の安全情報サイト」の「(日本語訳) 第8章 飛行計器」の「図8-1. ピトー静的システムと計器」より

そして、この日本語訳の資料の原文が、FAAが作成した操縦士向け教材「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」(FAA-H-8083-25B 2016年版)を日本語に仮約したものであることが分かりました。

なお、国土交通省のWebサイトには、この日本語仮訳について、以下の記載がありますので一部抜粋します。

【FAA発行Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge】 FAAが作成した操縦士向け教材「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」を日本語に仮訳しております。 本ハンドブックには、小型航空機操縦士の航空機工学に関する知識をはじめ、操縦士に不可欠な基本的知識の向上に有益と思われる内容が含まれており、日々の安全運航へ役立てていただけるよう日本語にしたものです。

FAA発行の操縦士向け教材の1つパイロットハンドブック

FAAとは、FEDERAL AVIATION ADMINISTRATION、アメリカ連邦航空局のことです。

国土交通省で公開されている【FAA発行Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge】は2016年版ですが、FAAのWebサイトで最新版を確認たところ、FAA-H-8083-25Cとして2023年版が公開されていました。

参考までに、FAAのWebサイトのリンクを貼っておきます。

Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge | Federal Aviation Administration
Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge

このハンドブックは、PDFで522ページあります。「Preface(はじめに)」の抜粋を以下に意訳して、内容を紹介します。

航空機の基本的な構造や飛行原理、航空機が飛ぶことについての基本的な知識などの参考にもなるのではないでしょうか。

  • パイロットに必要不可欠な基礎知識を提供するものである。
  • パイロットとしての訓練が進むにつれて必要となる幅広い知識を紹介している。
  • 民間航空に関連する連邦規則集を除き、パイロットの資格取得に適用される知識分野のほとんどを紹介している。
  • 初心者のパイロットだけでなく、より高度なパイロットを目指すためにも役立つものである。
はかせ
はかせ
イラストのタッチに独特なものを感じますが、仮訳とはいえ日本語化されているので、基本的なことを知るための助けになると思います。

パイロットハンドブックの構成

パイロットハンドブックの構成と主な内容(ほんのさわりだけですが)を紹介します。

なお、FAA発行なので米国のパイロットが前提となっています。

航空機の技術的な説明については、イラストや写真を見ているだけでも、なかなか面白そうです。

第1章 飛行への導入

  • フライトに関する歴史
  • FAAの役割
  • どうやってパイロットになっていくか

第2章 Aeronautical Decision Making

  • パイロットの意思決定(Aeronautical Decision Making)

第3章 航空機の構造

  • 航空機の基本的な構造について、セスナ機を使い航空機に働く力(揚力)や構造的な主要構成要素(主翼など)

第4章 飛行の原理

  • 飛行注意航空に作用する力(物理的法則)や大気の構造(気象)
  • 翼の設計

第5章 飛行の航空力学

  • 航空機に作用する、推力、抗力、揚力、及び、重力がどのように機体に作用するのかから、飛行制御
  • 主翼の乱流による影響や離着陸時に注意する乱流の影響
  • 航空機の軸や設計特性
  • 旋回などによる力
  • 失速や荷重
  • 協会葬や層流
  • 衝撃波や後退角

第6章 操縦装置

  • 主翼や補助翼の操作系

第7章 航空機システム

  • レシプロエンジン、ターボとスーパーチャージャー
  • タービンエンジン
  • 燃料・電気システム
  • キャビンの加圧や酸素システム
  • 防氷、除氷システム

第8章 飛行計器

  • 速度計や高度計などの計器の仕組みや構造、動作原理
  • 高度(圧力)と温度による影響
  • 電子フライトディスプレイ(グラスコクピットとよばれるもの)
  • ジャイロ

第9章 フライトマニュアルとその他の資料

第10章 重量と重心位置

  • 航空機に対する重量の影響、バランス、安定性、重心

第11章 航空機の性能

  • 航空機の重量、大気条件、航空機に作用する力など航空機の性能
  • 航空機の運用データ(離陸、上昇、航続距離など)

第12章 気象理論

  • 温度、湿度、風速、視界、気圧などの基本的な気象理論
  • 大気循環、ウィンドシア(非常に小さな領域での風速や風向の突然の急激な変化)
  • 天気図、気圧、前線、雲(乱雲など)

第13章 航空気象サービス

第14章 空港の運用

第15章 空域

第16章 ナビゲーション

第17章 航空医学的要因

  • いわゆるパイロット適性の医学的なこと
はかせ
はかせ

パイロット適性の試験を受けたことがありますが、さっぱりでした。

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まとめ

米国空軍最大の輸送機C-5Mスーパーギャラクシーについて調べていたところ、米国空軍のWebサイトで見つけたC-5Mスーパーギャラクシーのノーズ・ブーム(nose boom)や速度計測について調べていくと、国土交通省のWebサイトに「FAA発行のPilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」の和訳(仮訳)にたどり着きました。

このハンドブックは、パイロット向けのガイドブックですが、操縦だけでなく航空機の工学的な知識についてもイラストやデータを使って書かれています。

ここでは、航空機の速度計測ではなく、航空機の基本的な構造や操縦について知る参考資料として、最新版ではありませんが国土交通省の日本語に訳されたFAA(アメリカ連邦航空局)発行のパイロットハンドブックについて、以下の項目で説明しました。

  • 航空機の関する専門的なことを調べようとすると
  • FAA発行の操縦士向け教材の1つパイロットハンドブック
    • パイロットハンドブックの構成
      • 第1章 飛行への導入
      • 第2章 Aeronautical Decision Making
      • 第3章 航空機の構造
      • 第4章 飛行の原理
      • 第5章 飛行の航空力学
      • 第6章 操縦装置
      • 第7章 航空機システム
      • 第8章 飛行計器
      • 第9章 フライトマニュアルとその他の資料
      • 第10章 重量と重心位置
      • 第11章 航空機の性能
      • 第12章 気象理論
      • 第13章 航空気象サービス
      • 第14章 空港の運用
      • 第15章 空域
      • 第16章 ナビゲーション
      • 第17章 航空医学的要因
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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