ここでは、「振動計測(ハンマリング試験)」に必要な基礎的な知識として、振動問題と対策、FFTアナライザについて説明します。
ハンマリング試験について計測から簡易的な振動モード形の作成までを以下のページにまとめました。(2019.6.24)
振動問題は音から見つかる
機械や家電製品などの騒音や振動問題は、まずは、「うるさい(騒音)」、「変な音がする(異音)」といった音の問題として始まることが多いと思います。
次に、騒音や異音がどこから聞こえてくるか、どうして騒音や異音が発生するのかとその原因を調べていきます。
振動・騒音問題の対策
騒音や異音の原因が分かれば、対策しようとなります。
原因が分からなければ、原因になっていそうな現象や部分(部品)に対し対策をして試行錯誤で原因を絞り込んでいきます。
なお、「問題となっている音や振動」の原因を調査に先立ち、例えば騒音だと思っている人と原因調査や対策をする人とが認識する騒音とが同じものであることを確認することが、実際の対策ではポイントだったりします。
具体的には、どこから「問題の音が出ているのか」、「どの部品が振動しているのか」を探っていくことになります。
「この部分(部品)を手で押さえると、問題の音が小さくなる」といった感じで、問題の箇所、あるいは部品を絞り込める場合もあります。
音は、ある部品の振動によって発生していることもあり、この場合、音に関する指摘から始まるトラブルシュートも、最終的には振動対策を施すことになります。
振動の計測とFFTアナライザ
製品等の各部位(部品)から発生する振動が周波数の何Hzなのかは、製品あるいは部品の構造(形状)や材料により決まります。
FFTアナライザによる周波数分析データを利用すれば、対象物のどこから音が出ていて、どの部位が何Hzで振動しているのかを調べることができます。
後ほど紹介するバットの振動解析では、FFTアナライザを使い伝達関数を計測し、実験モード解析を利用してバットの共振周波数(固有振動数)における振動モード形を作成することにより、どんな風に振動しているのかを可視化して、考察を進めています。
従来からの振動分析による設備管理・異常診断に加え、OA機器や家電製品などでは、静音性の評価や騒音原因及びその対策方法を検討するための振動や音の分析など様々な分野で周波数分析データが利用されています。
FFTは表計算ソフトでも使えますが、実際の計測ではセンサのアナログ信号からのD/A(デジタル/アナログ)変換やDFT(離散時間フーリエ変換)などの信号処理技術が使われています。
FFTはブラックボックスでもよいと考えていますが、リアルな実験の世界で現象を追うといろいろおもしろいこともあります。
FFTアナライザを使う際のポイント
FFTアナライザを使う上でのポイントを紹介します。
- 対象物の振動を精度よく検出できる検出器(センサ)の選定
- FFTアナライザを正しく設定すること
- センサで検出した音や振動(センサの出力電圧)を正確にA/D(アナログ/デジタル)変換し必要な信号処理を行い、正確な振動計測データを得ること
機械の共振周波数の精密計測や周波数差の少ない複合騒音の分析などもできるFFTアナライザですが、FFT解析が有限長の時系列信号データのデジタル演算となるため、正確な計測のためにはノウハウが存在します。
なお、正しい計測のためのノウハウは、今後も重要ではありますが、FFTアナライザの内部処理については、ブラックボックスとして扱ってもよいと考えています。
FFTアナライザは何をしているのか(内部処理)
ここでは、FFTアナライザについてのキーワードを紹介するにとどめます。
- サンプリング(標本化)とA/D変換
- サンプリング定理
- エリアシングを防ぐためのフィルタ(アンチエリアシングフィルタ)
- トリガ(ハンマリング試験では必須です。)
- 校正(キャリブレーション)
まとめ
ここでは、ハンマリング試験に必要な基礎的な知識として、振動・騒音とFFTアナライザについて、以下の内容について説明しました。
- 振動問題は音から見つかる
- 振動・騒音問題の対策
- 振動の計測とFFTアナライザ
- FFTアナライザを使う際のポイント
- FFTアナライザは何をしているのか(内部処理)