引張試験は金属材料の強度を評価するためによく使われる強度試験の1つです。
例えば、次のような場合があります。
- 製品ロットの材料の強度に変化はないか確認する。
- 不具合ロットの材料の試験結果を確認する。
- 形状や目的にもよりますが、製品そのものの強度試験をする。
さて、金属材料の強度試験の最初の記事は、アルミニウム合金鋳物(AC7A)の引張試験です。
ここでは、引張試験の概要とJISの標準試験片によるAC7Aの引張試験について説明します。
引張試験とは
現在の引張試験には、引張試験専用機ではなく、万能試験機やアムスラーと呼ばれる引張や圧縮試験もできる試験機が使われています。
試験機の大きさは試験荷重により様々ですが、縦型と横型に大きく分かれます。
なお、試験機の詳細については説明しませんので、試験機メーカーのWebサイトなどでご確認ください。
下図は、縦型の引張試験機のイメージ図です。
- 下図の青い試験片を試験機のチャックで固定し、試験機では試験片に引張荷重を与えます。
- 右側のメーターは、試験荷重値を示しています。
図1 引張試験のイメージ
下図は、試験片を固定するチャックの例です。
- 下図は、くさび形のチャックです。引っ張るほど強く把持する仕組みとなっています。
- 試験片や試験条件にもよりますが、試験片の片側はチャックを使わず固定する場合もあります。
図2 試験片固定用チャック(つかみ具)の例
引張試験で分かること
引張試験をすることで、金属材料の機械的な強さが分かります。
具体的には、引張力に対する以下の特性(性質)が分かります。
- 降伏点
- 引張耐力
- 応力とひずみの関係
- 伸びやひずみ
- 破断や降伏の状態
引張試験は、試験片に引張力を与え、破断に至るまでのひずみを加えることで、材料の機械的性質を明らかにします。
例えば、図1の例では、引張試験機により試験片に引張荷重をかけていきます。
試験片については、以下のJIS規格に定められています。
- JISZ2241:2022(ISO6892-1:2019) 金属材料引張試験方法(Metallic materials — Tensile testing – Method of test at room temperature)
- 「JISZ2241:2022/AMENDMENT 1:2023 金属材料引張試験方法(追補1)」が出ています。
引張試験、応力やひずみについては、以下の記事を参照してください。
アルミニウム鋳物(AC7A)の引張試験
アルミニウム鋳物(AC7A)の引張試験結果の一例を紹介します。
下図は、試験後の試験片(鋳造した4号試験片)の写真です。
- 破断した試験片を突き合わせています。
- 試験片の両側の溝は、チャックによるものです。
- 試験片のほぼ中央が破断しているので、試験片を引張方向にセットできていることが分かります。
下図は水平方向にきれいに破断した例ですが、斜め方向になったり、良く伸びた結果破断面がギザギザになったりもします。
図3-1 引張試験により破断した試験片
下図は、試験後の試験片(鋳造した4号試験片)の断面の写真です。
- 断面直径は約15mm弱なので、かなり拡大した画像(写真)となっています。
図3-2 引張試験により破断した試験片の断面
引張試験結果は、以下のデータをまとめます。
- 試験片の直径から断面積を求め、破断荷重(N)と強さ(N/m2)を求めます。
- 荷重前後の標点距離(50mm)に対し、全伸び(mm)と伸び率(%)を求めます。
- 金属のミルシートに相当するのは、アルミニウム鋳物のインゴットの成分分析結果を使います。
まとめ
引張試験は金属材料の強度を評価するためによく使われる強度試験の1つです。
例えば、次のような場合があります。
- 製品ロットの材料の強度に変化はないか確認する。
- 不具合ロットの材料の試験結果を確認する。
- 形状や目的にもよりますが、製品そのものの強度試験をする。
ここでは、引張試験の概要とJISの標準試験片によるアルミニウム合金鋳物(AC7A)の引張試験について、以下の項目で説明しました。
- 引張試験とは
- 引張試験で分かること
- アルミニウム鋳物(AC7A)の引張り試験