A-10サンダーボルトは、地上部隊を支援することに特化した近接航空支援専用機(対地攻撃機)です。
F-15イーグルやF-18スーパーホーネットのようなスマートさはないのですが、対地支援機という特殊用途ながら無敵の航空機です。
航空機なのですが、低速、低高度で優れた機動性に優れ、目的に応じた様々な武装を搭載することができ、広い行動範囲を持ち短距離での離着陸が可能です。
AH-64アパッチなどの攻撃ヘリは陸軍機、A-10は空軍機と似たような用途のようにも思えます。主に米国空軍及びボーイング社のWebサイトのA-10の情報からまとめました。
A-10とは(歴史)
A-10とは、下図のような形状の対地支援用の航空機です。
図1 A-10サンダーボルトII
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
形状がよくわからずプラモデルでも手ごろなモノがなかったので、ペーパークラフトで作ってみたものです。全長と翼幅が同程度の独特な形状です。
プラモデルを作りたいと思ってはいるのですが、ガンプラと違い色分けされているわけではなく、デカール(水転写シール)は苦手なので買う決心がつかず今となっています。
図2 A-10サンダーボルトのペーパークラフト
初号機A-10Aが米空軍に納入されたのが1975年、1976年から配備開始、その後アップグレードがなされ、主翼交換プログラムにより2030年まで納入予定です。
A-10の米空軍納入からその後のアップグレードについて以下に示します。
1975年:A-10A初飛行
A-10Aが米空軍に納入、初飛行。
1978年:レーザー受信ポッド(Pave Penney)
レーザー受信ポットは、その後、より高機能なターゲティングポット(目標補足用のポッド)に変更された。
1980年:慣性航法システム
慣性航法システムの導入開始。
その後、以下の提供が始まる。
- 低高度での安全・照準システムの拡張(LASTE:Low-Altitude Safety and Targeting Enhancement)
- コンピュータ化された照準システム
- オートパイロット
- 地上衝突警告システム
1999年:GPSと新型多機能表示装置
- GPSナビゲーションシステム(Global Positioning System navigation system)
- 多機能表示装置
2005年:新型の電子装置、A-10C
A-10全機に対し以下の大規模な近代化改修が始まる。
- 改良された射撃管制システム(FCS)
- 電子対策(ECM)
- アップグレードされたコックピットディスプレイ
- スマート爆弾など最新の誘導兵器対応
- 移動マップディスプレイ
- データリンクなどの情報システムのアップグレード
2007年:初期作戦能力を備える
初期作戦能力(実戦配備に必要な最低限の能力を備えている状態)になる。
A-10サンダーボルトII(最新型)
最新のA-10サンダーボルトIIは、地上部隊の近接航空支援を行うため、低高度で低速域での機動性に優れる一言で言うととても頑丈な航空機です。
図3 A-10サンダーボルトII
Misawa air show highlights 50 years of Japan-U.S. cooperation
日米協力50周年を記念の三沢基地航空祭
An A-10 Thunderbolt II performs an aerial demonstration during Misawa Air Festival 2010 Sept. 19, at Misawa Air Base, Japan. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Chad Strohmeyer/Released)
2010年9月19日に、日本の三沢基地で行われた三沢基地航空祭でデモ飛行を行うA-10サンダーボルトII
(U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Chad Strohmeyer/Released)
出典:MISAWA AIR BASEのHOME > NEWS > PHOTOSからの画像です。トリミングしています。
頑丈さ(帰還率が高いこと)を示す特長を列挙します。
- コクピットと操縦系はチタン装甲による保護
- 主要構造部位の冗長性を持ち、徹甲弾や最大23mmの高爆発性の発射物からの直撃に耐える。
- 二重かされた油圧系の飛行制御システムが壊れても予備の手動(機械系)システムによる飛行・着陸が可能
整備性についても次の様な特長があります。
- 限られた施設でのメンテナンスができる。
- エンジン、主脚、垂直尾翼など、左右交換可能です。
その他の特長を以下に列挙します。
- 地上部隊の近接航空支援
- 暗視装置による夜間や全天候での運用
- 全地球測位システムと慣性航法システム
- 空対空および空対地の脅威に対する赤外線および電子的対策
- アビオニクス機器(飛行に必要な電子機器)にはマルチバンド通信を含む。
- パイロットに広い視野をもたらすバブル型のキャノピー
- 飛行と武器の配達情報を表示するヘッドアップディスプレイ
また、A-10は、別名Warthog、イボイノシシと呼ばれています。
A-10サンダーボルトIIの諸元
主な仕様を以下に列挙します。
- エンジン:General Electric TF34-GE-100ターボファン 2基
- エンジン推力:9,065ポンド x2基
- 翼幅:17.42 m
- 全長:16.16 m
- 全高:4.42 m
- 重量:13,154 kg
- 最大離陸重量:22,950 kg
- 燃料容量:4,990 kg
- ペイロード:7,257 kg
- 速度:676 km/h
- 行動半径:1287 km
- 上昇限度:13,636 m
- 武装
- 30 mm GAU-8 / A7バレルガトリングガン1基
- 8つの翼下と3つの胴体下部のパイロンステーションでの最大7,200 kg
- 500ポンド(225 kg)のMk-82と2,000ポンド(900 kg)のMk-84シリーズを含む。
- 焼夷クラスター爆弾
- 複合効果爆弾
- 地雷散布弾
- AGM-65マーベリックミサイル
- レーザー誘導爆弾/電子光学誘導爆弾
- 2.75インチ(6.99 cm)のロケット弾
- AIM-9サイドワインダーミサイル
- 赤外線対策フレア
- 電子対策チャフ
- ジャマーポッド
- 照明フレア
- 乗員:1名
A-10の詳細や仕様は、いまだ現役で使われているためか確定的な情報がみつからなかったので、Webで公開されている情報をもとにまとめています。
近代化と翼交換プロジェクト
A-10の近代化のうち、翼交換プログラムについて説明します。
交換される翼は、従来より耐久性が高く、メンテナンス性にも優れるものです。
翼交換プログラムの契約は、ボーイング社です。
- ボーイング社の強みには、確立された供給基盤、A-10構造の経験、米空軍に関するノウハウが上げられます。
契約内容は、供給と数慮位制限のない(IDIQ: Indefinite Delivery/Indefinite Quantity)で、2030年度まで契約額は最大999M$です。
- ボーイング社は、最大112の翼セットとスペアキットの生産管理契約を結んでおり、米空軍は44組の翼セットを注文しました。
写真で見るA-10サンダーボルトII
米国空軍のWebサイトにあるA-10サンダーボルトIIの写真を紹介します。
編隊飛行(2機)
訓練中のA-10サンダーボルトIIです。
図4 A-10サンダーボルトII:2機編隊
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下面(武装あり)
こちらも訓練中の写真です。以下のことが見て取れます。
- 主翼下に取り付けられた武装
- 機首のバルカン砲
- 胴体後方に設置されたジェットエンジンが斜め後方に取り付けられている。
- 独特の尾翼形状
A-10サンダーボルトIIから攻撃される地上の戦車部隊等にとっては、おそろしい敵に見えるのではないでしょうか。
図5 A-10サンダーボルトII:下面
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油(夜間)
下図は、KC-135ストラトタンカーから夜間に空中給油を受けるA-10サンダーボルトIIです。
図6 A-10サンダーボルトII:空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
ホットピット(給油)
下図は、ホットピット(エンジン稼働状態での補給)中のA-10サンダーボルトIIです。
図7 A-10サンダーボルトII:ホットピット
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
飛行前点検(主脚周り)
A-10サンダーボルトIIの飛行前点検の写真です。
主脚の点検をしているわけではないようですが、次のことが分かります。
- 主翼より上に設置された2基のジェットエンジン
- 正面から見て左側にオフセットされた主脚(戦闘機に比べて長く頑丈そうに見えます)
- 主翼の下面がフラットになっていること。(ミサイルなどの搭載が容易そうです。)
図8 A-10サンダーボルトII:飛行前点検(主脚周り)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
実は、A-10サンダーボルトII、F-22同様米国専用で、海外に販売されていないようです。
それだけ重要な装備である。言い方を変えれば米国でさえ敵が持っていたらかなり嫌な相手となるということかと思います。
まとめ
A-10サンダーボルトは、地上部隊を支援することに特化した近接航空支援専用機(対地攻撃機)です。
AH-64アパッチなどの戦闘ヘリよりも構造的(メカ的)に頑丈なのでライフライクルが長いように思います。
ここでは、以下の項目で説明しました。
- A-10とは(歴史)
- 1975年:A-10A初飛行
- 1978年:レーザー受信ポッド(Pave Penney)
- 1980年:慣性航法システム
- 1999年:GPSと新型多機能表示装置
- 2005年:新型の電子装置、A-10C
- 2007年:初期作戦能力を備える
- A-10サンダーボルトII(最新型)
- A-10サンダーボルトIIの諸元
- 近代化と翼交換プロジェクト
- 写真で見るA-10サンダーボルトII
- 編隊飛行(2機)
- 下面(武装あり)
- 空中給油(夜間)
- ホットピット(給油)
- 飛行前点検(主脚周り)