ここまで「はじめての設計」をテーマに、幾何公差まで説明してきました。
3D CADを使い3Dモデルによる設計をすると、板金部品の設計をする際に材料だけでなく、厚さや形状などをCAEより事前検討(シミュレーション)することができます。
設計の際には、「応力が集中することで部品が壊れないように、応力が集中しないように設計する」ことが重要です。
ここでは、FreeCADでL字金具の応力解析例を使い、設計で応力を集中させない理由について説明します。
応力が集中するとはどういうことか
ここでは、下図に示すL字金具を例に応力の集中について説明します。
設計では、応力が集中しないように設計しますが、これは応力が集中するとその部分に亀裂(ヒビや割れ)が生じ、やがて破壊する場合があるからです。
図1 L字金具のイメージ
L字金具を設計する際には、棚に載せる物の重さから、何kgまで耐えられる(壊れない)かを決め、L字金具の大きさ、板厚などを検討していきます。
ここでは、下図の大きさ(寸法)のL字金具とします。
図2 L字金具の大きさ
L字金具に取り付け用の穴の大きさと位置を決めたイメージ図が、下図の左側です。
この時、下図右側の様に角部に応力が集中しないようにRをつけます。
図3 L字金具の形状イメージ
実際のL字金具では、加工により角部を直角にならないのですが、上図の様な角部分は応力が集中する代表的な例です。
L字金具の角部分は、断面形状が急変する部分でもあります。
なお、L字金具の角部を考慮せずCAEを使い応力解析をすると、当然ながら角部に応力が集中します。
一方、実際に作られるL字金具の角部は通常の加工方法では直角(90度)にならないため、実物と解析とで応力の集中する部分が違ってくるということです。
L字金具の角部の応力集中
CAEによる解析例を使って、L字金具の応力集中について説明します。
下図の左側がL字金具の形状モデル、右側がメッシュを切った解析モデルです。
図4 L字金具の解析モデル
下図は、応力解析結果の1例です。
ここでは、下図の一番下側の丸穴を拘束(固定)、一番左側に下側の荷重を加えています。
図5 L字金具の応力解析の例
応力の集中しやすい形状
L字型の部品を例に、代表的な応力集中の例を列挙します。
下図は、L字部品の角部分に応力が集中するイメージです。
図6 応力集中の例:角部
下図は、切り欠きにより応力が集中するイメージです。
図7 応力集中の例:切り欠き
下図は、部品内の空洞により生じる応力集中のイメージです。金属材料ではなく、樹脂材料などで成型時に生じる場合があります。
設計上意図的に部品内に空間を設ける場合は、空洞とは言わず肉抜きといいます。(業界や物、材料などにより呼び方に違いがあります。)
図8 応力集中の例:空洞
下図は、断面形状が急激に変化する(断面形状急変)のイメージです。
応力集中を断面形状の急変から判断できます。3D CAD3D CADを使うと断面を簡単に見ることができます。
図9 応力集中の例:断面形状が急変する部分
まとめ
3D CADを使い3Dモデルによる設計をすると、板金部品の設計をする際に材料だけでなく、厚さや形状などをCAEより事前検討(シミュレーション)することができます。
設計の際には、「応力が集中することで部品が壊れないように、応力が集中しないように設計する」ことが重要です。
ここでは、FreeCADでL字金具の応力解析例を使い、設計で応力を集中させない理由について以下の項目で説明しました。
- 応力が集中するとはどういうことか
- L字金具の角部の応力集中
- 応力の集中しやすい形状