計者に限りませんが、ベテランも最初は初心者です。言葉一つとっても知らないことばかりで当たり前です。なのに、学び始めた時に苦労するのは今も変わらないようです。
設計・開発の現場では、応力が集中している部分を調べたり、使用条件で壊れないようにするために、実験やCAEによるシミュレーションを行い、その結果を評価して設計にフィードバックすることを繰り返します。
この時、知識やノウハウも重要なのですが、設計変更や振動対策などの話をする際に、なかなか話がかみ合わず、もどかしい思いをしたり、話が進まず次の段階に進めずに困ることがありました。
例えば「断面の形から設計Aと設計Bとでは、強度的にはAが強いよね」と言っても伝わらないといったことです。この理由は、抽象的になってしまうのですが、力学的なセンス(感覚)の違いによるのではないかと考えています。
ここでは、梁を例に力と変形のイメージについて説明します。
梁に荷重(力)をかけてみる
下図に示す、断面が長方形の梁を考えます。
- 梁は、左右の台(下図の灰色の部分)に置いています。(単純支持)
- 梁の中央部に重りを載せて荷重を加えます。(重力が下向きにかかる)
なお、梁には変形を説明するために格子状に線を引いています。
図1 梁に力をかけたイメージ
梁に加わる力(重力)について考える
下図の様に、梁の中央部分に重りを載せて、荷重(重力)をかけると、梁は下方向に変形して、静止します。
静止しているということは、梁に加えた下方向の荷重(重力)が、何らかの力とバランスを保っていることになります。
- 力を加えて静止しているということは、力のバランスが保たれているということです。
図2 梁に荷重を加えて変形するイメージ
荷重と変形について考えていきます。
荷重を加えると、上図の様に梁が曲がります。
梁が曲がるということは、
- 梁の上部は、圧縮される。
- 梁の下部は、伸びる。
ということです。
なお、上図では、隣り合う青色と赤色の部分の重なりで、
- 梁の上部は、青色と赤色の部分が重なり、圧縮されるイメージ
- 梁の下部は、青色と赤色の部分が離れ、伸びるイメージ
を表しています。
梁に加わる力と曲げモーメント
梁の中央に荷重をかけると、梁の上部には圧縮力、下部には引張り力が働いています。
さらにもう1つ曲げモーメントが働いています。
ここで、モーメントとは、力を加えることで力を加えられた対象物が回転しようとする力と考えてください。
下図は、梁に荷重をかけた場合の圧縮力、引張り力と曲げモーメントのイメージを示しています。
図3 梁に荷重をかけた場合の圧縮力、引張り力と曲げモーメントのイメージ
ここで、上図の力の向きを考えると、次の様になります。
- 加えている荷重は、上から下方向の力です。
- 梁に働いている圧縮力と引張り力とは、水平方向で互いに逆方向の力です。
つまり、下方向の荷重が梁により水平方向の力に変換されて、力のバランスが保たれていることになります。
「上下方向の力が水平方向の力に変換される」とは不思議です。
数式で説明することもできますが、ここでは、曲げモーメントが変換する役割を果たしていると考えます。
ここで、曲げモーメントが出てきます。
梁の上部と下部にかかっている、圧縮力と引張り力の2つの力により発生しているのが、曲げモーメントです。
つまり、梁にかかる荷重を、曲げモーメントにより支えているということになります。
ここで、この梁にかかる荷重が曲げモーメントで支えられている理由を力学的に説明しようとすると、どうしても数式が登場してしまい少々面倒な話になってしまいますので、別途説明したと考えています。
ここでは、梁に荷重がかかった時、梁には圧縮力と引張り力と曲げモーメントが発生しており、力が吊り合っていることをイメージできれば、ここでは「よし」ということにします。
まとめ
設計者に限りませんが、ベテランも最初は初心者です。言葉一つとっても知らないことばかりで当たり前です。
なのですが、学び始めた時に苦労するのは今も変わらないようです。
ここでは、以下の項目で、梁に荷重を加えた時に発生する、圧縮力、引張り力と曲げモーメントについて説明しました。
- 梁に荷重(力)をかけてみる
- 梁に加わる力(重力)について考える
- 梁に加わる力と曲げモーメント