一般に金属材料や鉄といっても様々な種類があります。
代表的な鉄鋼材料として、S45C、SS400とSPCCがあります。これらの鋼材を購入する場合には、種類に加え、黒皮(くろかわ)材かミガキ材かを指定します。これは鋼材の製造方法と入手した材料の加工方法とも関係します。
黒皮かミガキかの指定を忘れると、ミガキ材を使う予定だったのに、黒皮材が届き、そのまま加工に使えないため、余分なブラストや研磨、研削などが必要となりコスト増となってしまうことがあります。
また、黒皮材とミガキ材の両方ある鋼材を選ぶ場合には、用途や加工法、コストなどを考慮して選択します。鋼材によっては黒皮材しかないもの、ミガキ材しかないものもあります。
ここでは、黒皮材とミガキ材について説明します。
黒皮(くろかわ)材
黒皮材とは、鋼材の表面に黒色の酸化鉄(黒錆)を残した状態のままの鋼材のことです。
鋼材の黒皮には、赤錆と違い鋼材の表面を腐食から守る働きもありますが、ピンホールのような小さな穴があるため条件により腐食が進む場合もあります。
鉄鋼材料には、「熱間圧延」と「冷間圧延」の鋼材があります。
熱間加工によってつくられた鋼材は、基本的に黒皮と呼ばれる黒錆で表面が覆われています。
熱間圧延の鋼材は、鋼板などを製造する際に、高温で鉄を加工します。
熱間圧延のメリットや用途は、次の通りです。
- 残留応力が残りにくい。
- 鉄がやわらかい状態で加工する為、加工性がよい。
- 熱間圧延したままの鋼板や鋼材なので、価格は安くなります。
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建材など、他の鋼材と溶接させる必要がない場合や、塗装の必要がない場合などにはそのまま使われることもありますが、基本的にはブラスト処理などで黒皮を剥がして使います。
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用途によりますが、コストが安く、黒皮は通常の環境下では防錆の効果も多少あるため、表面処理なしで使われることもあります。
デメリットや用途は、
- 鋼材の表面が酸化して黒く凹凸がある。
- ボロボロと表面がはがれてくることもある。
- 錆から防ぐ酸化膜があるといっても黒錆と鋼材との密着度は高くないため、防錆目的でこのまま使われることはありません。防錆目的の場合、ブラストなどで黒皮を落としたうえで塗装やめっきすることが一般的です。
- 寸法精度が必要な用途や、見た目が重要視されるような用途には不向きです。
- 薄い加工にも向いていません。
ミガキ材
ミガキ材は冷間圧延加工された鋼材のことです。
ミガキ材は、その名の通り、磨かれたかのようなきれいな表面をしており、精度もある程度出ています。
冷間加工のミガキ材の特徴は、
- 熱間圧延加工されて作られた鋼板や棒材を、冷間圧延加工によって再度加工していくため、表面に黒皮(黒錆)がない。
- 引き抜き加工されたものが多い。
ミガキ材の用途は、
- ミガキ棒鋼などの規格品については、研磨品や切削品もありますが、コスト高となるため少数です。
- ミガキの板材は、通常、研磨処理はなされていません。
- S45CやSS400には、ミガキ材と、黒皮材の別があります。
- SPCCは、冷間圧延鋼板の規格材であるため、基本、ミガキ材しかありません。
- ミガキ材のコストは黒皮材よりも高くはなりますが、黒皮材を使えるように加工するコストや時間を考慮すると必ずしもミガキ材のほうが割高というわけでもありません。
黒皮材とミガキ材の違い
黒皮材とミガキ材の違いを下表に示します。
用途とQCDに合わせて選択します。
ミガキ材 | 黒皮材 | |
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加工方法 |
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鋼材表面の状態 |
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適した用途 |
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コスト |
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流通 |
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まとめ
一般に金属材料や鉄といっても様々な種類がありますが、代表的な鉄鋼材料にS45C、SS400とSPCCがあります。
これらの鋼材を購入する場合には、種類に加え、黒皮(くろかわ)材かミガキ材かを指定します。この指定を忘れると、予定外の加工が必要になったりコスト高となったりします。
ここでは、黒皮材とミガキ材について以下の項目で説明しました。
- 黒皮(くろかわ)材
- ミガキ材
- 黒皮材とミガキ材の違い