鉄製のボルトが折れる(破断する)ケースを目にする機会はあまりないかもしれません。
そもそも、鉄製のボルトはそうそう折れるものではありませんが、次のような場合には折れてしまいます。
- 短い時間(一瞬)で大きな力が加わり折れる(剪断力による破断)
- 力の大きさは小さいけれど長時間(長期)繰り返し力が加わることで、小さな亀裂が入り拡大、やがて限界を迎えて破断する。
ここでは、後者のボルトに繰り返し力が加わることでやがて破断する疲労破壊について説明します。
ボルトが破断に至る理由
ボルトが疲労破壊に至るまでについて説明します。
- 何らかの理由でボルトのある部分(同じ場所)に小さい力(荷重)がかかる。
- 小さな力が繰り返し同じ部分に加わることで小さな亀裂が発生する。
- さらに、小さな力が繰り返されることで、小さな亀裂が大きくなっていく。
- 亀裂によりボルトが破断する。
最初にボルトに小さな亀裂が入るのは、
- 何らかの小さな荷重が繰り返し同じ場所に加わることで、ボルトにダメージ(金属疲労)を与える。
からです。
さらに、荷重が繰り返されると、
- ボルトの表面に小さな亀裂が、少しづつ大きくなる。
状態が続きます。
こうして、ボルトが荷重に耐えられなくなると、破断します。
応力やひずみについては、以下の記事をご参照ください。
繰り返し荷重を受けて破断したボルトの断面観察
下図は、破断したボルトの写真です。
- 下図左側のボルトの突起状の部分が、最終的に破断した部分です。
図1 破断したボルト
下図は、破断したボルトの断面です。
- 下図の上側が最終的に破断した部分です。
- 分かりにくいのですが、破断面に上側に凸の円弧上の線があります。これは、ビーチマークと呼ばれるものです。
- 下図のビーチマークの向きから、下図の下方向から上方向に向かって繰り返し応力による亀裂が生じていると判断できます。
図2 破断したボルトの断面
下図は、繰り返し荷重によりボルトが破断に至るイメージ図です。
- 下図の上側がボルトの破断面、下側がボルトに加わる応力(荷重により応力とひずみが発生する)のイメージです。
- ボルトに加わる応力(青線)は、繰り返し荷重が加わるたびに、応力がかかることを示しています。
- 下図上側は、繰り返し荷重により、亀裂が進行しビーチマークが増えていくことを示しています。
- 下図上側の赤い部分は、最終的に破断した部分になります。
図2 繰り返し荷重によるボルト破断のイメージ
ビーチマークとは
ビーチマークとは、亀裂の進行により生じ、目視(肉眼)で確認できる破断面の模様です。
- ビーチマークは、シェル(貝殻)マークと呼ばれることもあります。
縞模様の様に見えるのは破断面の酸化によるもので、繰り返し応力が加わっている時間と、加わっていない時間により酸化の程度に差ができるため、ビーチマークとよばれる模様となって現れます。
このため、一定の速度で亀裂が進行する場合には、ビーチマークはほとんど確認することができません。
破断面の観察のヒント
破断面の観察をする場合、最終的に写真が必要になります。
最近のカメラは高倍率の写真が簡単に撮れてよいのですが、写真のままでは破断面の様子が分かりにくい場合があります。
その様な場合に、写真を画像系のソフトで反転処理をかけると、亀裂などを確認しやすくなることがあります。
この記事の例では、反転処理により見やすくなったかは微妙なとことですが、参考までに以下に示します。
写真の情報を正確に見るよりも、分かりやすく説明できるようにするための処理と考えています。
写真の画質調整には、「反転処理」の他、「露出」と「明度とコントラスト」を使っています。
図3-1 写真を反転処理:破断したボルト
図3-2 写真を反転処理:破断したボルトの断面
まとめ
鉄製のボルトは簡単に折れるものではありませんが、次のような場合にはあっけなく折れてしまいます。
- 短い時間(一瞬)で大きな力が加わり折れる(剪断力による破断)
- 力の大きさは小さいけれど長時間(長期)繰り返し力が加わることで、小さな亀裂が入り拡大、やがて限界を迎えて破断する。
ここでは、後者のボルトに繰り返し力が加わることでやがて破断する疲労破壊について以下の項目で説明しました。
- ボルトが破断に至る理由
- 繰り返し荷重を受けて破断したボルトの断面観察
- ビーチマークとは
- 破断面の観察のヒント