ここでは、金属バットの振動モード解析(固有値解析)について説明します。
FreeCADを使った固有値解析と有限要素法の基礎的な知識については、以下のページもご参照ください。
金属バットの固有値解析
FreeCADを使った金属バットの振動モード解析(固有値解析)について説明します。
金属バットの形状モデル
解析に用いた金属バットの3D CADモデル(形状モデル)を下図に示します。
図1 金属バットの3次元CADモデル
金属バットの解析条件など
ここでの解析に使用したFreeCADの設定値や考慮事項(前提)は、以下の通りです。
- 材質:AlMg3F24(FreeCADの設置値の1つを利用)
- 境界条件は拘束なしのフリーとしています。
- 金属バットのグリップエンドはゴムですが、バット本体と同様の材質としています。
- 金属バットの中には金属バット特有の「キーン」といった打球音対策とおもわれるスポンジ状のものが詰められていましたが、無視しています。
金属バットのメッシュ分割したモデル
解析モデルはソリッド要素を使いました。ソリッド要素によるメッシュ分割したモデルを下図に示します。
図2 金属バットのFEM解析モデル
メッシュ分割はFreeCADの自動設定を使っています。
一般に、メッシュ分割は基本的に細かいほうが精度はよいのですが、反面要素数が多くなり大規模モデルとなり計算時間がかかるようになります。このため、特に解析したい部分や形状変化の大きい部分を細かくするようにして、メッシュ分割を細かくする際には、全部を一様に細かく分割しない方が計算コスト(計算時間など)を抑えることができます。
FreeCADによる解析結果
FreeCADによる解析結果を下表に示します。
モード次数 | 固有振動数(Hz) | 備考 |
---|---|---|
7次 | 229 | 曲げの1次モード |
8次 | 229 | 曲げの1次モード |
9次 | 728 | 曲げの2次モード |
10次 | 728 | 曲げの2次モード |
11次 | 1425 | 曲げの3次モード |
12次 | 1425 | 曲げの3次モード |
固有値解析特有の現象として、拘束なしのフリーフリー解析を行っているため、モード次数1~6は6自由度に対し対象物全体が動く剛体モードと呼ばれるものが出力されますがこれらは無視します。
また、バットの軸に対して軸対象モデルとなっているため、同じ曲げモードでありながら振れの方向が90°異なるモードがほぼ同じ振動数で出力されます。(上記表での解析例では同じ周波数となっています。)
高次(高い周波数)のモードになるにしたがい、この2つの同じ振動モードの固有振動数の差が大きくなりますが、メッシュ分割の形状の違いや対称性が悪いためと考えることができます。
得られた振動モード形について以下に示します。
下図は、モード7の振動モードの変形をコンター表示したものです。モード7および8の振動モードは、1次曲げです。
図3 固有値解析結果:7次モード
モード9および10の振動モードは、下図のような2次曲げです。
図4 固有値解析結果:9次モード
モード11および12の振動モードは、下図のような3次曲げです。
図5 固有値解析結果:11次モード
解析結果の考察
バットのような軸対象モデルの固有振動数は、メッシュ分割が粗いと形状や分割の対称性が悪くなり同じモードでの振動数のばらつきが大きくなります。ばらつきを改善するためには、計算時間は増大しますがメッシュ分割を細かくします。
また、実験値(実物のバット)と比較した際の相違については、ヤング率や質量密度など材料物性値の違いなども影響していると考えられます。
このように解析においてもモデル化や解析条件に様々な誤差要因が含まれるため、解析結果と実験結果を十分に考察し評価する必要があります。
また、解析結果を実験結果と合わせるために解析条件や物性値などを変更し、整合性を高めることもあります。
CAEによるシミュレーションもこのようなノウハウを蓄積していくことにより、解析技術を確立して次の解析に活かしていくことがポイントとなります。
まとめ
ここでは、振動現象の解析(固有値解析)の流れのうち、金属バットの振動モード解析(固有値解析)について以下の項目を説明しました。
- 金属バットの固有値解析
- 金属バットの形状モデル
- 金属バットの解析条件など
- 金属バットのメッシュ分割したモデル
- FreeCADによる解析結果
- 考察