解析目的に応じたFEMモデル(形状モデル)の簡素化:スマホケース

FEM(有限要素法)でシミュレーションをする場合には、3D CADで作成した設計データ(形状モデル)を使うことが多いのですが、形状モデルは製品の詳細モデルであるため、解析目的(開発の段階)によっては、無駄に詳細な解析モデルとなっていることも少なくありません。

FEMで試作形状の比較を行う場合、FEMモデルのメッシュの細かさだけでなく、形状モデルそのものもPCによる計算時間に影響を与えます。

つまり、何のために解析するか(解析目的)に応じた解析モデルやメッシュの設定が必要になるということです。

ここでは、スマホのケースを例に解析目的によるモデル形状の簡素化について説明します。

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FEMの解析モデルとPCリソース

今どきのPCであれば、FEMの解析モデルが大きくても、それなりの計算時間でシミュレーションを行い、解析結果の3D表示もできてしまいますが、次の様な問題を避けるためにも、PCのリソース(メモリやストレージ容量、3D表示などのグラフィック処理)の無駄遣いは避けたいところです。

PCのリソースに頼った解析は、シミュレーション準備について考える時間は短くなるかもしれませんが、結果的に解析目的を達成するためにも、解析結果やデータの管理にも悪い影響しかないと考えています。

例えば、

  • FEMのメッシュが細かいと、解析時間がかかり、解析結果の画像表示も重くなり、データ容量が増えます。
  • 対象製品全体の応力分布をみたいのに、全体から見ると一部の部品の解析モデルの精度が高いとモデル全体のメッシュが無駄に細かく、PCリソースの無駄遣いになります。

つまり、解析目的に応じた解析モデルが必要になります。

FEMのオートメッシュは非常に便利で個人差による影響を小さくできます。しかし、自動でメッシュが切れるからと、解析目的に対してメッシュが細か過ぎていることに気づかないようでもCAEを使う技術者としては力量不足だと考えています。

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スマホケース:材料による比較

ここでは、下図のようなスマホ本体を保護するスマホケース(水色の部分)のシミュレーションについて考えてみます。

スマホケース(水色の部分)

スマホケース(水色の部分)

図1 スマホケース(水色の部分)

解析は、スマホ本体とケースの組み合わせになりますが、スマホ本体は同じ大きさで均一材料とし、スマホケースの材料による比較を行うとします。

この時、スマホケースのモデルをどこまで詳細にするか、具体的には、まずは、上図に左側(スマホ下方)のケーブルやスピーカ等の孔について次の様に考えます。

  • 初期設計では、ケーブル等の孔を無視したスマホケースのモデルで比較する。
  • 形状が決まってきたら、ケーブル孔等を含むスマホケースのモデルで比較する。

落下時にスマホ本体を保護するケースの設計案を比較する場合、解析手順としては次の様になります。

  • 落下時のスマホ本体とスマホケースとの相互関係を調べて、穴やスイッチ等によりスマホケースの形状が一様となっていない部分の影響度合いを調べる。
  • 例えばケーブル孔やスイッチ等の突起部分が、スマホ本体の保護に影響の少ない(無視できる)ことが分かれば、モデル化しない。

スマホケースの構造や材料がほぼ決まったら、

  • これまで無視してきた部分(ケーブル孔等)もモデル化して解析する。

解析目的に応じてスマホケースの解析モデルの詳細度を変えていくということです。

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スマホケース:ストラップによる影響

ストラップを取り付ける(通す)ストラップ孔をスマホケースに設ける場合のシミュレーションについて考えてみます。

ここでは、下図の2個の赤丸印がストラップ孔です。

スマホケース(水色の部分)とストラップ孔

スマホケース(水色の部分)とストラップ孔

図2 スマホケース(水色の部分)とストラップ孔

ストラップ孔の場合は、次のことを決める必要があります。

  • ストラップ孔の大きさ
  • 2つのストラップ孔の間隔を含む
  • ストラップ孔の位置

3点ありますが、ストラップ孔の大きさとストラップ孔の間隔は、使用できるストラップの仕様(ストラップ紐の太さや固さ)により決まると考えられます。

ストラップ孔の位置の考慮事項としては次のことがあります。

  • ストラップ孔の位置(スマホの重量バランスや持ち方を考慮)
  • ストラップを引っ張った場合にスマホケースが壊れ(裂け)ないか

通常の使い方の他、ストラップを強く引っ張った場合など、どの様な使用条件を想定するか、気温などの使用環境も考慮する必要があります。

最終的に実験や試験での確認は必要ですが、シミュレーションであれば、次の様な条件による組み合わせも簡単にできるのは、FEMなどのCAEツールを使った強みです。

  • ストラップ孔に加わる力(大きさ、方向、頻度など)
  • 使用環境による材料強度や劣化(温度、湿度、汗などによる影響など)
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まとめ

FEMで試作形状の比較を行う場合、FEMモデルのメッシュの細かさだけでなく、形状モデルそのものもPCによる計算時間に影響を与えます。

つまり、何のために解析するか(解析目的)に応じた解析モデルやメッシュの設定が必要になるということです。

ここでは、スマホのケースを例に解析目的によるモデル形状の簡素化について以下の項目で説明しました。

  • FEMの解析モデルとPCリソース
  • スマホケース:材料による比較
  • スマホケース:ストラップによる影響
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