これまで特定の業界向けに作っていた製品を利用して、似たような用途で一般向けの製品を作るというアイディア(企画)が通り、実際に試作品を作って検証することになりました。
試作品ではありますが、リアルなモノを作ることに変わりはないので、製作用の図面が必要ですし、試作品の公差を決める必要があります。
しかも、試作による検証の結果しだいで、実際に販売するかどうか決まります。
ここでは、アイディアを企画にまとめ、試作品を作るところまで進んだ設計担当者と、その業界向けの品質管理で様々な経験をしてきた品質管理担当者による、公差についてのできごとについてまとめています。
はじまりは「試作品ができてるので検査してください」
ある日のこと、営業のAさんから、「企業向けのアルミ鋳物製品をベースに作った試作品」の検査依頼がありました。
詳しく話を聞くと、お客様がやりたいことは次の通りです。
- 既存製品の形状や構造を簡素化した製品の試作をしたい。
- 試作品は、既存製品を加工して作る。
- 試作品を検証して実際に販売するかどうか決める。
- 販売することが決まれば、型を新規製作する。
これを聞いて、
- アイディアはOKだから、試作品を使ってニーズや製品仕様などを決める検証段階
まで新製品の企画が進んでいると判断していました。
また、
- 基本的に形状は簡素化される方向で、特に難しい加工でもない。
- 元になる製品同様、検査成績書の作成は必要になるだろう。
と思い、検査は図面通りにできているかを確認するため、図面ができるのを待っていました。
試作品の公差の考え方
ここまで、品質管理担当者が集めた情報によると、
- 製品要求として従来の業界同等品よりはコストダウンを狙った設計(形状)であること
- 検査成績書は必要らしいので、公差についても工夫が必要だろう。
ということが考えられたので、最終的に図面で確認したいと思っていました。
担当営業からは、試作の完成予定時期を聞いていたのですが、いつまでたっても正式な図面が発行されません。
そこで、設計担当者に聞くと、公差がよくわからなくて検図、承認まで進んでいないことが分かりました。
一方で、試作品は納期がありますので、仮図面で発注し試作品の到着待ちとのことでした。
正式図面が発行されずに製造が進んでいるのは別の問題がありますが、ここでは公差の話だけにします。
設計担当に図面を見せてもらうと
物(試作品)ができてくるとのことで、現状の図面を設計担当に確認すると、試作品の公差について次の疑問が浮かんできました。
- 試作品の元となった製品は、アルミ鋳造品なので鋳造品公差?
- 試作品は、加工しているのでアルミ鋳造品を加工した公差?
- 試作品の図面は、お客様の図面(当社の仮図面と同じ)と当社の製作図面があるが、どちらが正(基準となる)?
さらに、試作品の寸法検査結果をみると、
- 試作品10個のうち1個について、加工部分の寸法が鋳造品公差から外れている。
- 加工公差では、今後製品化された場合の公差としては厳しすぎる。
- 試作品とはいえ、検査成績書の公差より緩くなることは考えられない。
といった問題点が明らかになりました。
設計担当者は、金属製品についてはある程度分かるようですが、鋳物でしかも加工もあるとなるとどうしてよいか分からないようです。
鋳造品の設計者はベテラン1名なので、若手を育てるための教育機会にもなっていたようです。
力量不足なのは確かなのですが、力量が不足していてもガイドライン的なものを作って対応することも考えて欲しいところです(心の中のつぶやきです)。
最終的な対応
その後、関係者と調整をして最終的に以下の対応となりましたが、「公差は大切で重要」を再認識するできごとでした。
- 試作品で寸法外れしていたものを手直しして合格品となった。
- 結果的に従来の鋳造品公差で合格となった。
- 試作品は、試作図面で作ったものであり、この公差は試作品のみに適用する。
また、今後製品化が決まった場合には、
- 型の新規製作からはじまるので、公差も改めて検討する。
ということになりました。
まとめ
これまで特定の業界向けに作っていた製品を利用して、似たような用途で一般向けの製品を作るというアイディア(企画)が通り、実際に試作品を作って検証することになりました。
試作品ではありますが、既存製品の一部を加工して作りますが、試作品の公差を決める必要があります。
ここでは、アイディアを企画にまとめ、試作品を作るところまで進んだ設計担当者と、その業界向けの品質管理で様々な経験をしてきた品質管理担当者による、公差についてのできごとについて、以下の項目で説明しました。
- はじまりは「試作品ができてるので検査してください」
- 試作品の公差の考え方
- 設計担当に図面を見せてもらうと
- 最終的な対応