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空母艦載機のカタパルト射出の加速度を高校物理の知識で計算してみる

空母艦載機のカタパルト射出の加速度を高校物理で計算してみる 身近な高校物理

高校生時代、大学は国立理系を目指していて、物理と化学と生物の授業がありました。

  • 好きでテストもよくできたのが化学、先生にも恵まれたと思います。
  • 半面、先生というか授業がつまらないし、苦手意識を持ったのが物理、運動方程式は苦手です。
  • 生物は?と聞かれれば、あまり印象が残っていません。

「学校の勉強は役に立たない。」とは、よく聞く話ですが、たまには使うと便利なこともあります。

ここでは、高校物理の運動方程式の中で、等加速度運動の式とこんな時に使える例として、空母のカタパルト射出時の物理量(加速度)の計算例について説明します。

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等加速度直線運動と運動方程式とは

高校物理で出てくる等加速度運動について説明します。

等加速度運動とは、一定の加速度(等加速度)による運動のことです。

等加速度運動と考えられる例には、次の運動があります。

  • 自由落下:物を落とした時に重力により加速する運動
  • 放物線運動:ボールを投げたり、野球やゴルフの打球(弾道)を描く運動
  • 空母のカタパルト発艦:映画トップガンなど空母から発艦する艦載機の運動
  • ゼロヨン(0-400m):車のレースの1つで等加速度運動として近似できます。

下図は、等加速度運動のイメージです。

質量\(M\)の物体(下図のグレーの丸)が、加速度\(a\)で、平面上を直線的に移動しています。

ただし、

  • 物体と平面との摩擦は無しとします。
  • \(x\)は変位(移動距離)、\(a\)は加速度、\(v\)は速度です。
  • スタート地点では、時刻:\(t = 0\)、速度:\(v = v_0\)、とします。
  • t秒後の地点では、時刻:\(t = t\)、速度:\(v = v\)、とします。
等加速度運動のイメージ

等加速度運動のイメージ

図1 等加速度運動のイメージ

この時、以下の3つの式が成り立ちます。

  • 速度に関する式:

$$v = v_0 + a t\tag{式-1}$$

  • 変位に関する式:

$$x = v_0 t + \frac 1 {2} a t^2\tag{式-2}$$

  • 速度と変位に関する式:

$$v^2 – v_0^2 = 2 a x\tag{式-3}$$

等加速度運動の式を使う:空母からの艦載機の射出

空母からのカタパルトによる艦載機の射出を等加速度運動として、射出時の加速度を計算してみます。

はかせ
はかせ

映画トップガンでカタパルト射出のシーンを見た時に、どの程度のGがかかっているのかなと疑問に思い、調べ始めました。

その前に、空母からのカタパルトによる艦載機の射出について説明します。

空母による艦載機のカタパルト射出

下図を使って、空母からカタパルトにより射出される艦載機(F/A-18スーパーホーネット)のイメージを説明します。

  • 左上の写真:カタパルトのシャトルに固定され発艦する直前
  • 右上の写真:カタパルトによる加速(白い煙は蒸気カタパルトによるものです)
  • 左下の写真:カタパルトによる射出から自力飛行へ
  • 右下の写真:空母から離艦
空母からのカタパルトによる艦載機の射出イメージ

空母からのカタパルトによる艦載機の射出イメージ

図2 空母からのカタパルトによる艦載機の射出イメージ

出典:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。

なお、F/A-18スーパーホーネットと空母のカタパルトによる発艦の詳細は、以下の記事をご参照ください。

空母からのカタパルトによる発艦は、30トン(30,000kg)超の艦載機を約100mで一気に加速させて発艦させています。

パイロットにとっては、2秒ほどのわずかな時間で、停止した状態から空中に放り出されるようなイメージです。

カタパルトによる射出時の加速度を計算する

空母のカタパルトによる射出時の正確な物理量は分かりませんので、以下の物理量を持つ等加速度運動と仮定して、カタパルトによる射出時の加速度を計算します。

  • 艦載機の重量:\(30,000 kg\)(30トン)
  • スタート時の速度:\(0 km/h\)
  • 射出時の速度:\(260 km/h\)
  • カタパルトによる加速時間:\(2.7 s\)(秒)

(式-1)を使って計算する

(式-1)において、\(v_0 = 0\)なので、

$$v = a t\tag{式-1-a}$$

(式-1-a)を変形すると、

$$a = \frac v {t} \tag{式-1-b}$$

(式-1-b)に、射出時の速度:260 \(km/h\)とカタパルトによる加速時間:2.7 \(s\)を代入すると、

$$a = \frac {260} {2.7} = 96 (km/h/s) = 26.7 (m/s^2)$$

となります。

(式-2)で計算結果を確認する

(式-2)で結果を確認します。

(式-2)に、\(v_0 = 0\)、\(t = 2.7\)、(式-1)で求めた\(a = 26.7\)を代入すると、

$$x = \frac 1 {2} {26.7} \times {2.7}^2 = 97.3 (m)\tag{式-2-a}$$

となります。

空母のカタパルトの長さは約\(100 m\)なので、ほぼほぼ近い数値となりました。

なお、加速度\(26.7 (m/s^2)\)は、約\(2.7 G\)になります。

空母艦載機のパイロットは、カタパルト射出により重力の約2.7倍の力を全身に受けていることになります。

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まとめ

高校生時代、大学は国立理系を目指していて、物理と化学と生物の授業があり、苦手意識があったのが物理でした。大学、修士、論文博士と運動方程式を使うテーマでしたが、運動方程式の符号は今でも苦手です。

さて、「学校の勉強は役に立たない。」とは、よく聞く話ですが、たまには使うと便利なこともあります。

ここでは、高校物理の運動方程式の中で、等加速度運動の式とこんな時に使える例として、空母のカタパルト射出時の物理量(加速度)の計算例を移管項目で説明しました。

  • 等加速度直線運動と運動方程式とは
  • 等加速度運動の式を使う:空母からの艦載機の射出
    • 空母による艦載機のカタパルト射出
    • カタパルトによる射出時の加速度を計算する
      • (式-1)を使って計算する
      • (式-2)で計算結果を確認する
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人。
振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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