加速度センサーを積分アンプで変位(二重積分)にした波形がおかしい

振動計測で測る物理量としては、加速度、速度、変位があります。

振動計測では加速度計(加速度ピックアップ、加速度センサー)が一般的に使われ、振動の加速度を計測することが一般的です。計測しやすいのが加速度ということもできます。

一方、振動対策のため実機や実験装置の振動を評価する場合には、変位を知りたいことが多くあります。

ここでは、振動計測を例に、加速度、速度、変位と微分・積分との関係や積分アンプと変位についてのエピソードを紹介します。

振動計測や信号処理の知識のない方を想定してイメージが伝わることを重視しています。正確性には欠けていると思いますのでご注意ください。
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加速度、速度、変位の関係

加速度、速度、変位の関係は、微分と積分を使うと次の様な関係があります。

まずは、数式の世界での話です。

加速度、速度、変位と微分・積分との関係

加速度、速度、変位と微分・積分との関係

図1 加速度、速度、変位と微分・積分との関係

次に、振動をサイン波と仮定して、微分と積分のイメージを説明します。

振動(サイン波)と微分のイメージ

下図は、サイン波と微分のイメージです。

微分は下図の様に振動(サイン波)の傾きに相当します。

振動(サイン波)と微分との関係のイメージ

振動(サイン波)と微分との関係のイメージ

図2 振動(サイン波)と微分との関係のイメージ

上図で振動(サイン波)を変位と考えると、速度は変位を微分することで得られ、同様に速度を微分すると加速度が得られます。

この例であれば、振動(サイン波)の変位信号を微分した速度は、次の様な処理をして求めることができます。

  • 振動(サイン波)の変位は、アナログで連続信号なので、これを短い時間(サンプリング時間といいます)での値に変換する。上図の直線が点線になるイメージです。
  • 得られた短い時間に分割された振動(サイン波)の値の差分をサンプリングの時間で割ると微分をしたことになります。これが、速度信号です。

振動(サイン波)と積分のイメージ

下図は、サイン波と積分のイメージです。

積分は、下図のように面積のイメージです。

なお、下図では、x=0のところから塗りつぶしていますが、実際にはサンプリング間隔の幅の面積となります。

振動(サイン波)と積分との関係のイメージ

振動(サイン波)と積分との関係のイメージ

図2 振動(サイン波)と積分との関係のイメージ

上図で振動(サイン波)を加速度とします。

加速度を積分すると速度に、同様に速度を積分すると変位が得られますが、この時、積分誤差が発生します。

この積分誤差のため、FFTアナライザなどの計測器では、様々な信号処理が行われています。

変位計測に関するエピソード

ここでは、変位に関するエピソードを紹介します。

あるお客様より、次の様なお問い合わせがあったそうです。

お客様は、変位の計測をしたい。

  • 積分アンプに加速度センサーを接続して変位を見ているのだが、期待する変位信号が得られない。
  • 加速度センサーは、FFTアナライザでは計測できている。

メールや電話で問い合わせ内容について確認したのですが、状況が分からないのでお客様を訪問することになったそうです。

早速、どんな場合に問題がでるのか見せて頂いたところ、技術担当者にとっては衝撃的なシーンを目撃することになりました。

  • 積分アンプに加速度センサーを取り付ける。
  • 積分アンプの設定を二重積分(加速度を変位にする)に設定する。
  • 二重積分したアナログ出力をFFTアナライザでモニタする。

そして、

  • センサーを手で持ってゆっくり上げ下げを始めました。
  • 上げ下げをスムーズにしても、停止からスタートしても、急停止させても、理論的な(数式処理)をしたような波形は得られません。

この理由を仕様(スペック)で説明すると、

  • 積分アンプで積分するための周波数範囲外で使っているため

となりますが、この説明が伝わるはずがありません。

その後、長い時間をかけて信号処理について説明することになったそうです。

はかせ
はかせ

変位センサーの選定は難しいし、精度よく変位を求めるならサーボ加速度計がありますが、アンプも必要になり高額になります。変位の世界は、音振とはまた別の世界だと考えています。

このエピソードで得た教訓

このエピソードを聞いて、「積分アンプを信号処理の基本的な知識がない方が使うことを想定していなかった。」ということに気づきました。

Google先生で調べても判断が難しいでしょうし、書籍は積分アンプを使うための基本知識を得ようをする方には難しい専門書が多いのが現実です。

積分アンプやFFTアナライザのメーカーさんでは、初心者向けの計測や信号処理に関するセミナーを定期的にやっているそうですが、有料にも関わらずすぐに満席になってしまうそうです。

商品開発の視点で見れば、製品を販売する際には、その製品を使用する前提(条件)について、専門知識(この場合は信号処理に関する基本的な知識)について知らない方への対応策も必要だと言うことになります。

FFTアナライザでの信号処理は、センサーの信号を精度よく取り込みデジタル値に離散化したりと様々な信号処理をしているわけで、基本的な信号処理の知識が必要なことを改めて認識するよい機会となりました。

ここで紹介したエピソードの例であれば、加速度センサーから積分アンプで変位を得るために必要な信号処理についての基礎知識が必要です。これをどの様に伝えたり学んだりするかは、製品を作るメーカー側もユーザー側にも課題になったままなのかもしれません。

はかせ
はかせ

やってみて、疑問に思った時、自分で調べられるか、人に聞けるかが分かれ道なのかもしれません。

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まとめ

振動計測で測る物理量としては、加速度、速度、変位があります。

振動計測では加速度計(加速度ピックアップ、加速度センサー)が一般的に使われ、振動の加速度を計測することが一般的ですが、変位を知りたいことも多くあります。

ここでは、振動計測を例に、加速度、速度、変位との関係や積分アンプと変位についてのエピソードを以下の項目で説明しました。

  • 加速度、速度、変位の関係
    • 振動(サイン波)と微分のイメージ
    • 振動(サイン波)と積分のイメージ
  • 変位計測に関するエピソード
    • このエピソードで得た教訓
はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証勤務。振動制御で工学博士なれど、いろいろ経験して半世紀。
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