図面の投影法には、第一角法と第三角法と2つありますが、JISは第三角法ですし、図面を見て製品形状をイメージしやすいのも第三角法なので、「第一角法という投影法もある」ことだけ知識として頭の隅に置いておけばよいと考えていました。
そんな時、お客様より提示された参考図を元に、図面を描き、物を作ったのに、現場で取りつかないという不具合(トラブル)が発生しました。
直接の原因は、
- 「参考図が第一角法で描かれていたのに気づかず、第三角法で図面を描いた。」
ことです。
ここでは、第一角法で描かれた図面を第三角法で描くと、どのような間違いになるかについて説明します。
第一角法と第三角法との違いについては、別途まとめようと考えています。
図面の作成方法(投影方法):第一角法と第三角法
個人の力量や経験にもよると思いますが、図面作成の際に、第一角法で描くか、第三角法で描くか悩むことはないと思います。
3次元の立体を2Dの図面として表す場合、立体を平面(座標面)に投影した図として表します。
下図は、第三角法で立体を平面に投影するイメージです。
図1 第三角法で立体を平面に投影するイメージ
日頃、JISのルールで描いている場合には第三角法なので、第一角法で描かれた図面を見る機会もほとんどないケースもあるかと思います。
第一角法の図面を描くことが無い職場では、設計初心者だけでなく、ベテランでも第一角法で描かれた図面であることを見落とすこともないわけではありません。
以下、今回のトラブルの内容、原因と対策について説明します。
勝手違い(左右対称)が発生した原因
今回のトラブルについて簡単に説明します。
トラブルの第一報は、
- 「納品した部品を現場で取り付けようとしたら、取りつかない。」
とのお客様からのTelでした。
早速、品証や技術で原因を調べ始め、次のことが分かりました。
- 図面に誤りはない。
- 図面通りに物はできている。
原因1:参考図が第一角法であることに気づく
そこで、お客様からのインプット情報を確認していくと、
- お客様からの参考図(図面ではない)は、第一角法で描かれている。
ことに、技術が気づきました。
私も説明を受け、現物の写真、参考図や図面を見比べていましたが、第一角法の図面を第三角法で描くと確かに左右対称の形状になってしまいます。
下図は、第一角法で描かれた参考図のL型金物を、そのまま第三角法で描いたイメージ図です。
図2 第一角法のL型金物のそのまま第三角法で描いたイメージ
下図は、第一角法で描かれた参考図のL型金物を、第三角法だ描いたイメージ図です。
図3 第一角法のL型金物を第三角法で描いたイメージ
L型金物は、丸穴(取り付けボルトの穴)で固定されます。
図2と図3とでは、丸穴のプレートに溶接されたプレートの位置が、左右対称の位置になっています。
現場では、プレートの位置が、図3の位置でないとL型金物が取り付けられないため、トラブル(不具合)となったのでした。
原因2:その他の原因
原因1の通り、「第一角法の参考図を第三角法と思い製図した」のが原因ですが、さらに次の様な設計側の原因もありました。
- L型金物と呼んでいますが、実際はT字型の片側が極端に短い形状であり、図面を読み取るのが難しい。
- お客様の参考図(インプット情報)は第三角法と思いこんでいた。(第一角法であることに気づかなかった。)
- L型金物を受注する際、お客様に形状や取り付け方法の確認をしていなかった。
設計者が描いた図面誤りには、次の2つがあります。
- 物が作れない文字通りの図面誤り。
- 今回の場合の様にお客様の要求とは違う正しい図面で、図面通りの物を収めたが、お客様の要求に対し図面が間違っていた。
今回のケースの対策
現場でL型金物が取り付けられなかった原因は、
- 参考図が第一角法で描かれていることに気づかなかったこと
です。
この対策は、次の様な理由により意外に難しいのです。
- 参考図が第一角法で描かれている案件がめったにない。
- 第一角法か第三角法か見分けるのは、個人の力量(知識や経験)に依存する。
- 設計担当者としては、お客様に直接確認したいが、営業が間に入ると正確な情報が得にくい。
とはいえ、設計者としての再発防止策は、
- 参考図だけでなく、実際の取り付け場所や方法についてもお客様に直接確認すること
になると考えています。
取り付け方法を確認していれば、参考図が第三角法ではないことに気づけたのではないかと考えているからです。(ISOでいうお客様からのインプット情報の確認は、必要かつ重要なことなのです。)
以上、原因と対策についてまとめると。
結果からみれば、参考図が第一角法であることを見落としたことが原因ですが、見落としはヒューマンエラーです。
見落としを防ぐよりは、取り付け方法を確認することが有効な対策になると考えています。
まとめ
図面の投影法には、第一角法と第三角法と2つありますが、JISは第三角法ですし、図面を見て製品形状をイメージしやすいのも第三角法なので、「第一角法という投影法もある」ことだけ知識として頭の隅に置いておけばよいと考えていました。
そんな時、お客様より提示された参考図を元に、図面を描き、物を作ったのに、現場で取りつかないという不具合(トラブル)が発生しました。
直接の原因は、「参考図が第一角法で描かれていたのに気づかず、第三角法で図面を描いた。」ことです。
ここでは、原因と対策について以下の項目で説明しました。
- 図面の作成方法(投影方法):第一角法と第三角法
- 勝手違い(左右対称)が発生した原因
- 原因1:参考図が第一角法であることに気づく
- 原因2:その他の原因
- 今回のケースの対策