はじめての設計と題して、前回は公差の計算方法について説明しました。
ここまでの公差は、いわゆる寸法公差といわれるものです。
3D CADの普及は3Dモデルでの設計やモノづくりにおいて公差も寸法公差から、時代は幾何公差に変わっています。
設計図面の曖昧さをモノづくりの製造側で何とかしてきた時代から、NC加工機から3Dプリンタも実用化されている今において、幾何公差が必要になってきたということでもあります。
ここでは、幾何公差とはどの様なものなのかについて寸法公差との違いを含めて説明します。
幾何公差のJIS規格
JISの普通公差については、以下の記事でも簡単に説明しました。
JIS B 0405-1998(ISO 2768-1:1989)
「普通公差-第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差」
幾何公差のJISについて以下のJIS規格に目を通してみました。
JIS B 0420-01:2016
「製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ」
Geometrical product specifications (GPS) – Dimensional tolerancing-Part 1 : Linear sizes
JISを読んでみても、サイズがこれまでの寸法公差と何が違うのか、幾何公差とは何なのか図を見ていると正直なところよく分かりません。
気づいた点を含め寸法公差との違いを列挙します。
- 2010年に第1版が発行されたISO 14405-1のJIS規格である。
- これまでの寸法を「サイズ」というようになった。
- 幾何公差では、寸法では表せないソリや加工による変形についても指定する。
例えば、JIS B 0420-01の適用範囲には、長さに関わるサイズとして、以下が列挙されています。サイズの言葉をみていくと何となくイメージできるかもしれません。JIS規格の図を合わせて見ると、加工や計測についての知識や具体的なイメージができる場合は、理解がしやすいと考えています。
- 局部サイズ
- 2点間サイズ
- 球サイズ
- 断面サイズ
- 部分サイズ
- 全体サイズ
- 長さに関わる直接全体サイズ
- 最小二乗サイズ
- 最大内接サイズ
- 最小外接サイズ
- 長さに関わる間接全体サイズ
- 算出全体サイズ(体積直径の算出サイズ)
- 長さに関わる直接全体サイズ
- 算出サイズ
- 円周直径
- 面積直径
- 体積直径
- 順位サイズ
- 最大サイズ
- 最小サイズ
- 平均サイズ
- 中央サイズ
- 中間サイズ
- 範囲サイズ
実際のモノづくりでは図面と全く同じリアルなモノ(現物)は作れないことから、加工を考慮した公差が幾何公差であると考えています。
以下、参考までに幾何公差のJIS規格をまとめて列挙します。
- 「JIS B 0420-1 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ」
- 「JIS B 0420-2 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第2部:長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法」
- 「JIS B 0420-3 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第3部:角度に関わるサイズ」
書籍で学ぶ幾何公差
幾何公差のJISを眺めていてもぼんやりとしたイメージしかつかめないため、参考図書を探してみました。
私は、以下の本が分かりやすいと思います。
「図面って、どない描くねん! LEVEL2(第2版)」
日刊工業新聞社 山田 学(著)
参考書籍と学び方
「図面って、どない描くねん! LEVEL2(第2版)」を入手し、リラックスした状態で本の概要をつかむこと、つまり幾何公差とはどの様なものかを学ぶことを意識して読み進めました。
もともと学生の頃学んだ立体図学は、課題を作るだけで終わりましたし、3D CADによるモデル作成も苦手なので、3Dモデル作成に慣れている方であれば、幾何公差を具体的にイメージできるのかもしれません。
「図面って、どない描くねん! LEVEL2(第2版)」は、全9章です。
私は最初から順番に読み進めるのではなく、
- まずは、図を見て興味をもった章をざっと見る。
- 気になる言葉がある章をざっと読む。
ところから始めています。
幾何公差の設定については、実際に3D CAD(FreeCAD)でモデリングしながら学んでいくのが良さそうです。
私が選んだキーワードを列挙します。
- サイズと幾何特性
- GD&T(幾何公差設計法)
- 加工と計測の知識
- 基準を意味するデータム
- 形状偏差、姿勢偏差、位置偏差
なお、幾何公差を学ぶ上で設計者に必要な知識、できれば経験が必要なことが次の2つです。
- 加工方法(これについては寸法公差でも必要でした。)
- 計測方法(幾何公差は、ノギスやコンベックスだけでなく3次元計測の知識も必要になります。)
加工方法や計測方法について知る、学ぶことは、よりよい設計やモノづくりにも必要なことです。
PCや3D CADにCAEなどのソフト面に加え、加工技術や計測技術の進歩・発展もあり、幾何公差が実用的に使えるようになってきたとも言えますし、幾何公差を使うことでモノづくりそのもののレベルアップが図られたと考えています。
まとめ
はじめての設計と題して説明してきましたが、ここまでの公差は寸法公差といわれるものです。
3D CADの普及は3Dモデルでの設計やモノづくりにおいて公差も寸法公差から、時代は幾何公差に変わっています。
設計図面の曖昧さをモノづくりの製造側で何とかしてきた時代から、NC加工機から3Dプリンタも実用化されている今において、幾何公差が必要になってきたということでもあります。
ここでは、幾何公差について以下の項目で説明しました。
- 幾何公差のJIS規格
- 書籍で学ぶ幾何公差
- 参考書籍と学び方