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F/A-18スーパーホーネットについては、以下をご参照ください。
F/A-18スーパーホーネットは、F-15イーグル、A-10サンダーボルトIIとは違い、F-14やステルスF-35Cと同様の艦載機です。2022年5月公開されたトップガン2作目の主役機でもあります。
F/A-18スーパーホーネットは、近代化されてスーパーになったと思っていたのですが、実態としてはレガシーホーネットとは別物です。
また、F/A-18スーパーホーネット・ファミリーの電子戦機EA-18G Growlerもあります。2021年8月には、米国海軍にF/A-18スーパーホーネットのBlockIII初号機が納入されています。
以下、主にボーイング社と米国海軍のWebサイトからの情報を元に説明します。
F/A-18E/Fスーパーホーネットとは
F/A-18E/Fスーパーホーネット、E型が単座、F型が複座で、メーカーはボーイング社です。
下図では、上側が単座のE型、下側が複座のF型のようです。
図1 F/A-18E/Fスーパーホーネット
出典:Military_MaterialによるPixabayからの画像です。トリミングしています。
ちなみに、F/A-18ホーネットは、レガシーホーネットとも呼ばれていますが、ホーネットとスーパーホーネットとでは、機体が大型化しているなど別物です。
ブロックIIIスーパーホーネットとは(近代化改修)
これからの航空優位のために作られたのが、F/A-18ブロックIIIスーパーホーネットで、米海軍現有航空機の中でも高性能、手頃な価格の最新型戦術航空機であり、米海軍の艦載機の主力です。
スーパーホーネットは実戦にも投入されており、最先端の次世代マルチロールストライクファイター(多用途の戦闘攻撃機)であり、空軍または海軍航空部隊を近代化するために必要な能力、柔軟性、およびパフォーマンスを備えています。
スーパーホーネットには、単座のE型と複座のF型があり、空中優位性、精密誘導兵器による昼夜間攻撃、戦闘機の護衛など、ほぼすべての戦術ミッションに対応できます。
スーパーホーネットブロックIIIの主な特長を列挙します。
コンフォーマル・フューエル・タンク(CFT)
機体に沿って取り付けられた(機体と一体になるように作られた)燃料タンクです。
空気抵抗を抑え、3,500ポンドの燃料を運ぶことができ、航続距離、速度アップ、搭載重量の増加に対応することができます。
次世代型コクピット(レーダー強化と大型の多機能ディスプレイ)
次世代型コクピットシステムは、強化されたレーダーと大型の多機能ディスプレイが装備されています。
新型の10 x 19インチのタッチスクリーンディスプレイは、複数の遠距離にある目標を、追跡することができます。
ブロック II IRST(赤外線捜索・追尾)
アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーとは別系統で、IRSTにより遠距離からの脅威(敵機など)を発見できる赤外線捜索・追跡ができます。
スーパーホーネットがセンサーの様に、発見した脅威の情報をネットワーク間で共有し利用できます(データリンク機能)。
高度なネットワーク・インフラストラクチャ
コンピューティングパワー(DTP-N)、ネットワークスループット(TTNT)、センサー/プラットフォームの統合を改善するシステムでネットワーク機能を強化し、飛行機の内外で大量のデータを利用できます。
DTP-NとTTNTの説明です。適切な和訳が分かりませんでした。
DTP-N:Open Architecture, Multi-level secure processor
TTNT:High Throughput, Low Latency Data Link
他のプラットフォーム(スーパーホーネットなど)から目標情報を受信する機能も強化されています。
新しい機体は9,000時間以上の寿命
ブロックIIIにアップデートすることで、機体寿命が3,000時間伸び、9,000時間以上の寿命になりました。
F/A-18の諸元
米国海軍のWebサイトの情報によると、主な諸元は以下の通りです。
出典:米国海軍のWebサイト「F/A-18A-D Hornet and F/A-18E/F Super Hornet Strike Fighter」から
- エンジン:F414-GE-400ターボファン・エンジン2基
- エンジン推力:1基あたり9,977kg
- 全長:18.5 m
- 全高:4.87 m
- 翼幅:13.68 m
- 最大離陸重量:29,932kg
- 速度:マッハ1.8以上
- 高度:15.24 km
- 航続距離:戦闘時 1,275海里(2,346 km)、AIM-9×2発装備
- 巡航距離:1,660海里(3,054 km)、AIM-9×2、480ガロン燃料タンク×3搭載
- 乗員数:A、C、E型は単座、B、D、F型は複座
- 武装:
- M61A1/A2 バルカン20mm砲1門
- AIM 9 サイドワインダー、AIM-9X(予定)、AIM 7 スパロー、AIM-120 AMRAAM、ハープーン、Harm、SLAM、SLAM-ER(予定)、マーベリックミサイル、JSOW、JDAM、データリンクポッド、ペイブウェイレーザー誘導爆弾、各種汎用爆弾、地雷、ロケット弾など
ボーイング社のWebサイトの情報によると、主な諸元は以下の通りです。
- 重量:F/A-18E:14,552 kg
- 最大離陸重量:29,937 kg
- エンジン推力:17,000 ポンド(7,700 kg) x2基
- 空母に着艦できる搭載重量(Carrier Bringback Payload)
- F/A-18E:4,491 kg
- F/A-18F:4,082 kg
- 速度:マッハ1.6、1,976 km/h
F/A-18ホーネット(レガシーホーネット)とは
F/A-18ホーネットとF/A-18スーパーホーネットは、見た目はよく似ていますが、別物です。
並べれば大きさの違いが分かりますが、外見からは、2基のエンジンの空気取入口の形状の違いで区別することができます。
ホーネットの空気取入口は楕円形上なのに対し、スーパーホーネットは台形になっています。ステルス性向上のための変更ということです。
図2 F/A-18レガシーホーネット
出典:Military_MaterialによるPixabayからの画像です。トリミングしています。
マクドネルダグラスF/A-18ホーネットは空母任務用に設計され、空対空と空対地の両方の任務を実行するように設計された最初の戦術航空機でした。
F/A-18と記載されるのは、米海兵隊はF-18戦闘機として、海軍はA-18攻撃機として発注したためです。
F/A-18は、戦闘機と攻撃機としての役割を簡単に切り替えることができ、写真偵察や電子対策のミッションにも対応できます。
派生機として、複座型の他、改良型戦闘機、偵察機、夜間攻撃戦闘機があり、F/A-18ホーネットは1983年に現役となっています。
さらに、炭素繊維の翼を備えた最初の航空機であり、デジタルフライバイワイヤーフライトコントロールを使用した最初の戦術戦闘機でした。
F/A-18スーパーホーネットの歴史
F/A-18E / Fスーパーホーネットは1995年11月に初飛行を行い、2001年9月に初期運用能力(IOC:Initial Operational Capability)を獲得しています。
スーパーホーネットは、高度な誘導兵器を備えた昼夜の攻撃、護衛など、複数のミッションや密接な航空支援を実行する、ステルス性の高い航空機で、1人乗りのE型と2人乗りのF型があります。
F/A-18E / Fはオリジナルのホーネットより25%大きく、機動性、航続距離、ペイロードが向上し、より強力なエンジンが搭載されています。(別物ということです。)
F/A-18スーパーホーネットの納入からその後のアップグレードについて以下に示します。
2005年4月:ブロックIIスーパーホーネット納入
ボーイング社は、世界初の戦術マルチモードアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダー(アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー)を備える、アップグレードされたスーパーホーネット、ブロックIIスーパーホーネットを納入しました。
2008年:電子戦機EA-18G登場(スーパーホーネットの派生機)
EA-18Gグロウラーが、海軍の航空機艦隊に加わりました。
EA-18Gは、スーパーホーネットの派生機です。米国とその同盟軍に戦術的な妨害と電子的保護、スーパーホーネットのターゲティング(目標捕捉)と自己防衛機能とともに、全帯域の空中電子攻撃機能を持っています。
2010年4月:燃料システムの技術評価
ボーイング社は、米海軍と協力して、燃料特性の実験室試験と燃料システムの互換性の技術評価を行いました。
2011年10月:オーストラリアに納入完了
オーストラリア連邦は24のスーパーホーネットを運用しています。
ボーイング社は、予定より早く納入を完了しました。
2013年8月:アドバンストスーパーホーネットのプロトタイプの試験
ボーイング社とノースロップグラマン社は、適合型燃料タンク、密閉型武器ポッド、および強化機能を備えたアドバンスト・スーパーホーネットのプロトタイプを使用して飛行テストを行いました。
この結果は、2040年までの脅威に対抗できるものでした。
2015年1月:IRST認可
2014年2月、(IRST)赤外線捜索および追跡センサーシステムのテスト飛行に成功し、米国海軍は2015年1月に初期生産のためのIRSTを承認しました。
2018年:スーパーホーネットの予算追加
2018年度予算に、研究開発、ブロックIII機能のテストおよび評価への資金提供を含む、フューチャーイヤーズディフェンスプログラムの一環として、今後5年間で80機のスーパーホーネットが必要とされました。
その後、米海軍は、18年度予算にさらに10基のスーパーホーネットを追加しました。
2021年:スーパーホーネットのブロックIIIの初号機納入
20210年9月29日の以下の記事で、2021年8月31日に米国海軍にスーパーホーネットのブロックIIIの初号機が納入されたと発表されました。
図3 米国海軍に納入されたF/A-18スーパーホーネットのブロックIIIのたぶん初号機
出典:米国海軍のWebサイト<Press Office>News-Stories>からの画像
まとめ
2020年に続編公開予定のトップガンに登場するF/A-18スーパーホーネットですが、近代化されてスーパーになったと思っていたところ、実態としてはホーネットとは別物と知り改めて調べてみました。
ここでは、以下の項目で説明しました。
- F/A-18E/Fスーパーホーネットとは
- ブロックIIIスーパーホーネットとは(近代化改修)
- コンフォーマル・フューエル・タンク(CFT)
- 次世代型コクピット(レーダー強化と大型の多機能ディスプレイ)
- ブロック II IRST(赤外線捜索・追尾)
- 高度なネットワーク・インフラストラクチャ
- 新しい機体は9,000時間以上の寿命
- 主な仕様
- F/A-18ホーネット(レガシーホーネット)とは
- F/A-18スーパーホーネットの歴史
- 2005年4月:ブロックIIスーパーホーネット納入
- 2008年:電子戦機EA-18G登場(スーパーホーネットの派生機)
- 2010年4月:燃料システムの技術評価
- 2011年10月:オーストラリアに納入完了
- 2013年8月:アドバンストスーパーホーネットのプロトタイプの試験
- 2015年1月:IRST認可
- 2018年:スーパーホーネットの予算追加
- 2021年:スーパーホーネットのブロックIIIの初号機納入