1981年、F-22ラプターの始まりとなる、ATF(Advanced Tactical Fighter:先進戦術戦闘機)プログラムが正式に始まりました。
ATF(先進戦術戦闘機)の研究で明らかになっていった4つの性能要件(ステルス、スピード、機動性、STOL/STOVL/VTR)と操縦性の統合について説明します。
この記事は、主に以下の記事をDeepLで翻訳したものを意訳しています。私の理解した内容となっていますので正確なところは原文をご確認ください。
出典:Lockheed Martin社のCODE ONE ARCHIVEの「Design Evolution Of The F-22 Raptor」より
ステルス性
ATFの研究結果から、ステルス性が非常に望ましい設計特性であることが分かりました。
例えば、ゼネラル・ダイナミクス社の「1995年戦闘機技術研究」の最終報告書(1980年作成)では、次のような例で、ステルス性が制空権を獲得するための最も重要な特性であるとしています。
- 戦闘機はほとんど常にカモフラージュされており、戦闘機のパイロットは常にステルス戦術を採用していました。
- アメリカ空軍がベトナムでの戦闘をリアルタイムで分析した「レッドバロン研究」によると、「ベトナムで撃墜されたパイロットの半分以上、攻撃されたパイロットの約80%が、攻撃者を認識していなかった。」という結果が出ています。
- 第1次世界大戦、第2次世界大戦、朝鮮戦争でも同じようなことがあったことがデータで示されています。
また、歴史上の歴史上の戦闘機のエース・パイロットの伝記には、彼らが成功した理由として、
- 自分が見られる前に相手を発見することができた。
- 日の当たらないところから攻撃した。
- 敵の死角から攻撃した。
といったことが書かれています。
ステルスの意味:広義と狭義
ステルスとは広い意味では、
- 相手が自分を発見する前に、相手を発見することができる。
ということです。
また、ステルスの狭い意味では、
- 航空機の探知されやすさを著しく低下させる様々な素材や技術を応用したもの
を指しています。
探知を回避する(見つからないようにする)技術の進化
探知技術の進化に伴い、探知を回避する技術も進化してきました。
探知を回避する例を列挙します。
- 第2次世界大戦の初期に効果的なレーダーネットワークが開発されたことで、レーダーに対抗するステルス技術が生まれました。
- レーダーを吸収する素材は、1940年代にドイツが潜水艦の潜望鏡や空気を吸い込むUボートのシュノーケルに使用したのが始まりです。
- アメリカでもレーダー回避の技術が開発されています。
やがて、ステルス性はドローンやミサイルにも応用されるようになっています。
ドローンやミサイルへの応用例を列挙します。
- Ryan Q-2 Firebee(ライアン社)やLockheed D-21 drones(ロッキード社)のドローンには、レーダーを吸収する素材が使われていました。
- ボーイング社は1960年代後半、ステルス技術を短距離攻撃ミサイル(通称SRAM、AGM-69)の設計に応用しました。
- 超音速のSRAMは、1990年までB-52やB-1爆撃機に搭載されていました。
図1 ライアン社のQ-2 Firebee
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>VISIT>MUSEUM EXHIBITS>FACT SHEETS>DISPLAYからの画像
図2 ロッキード社のD-21:Lockheed D-21B
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>VISIT>MUSEUM EXHIBITS>FACT SHEETS>DISPLAYからの画像
図3 ボーイング社の短距離攻撃ミサイル(SRAM、AGM-69)
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>VISIT>MUSEUM EXHIBITS>FACT SHEETS>DISPLAYからの画像
図4 B-52:100th ARW fuels B-52 off Norwegian coast
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
図5 B-1B
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
ゼネラル・ダイナミクス社のレーダー測定施設
戦闘機やミサイル等にステルス性を持たせるためには、戦闘機やミサイル等のステルス性を計測する施設が必要です。
ゼネラル・ダイナミクス社は、ニューメキシコ州ホワイトサンズにある空軍初のレーダーアンテナ目標散乱施設RatScatを製作しました。
RatScatは、航空機のレーダー断面積を正確に測定するために使用され、1970年代まで米国空軍のために運営していました。
RatScatが出ている記事です。
また、1980年代までテキサス州メリディアンに独自のレーダー測定施設を運営していました。
ゼネラル・ダイナミクス社のステルス性を持つ設計コンセプト
1950年代後半、ゼネラル・ダイナミクス社は、ロッキードU-2に代わる超音速高高度偵察機を求める中央情報局の要求に応えるため、高度なステルス性を持つ設計コンセプトを追求していました。
図6 U-2
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
この設計は、「Super Hustler」と呼ばれるB-58の派生機として始まり、その後、高度38,100m(38.1km)、マッハ6.25の速度での巡航に最適化された独立した航空機へと進化しています。
参考までにSR-71がマッハ3.2、高度25,900mです。
この機体は「Kingfish」と呼ばれ、主にpyro-ceram(耐熱性とレーダー減衰性を備えたセラミック素材)で作られていました。
巡航時には、Marquardt社製のラムジェットを2基搭載し、ゼネラル・エレクトリック社製の格納式J85ターボジェット2基は、離陸時とラムジェットに点火できる速度まで加速する際の動力源としていました。
図7 B-58 Hustler
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>VISIT>MUSEUM EXHIBITS>FACT SHEETS>DISPLAYからの画像
しかし、ゼネラル・ダイナミクス社の先鋭的な設計は、1959年8月にロッキード社の競合機に敗れてしまいました。
ロッキード社が開発した単座機A-12は、SR-71ブラックバードとして広く知られている米国空軍の2座機の前身で、次のような特長がありました。
- A-12は、レーダーを回避する形状とレーダーを吸収する構造材料を利用
- オリジナルのデザインに高度なステルス性を取り入れた最初の実用機として評価されました。
- 傾斜した尾翼、のこぎり状の構造、前縁と後縁のパイ状のパネル、ブレンドされた主翼とチャイン、レーダーを吸収する構造と塗料が組み合わされ、航空機のレーダー断面積は当時の典型的な航空機の数分の一となっていました。
図8 YF-12(A-12の派生機):Lockheed YF-12A
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>VISIT>MUSEUM EXHIBITS>FACT SHEETS>DISPLAYからの画像
1970年代、ロッキード社はコンピュータ技術と電磁波の反射に関する曖昧な数式を組み合わせ、ステルス技術をさらにより高度なものに発展させ次の成果を得ました。
- エコーと呼ばれるコンピュータプログラムは、表面が平らな物体がレーダーに映る様子を正確に予測することが可能になりました。
- このソフトウェアを国防高等研究計画局の研究に応用し、Have Blueという航空機を開発した。
Have Blueは、尾翼が内側に傾いた小判型の機体は、F-117ナイトホークの前身で、DARPAプロジェクトの後、すぐにF-117の開発契約が結ばれました。
図9 Have Blue
出典:HOLLOMAN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
それまでのどの機体よりも格段にステルス性に優れたF-117の成功は、ATFプログラムに大きな影響を与えることになりました。
スピード
Flight Dynamics Lab のコンセプトワークでは、スピードも航空優勢戦闘機の重要な特性の1つとされています。
スピードは敵の反応時間を奪い、必要に応じて交戦したり離脱したりする自由度を高めます。主導権は多くの場合、より速い戦闘機にあります。
これらの研究におけるスピードとは、アフターバーナー(望ましくない不健全な赤外線エネルギーの源)を使用しない超音速飛行、すなわちスーパークルーザーの形をとっています。
超音速飛行のために航空機を最適化すると、細長い機体に小さな高翼と大型の高温エンジンを搭載することになります。
ATFは、超音速飛行が可能な最初の軍用機は、B-58ハスラーであり、ATFではありません。
しかし、B-58は、超音速航行が可能な速度を出すためには、
- アフターバーナーを使用する。
- 急降下を利用して加速する。
必要がありましたが、F-16XLやF-16は、アフターバーナーなしでも超音速飛行が可能です。
図10 F-16XL:General Dynamics F-16XL
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>UPCOMING>PHOTOSからの画像
図11 F-16:Tankers fuel Sentry Savannah
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
機動性
機動性は、航空優勢戦闘機のもう1つの重要な特性として挙げられています。
ステルスや超音速飛行とは異なり、機動性の高さは攻撃的な戦術ではなく、実際には防御的な戦術として用いられることが多い。
映画トップガンのような一般的に知られているイメージとは裏腹に、相手を操縦して撃墜することは、通常、次のような理由で良い策ではないためです。
- 撃墜するために操縦していると時間がかかり過ぎる。
- 狙っている相手とは別の相手に行動(機動)を予測されてしまう。
また、歴史的に見ても、成功した空対空パイロット(戦闘機乗り)は、可能な限りマニューバリング戦を避けてきたと言えます。
戦闘機のパイロットは、通常、飛行空間の中で、自機の機動性に有利な部分を選んで行動し、相手が有利な部分を避けようとします。
しかし、あらゆる場所で優れた機動性を発揮することができるのであるならば、そのような配慮は不要となるため、戦術的な柔軟性を高めることができます。
操縦性は1960年代にジョン・ボイドがエネルギー操縦理論で数値化され、F-15にも生かされていますが、この理論で確立された原理を重視して特に設計された飛行機は、F-16が最初の機体です。
F-15が保守的な設計で最強の戦闘機と呼ばれているのに対し、F-16は最新技術を取り入れた戦闘機のベストセラーとなっています。
エネルギーで評価する操縦性についての一般的な評価指標とは、次の3つを指します。
- 持続G能力:対気速度と高度を落とさずに強く旋回できる能力
- 瞬間G:速度への影響を気にせずに機首を旋回できる能力
- 比過剰出力:あらゆる飛行状態で上昇、加速、旋回する可能性を示す指標
また、
- 遷音速加速時間:例えば、マッハ0.8からマッハ1.2になるまでの時間
も注目すべきパラメータとなっています。
これらの特性を比較することで、戦闘機の機動戦(ドッグファイト等)においてどちらが有利になるかが分かるようになりました。
STOL/STOVL/VTOL
言葉の説明から、STOL/STOVL/VTOLとは、
- STOL(short take-off and landing):短距離離着陸
- STOVL(short takeoff/vertical landing):垂直/短距離離着陸
- VTOL(Vertical Take-Off and Landing Aircraft):垂直離着陸
のことです。
STOL(短距離離着陸)とVTOL(垂直離着陸)、両方を備えるのがSTOVLということで、VTOLで有名なのはハリアー、F-35は用途に応じた機種をそろえています。
図12 AV-8B Harrier II:着艦
出典:MARINES(米国海兵隊)のWebサイト<Home>Photos>からの画像
ATFの話に戻ります。
1970年代から1980年代の初期のATF研究では、戦闘で破壊された滑走路で航空機を運用する能力も評価されていました。この能力は、短距離離着陸、短距離離陸・垂直着陸、垂直離着陸(それぞれSTOL、STOVL、VTOL)など、様々な用語で呼ばれています。
短距離離着陸や垂直離着陸の機能を搭載するには、高いコストがかかります。しかし、短距離離着陸のメリットは、ステルス性、速度、機動性などのメリットに比べて明確ではありません。
このため、STOL、STOVL、VTOLの必要性を確立することは、次の様に複雑で難しいものになります。
- どの程度の能力が必要かは、敵の攻撃的対空兵器(敵機を離陸前に破壊する能力)と滑走路破壊兵器の規模と効果に依存する。
- 相手の飛行能力に大きな影響を与えるために、敵が破壊しなければならない滑走路の数や、滑走路を迅速に修復して運用を再開する能力にも左右される。
- 最も重要なのは、敵の出撃がそもそも基地に到達するのを阻止できるかどうかであり、防御側対空部隊の効果による。
また、次の様なさらに問題を複雑にする要因があります。
- 爆撃対象が、コンクリートか、それとも地上の飛行機なのか。
- 航空機のシェルターの有効性や、航空機がどこにいるかという情報の正確さ。
ゼネラル・ダイナミクス社の次の2つのデザインが、短距離離着陸に直接取り組んだものです。
- Short Snort
- エンジン推力を主翼上で推力を偏向し、数百フィートの滑走路しか必要としない戦闘機を実現しました。
- このコンセプトでは、エンジンの排気を主翼の上面に沿ってスパン方向に流すダクトとポートを採用しました。
- この方法では、非常に低い速度でも大きな揚力が得られます。しかし、このダクトはとても重いため、高性能の超音速戦闘機に搭載することは不可能であった。
- Jiminy Cricket
- 短距離離着陸の問題を複数のエンジンで解決しようと試みました。
- 揚力と上昇飛行のための推力を発揮する主揚力クルーズエンジンと、離着陸のみの揚力を発揮する補助エンジンを垂直に搭載した設計です。
- エンジンの大きさにより、短距離離陸と垂直離陸が可能な機体となる。
一般に、超音速飛行と高い機動性を目指して設計された戦闘機は、推力重量比と翼面荷重により、次の様なかなりの短距離飛行能力を内在しています。
- ラフフィールド・ランディングギア(修復された滑走路で運用するため)
- 大型のブレーキ、スラスト・リバーサーを追加することにより、短距離飛行能力を向上させることができますが、その分、空戦時の推力比が低下します(機動性gが落ちます)。
ATFは当初、非常に難しいSTOLの要求をしており、特に推力反転と推力ベクタリングの使用を求めていました。しかし、このプログラムの実証・検証段階で離着陸距離の要求が緩和され、推力反転装置が不要になり、重量とコストも削減されました。
推力ベクタリングについては、次の様な理由で航空機の性能を向上させるため、維持されました。
- 推力偏向により、尾翼のみを使用した場合よりも低い速度で機首を回転させることにより、離陸時間を短縮することができる。
- 巡航時には、推力偏向を通常の尾翼によるトリムを補うために使用することができる。
- 推力偏向により、尾翼を小さくしたり、尾翼を抵抗の少ない位置に設定して巡航することができる。
- 推力偏向は、高迎角時やアグレッシブな機動(ドッグファイト等)時の機体制御力を高めることができる。
最終的にATFとしてSTOLが要求され、F-22はSTOL機としての運用が可能になっています。
図13 F-22の推力偏向ノズル
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>からの画像
ステルス性、スピード、操縦性の統合への挑戦
ATFに求められる3つの要素、ステルス性、スピード、操縦性のバランスをどの様にまとめ上げるかは、ATFの基本的な課題となりました。
このような複雑な組み合わせは、これまで誰も試みたことがなく、F-117が示したように、ステルス性は次の様に設計のあらゆる側面に影響を与えます。
ステルス性を確保するために必要な武器を内蔵
ステルス性を確保するためには、必要な武器を機体内に内蔵することが必要ですが、武器の内蔵は、飛行機の断面積を大きくします。
飛行機の断面積が大きくなると、超音速での抵抗が大きくなり、スーパークルーズの妨げになります。
ステルス機が武器を内蔵するためには、大きな武器庫(ウェポンベイ)が必要となります。
ランディングギアとインレットダクトの設置場所は、ウェポンベイと同じ場所に設置したいという要求となります。
これらをまとめていくと、結局、巨大なエンジンを搭載して機体を非常に長くしないと、超音速で飛べない飛行機となってしまいます。
また、この様なアプローチは、許容できない程の高コストにつながるため実現できなくなってしまいます。
操縦性の要求
操縦性の要求は、主翼や尾翼のサイズを大きくしたり、超音速飛行だけのために必要以上にエンジンを大きくしたりする傾向がありますが、次の様にこれらはすべてステルス性の実現を難しいものにします。
- F-117の説明を受けた数人のパイロットは、ステルス性を全面的に打ち出すことによる速度、操縦性、積載量などの能力の低下を知っていました。ATFに乗るであろう戦闘機パイロットは、ステルス性のためにこれらの能力を喜んで犠牲にすることはないだろう。
1981年にASDが再びATFの情報要求を出したとき、機体メーカー9社とエンジンメーカー3社がこの挑戦に応じました。この時、空軍は空対空と空対地のどちらに重点を置くかを決めていませんでした。
ATF(新型戦闘機)の提案(アイディア)
空軍は産業界に新型戦闘機のアイディアを募ったところ、各社からさまざまなアイディアが寄せられました。
ロッキード社の回答(アイディア)
ロッキード社は、次の様なYF-12A(一般的には単座のSR-71)の派生型を提案しました。
- 空対地のミッション用に設計
- 中央のウェポンベイに複数の運動エネルギー貫通兵器を搭載。この武器は、高高度で超音速で発射され、レーザーで誘導される。
- このアプローチは、1960年代半ばから後半にかけてYF-12Aが行った一連の空対空ミサイル発射から得られた技術データを基に、1982年春まで行われました。
- YF-12Aは、ヒューズ社のAIM-47ミサイルを7発、高度8万フィート、速度マッハ3以上で発射。射程距離30マイル以上の空中目標に向けて発射し、大きな成功を収めた。この高高度・高速飛行は、ロッキード社がF-Xプログラムの候補に挙げていたもので、後にF-15となるものである。
図14 AIM-47
出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIT FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイトHOME>UPCOMING>PHOTOSからの画像
ボーイング社の回答(アイディア)
ボーイング社もロッキード社と同様に超音速アプローチで提案しました。
- 空対地のミッションを重視した設計
- 飛行翼、カナード、4尾翼、2尾翼、サイドインレット、ノーズインレットなど、さまざまな飛行機を検討した結果、すぐにデザインを決定しました。
- 航空機はより高速に設計されるべきだと考えていましたので、より微細な比率の設計に集中しました。
また、優れた操縦性を持つ機体が必要であることも明らかでした。
後に飛行機の主要任務が空対空に移行したとき、優れた操縦性を持たないものをすぐに排除しました。また、巧妙な内部配置や、弾を半没状態で運ぶウェポンベイのデザインなど、ステルス性を強調しました。
ゼネラル・ダイナミクス社の回答(アイディア)
ゼネラル・ダイナミクス社からの回答は、1976年から78年にかけて飛行力学研究所で検討された4つのコンセプトのうち、2つを支持するものでした。
- アイディア1:Model 21(Plain Janeの派生型)
- Plain Janeの派生型
- このデザインは、ATFプログラムの次の段階で検討されることになる、従来型のコンフィギュレーション・ファミリーの先駆けとなるものでした。
- 現代の戦闘機ファミリーの伝統的な仲間のように見えましたが、完全に伝統的なものではありませんでした。
- レーダーの断面積を小さくするために前面を整形
- 支柱で支えられた主翼、レーダーと赤外線捜索・追跡システムを組み合わせた回転式の機首を備える。
- 機体構造の40%は複合材で構成
- 空対地兵器としては、断面が四角い滑空爆弾を搭載
- アイディア2:Sneaky Peteの派生型
- ジェネラル・ダイナミクス社は、このデザインの実物図面を米国空軍関係者に見せることを禁じられていました。
- 機密扱いのためにこの設計の実物図面を見せることができず、代わりに架空の戦闘機の図面を提示しました。
- 実際の設計は、プログラムの次の段階で検討される全翼機の研究の出発点となるものでした。
各企業による1年間の研究と報告書作成の後、ASDは企業が調査したさまざまな航空機を含む4つの一般的な戦闘機のデザインについてミッション分析を行いました。
これらの機体は、N、SDM、SLO、HIと名付けられました。
- N(numbers):小型で安価、大量に購入可能
- SDM(Supersonic dash and maneuver):スピードと操縦性を重視
- SLO(Subsonic Low Observables):飛行翼の設計をベースにしたもの
- HI(high-Mach/high-altitude)は、大型のミサイラー(ミサイル運搬機)
参加者全員に発表された結果は、飛行翼に軍配が上がり、従来型のSDM戦闘機は2位となりました。
ミサイラーと安価なミニファイターは分析ではあまり評価されませんでした。
まとめ
1981年、F-22ラプターの始まりとなる、ATF(Advanced Tactical Fighter:先進戦術戦闘機)プログラムが正式に始まりました。
ここでは、ATF(先進戦術戦闘機)の研究で明らかになっていった4つの性能要件(ステルス、スピード、機動性、STOL/STOVL/VTR)について以下の項目で説明しました。
- ステルス性
- ステルスの意味:広義と狭義
- 探知を回避する(見つからないようにする)技術の進化
- ゼネラル・ダイナミクス社のレーダー測定施設
- ゼネラル・ダイナミクス社のステルス性を持つ設計コンセプト
- スピード
- 機動性
- STOL/STOVL/VTOL
- ステルス性、スピード、操縦性の統合への挑戦
- ステルス性を確保するために必要な武器を内蔵
- 操縦性の要求
- ATF(新型戦闘機)の提案(アイディア)
- ロッキード社の回答(アイディア)
- ボーイング社の回答(アイディア)
- ゼネラル・ダイナミクス社の回答(アイディア)