航空機関連のWebサイト「博士による写真で見る軍用機と関連技術」を立ち上げました。
F-35ライトニングIIの情報は、以下をご参照ください。
F-35Aは2017年度から三沢基地に航空自衛隊にも導入されている最新鋭のステルス戦闘機です。
ステルスというと角ばったF-117ナイトホークのイメージでしたが、現在のステルス機は丸味を帯びた形状で、その運用方法も変わっているようなので、F-35について調べてみました。
F-35は高いステルス性能のほかこれまでの戦闘機から格段に進化したシステムを持つ第5世代の戦闘機です。
F-22は1タイプですが、空軍用にF-35A、海兵隊用にF-35B、海軍様にF-35Cと3タイプあるのでその違いをまとめています。
F-35A、F-35B、F-35Cの違い
F-35は、ロッキード・マーティン社(ノースロップ・グラマンとBAEシステムズ)で製造される第5世代の戦闘機(ステルス)で、F-35A、F-35B、F-35Cの3タイプがあります。
この記事の資料は、主にロッキード・マーティン社のF-35のWebページ及び「F-35 Brochure(チラシ)」の情報を元にしています。
F-35のキャッチコピー
F-35のキャッチコピーは、この戦闘機の特長をよく表していると思います。(日本語に訳すと今一つピンとこないのですが)
F-35 Lightning II
The World’s Most Advanced Fighter
Lethal. Survivable. Connected.
日本語では次の様なイメージでしょうか。キーワードはコネクテッドではないかと思います。
F-35 ライトニングII
世界で最も先進的なF-35A戦闘機
リーサル、サバイバル、コネクテッド
以下、補足します。
- リーサルは、現時点では最終兵器や究極のような意味合いだと思います。
- サバイバルは、残存性のこと。
- コネクテッドは、F-35が自分以外の様々な種類の戦闘機や母艦、基地などと情報ネットワークを構成し、センサー情報なども利用できるという意味合いだと思います。
以下、F-35A、B、Cにも共通するF-35A特長、F-35B、F-35Cの特長に分けて説明します。
キャッチコピー はかせの解釈
F-35s(シリーズ)のキャッチコピーを作ってみました。
標準タイプが空軍のF-35A
垂直離着陸可能な海兵隊のF-35B
艦載機で頑丈で翼を折れる海軍のF-35C
そして、ステルス犠牲に火力アップのBeast Mode(ビーストモード)
F-35A:空軍(F-35共通の強み)
F-35の特長は、
The World’s Most Advanced Fighter
(世界で最も先進的なF-35A戦闘機)
に集約されます。
キーワードは、Lethal. Survivable. Connected.
特に「Connected.」が、現代が情報戦であることの特長を表していると考えています。
自軍のあらゆる情報(センサー、航空機、基地、艦船、衛星情報など)をつなげることで、相手に見つかる前に相手を発見して撃墜するイメージだと考えています。
F-35Aの機体形状
下図は、F-35Aの写真です。機体上面及び下面とも突起物の少ない形状であり、ステルス機に特有の翼形状(翼端の角が落ちている)を確認できます。
F-35は、エンジンは1基ですが、吸気口は左右に1つづつあります。
図1 F-35A:記念フライト(Commemoration flight)
引用先:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>から。
圧倒的な航空戦力を提供
第5世代戦闘機のF-35は、今後数十年にわたって航空優位性を維持するために重要な役割を果たすことができます。
F-35は、世界で最もリーサルで、生存率が高く、ネットワークへの接続性に優れた戦闘機であり、パイロットはどのような敵に対しても優位に立ち、任務を遂行して安全に帰還することができます。
第5世代マルチロール・ステルス・ファイター
第5世代の能力は、超音速、長距離、高機動性の戦闘機である上に、超低観測(ステルス)性、高度な(複数の)センサー、情報融合やネットワーク接続性の組み合わせによって定義されています。
情報融合:information fusion
F-35は、最新かつ高度な技術により、従来の戦闘機では実現できなかった新しいミッションを含め、あらゆるミッションを成功に導くことがマルチロール戦闘機です。
これまでの戦闘機以上に、データを収集・分析・共有することができるF-35の能力は、空中や地上などの全ての基盤を強化した戦力増強を図ることができます。
リーサル、サバイバル、コネクテッド
第5世代戦闘機のF-35は、超音速、長距離、機動性の高い戦闘機に加え、超低観測性ステルス、先進のセンサー、情報融合、ネットワーク接続機能を搭載しています。
敵からは見つかりにくい、敵を発見しやすい、利用できる複数の情報を組み合わせて利用する、自機以外の様々な情報ネットワークに接続できるのがF-35です。
世界で最もリーサル(最終兵器のような意味かと思います)で、生存率が高く、接続性に優れた戦闘機であり、パイロットはどんな敵に対しても優位に立つことができ、任務を遂行して安全に帰還することができます。
F-35は、それぞれの異なる環境(米国の空軍、海兵隊、海軍)で運用するために独自に設計されていますが、3つのバリエーションはすべて、ネットワーク対応のミッションシステム、センサーフュージョン、およびサポート性において新たな基準を設定しています。
F-35はマルチロール戦闘機を再定義する、これからの新しいマルチロール戦闘機です。
下図は、ABMS(Advanced Battle Management System)のイメージです。
図2 ABMS(Advanced Battle Management System)コンセプト
引用先:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>から。
- KC-46 Pegasusに搭載された通信ポッドにより、F-35ライトニングIIとF-22ラプターが接続され、瞬時に最新情報を受信・送信し、戦闘員が意思決定の優位性を維持できるようにします。
- このコンセプトは、Advanced Battle Management Systemのフレームワークの下でCapability Release #1として知られています。
- ABMSは、センサーから射手、空、陸、海、宇宙、サイバースペースの5つの戦闘領域すべてにおいて、米軍のすべての要素をデジタル接続する国防総省の取り組みである統合全領域指揮統制(CJADC2)に米国空軍が寄与するものです。
F-35B:海兵隊
F-35Bの特長の1つは、ハリアーIIの後継機として海兵隊で運用されることです。次のキャッチコピーは、その特長をうまく表していると思います。
The World’s First Supersonic STOVL Aircraft
(世界初の超音速STOVL機)
世界で唯一の超音速・短距離離陸/垂直着陸(STOVL)・ステルス機
航空史上初めて、超音速でレーダーを回避するステルス機が、短距離離陸/垂直着陸(STOVL)能力を備えました。
F-35Bは、他に類を見ない柔軟な着地と高度なネットワーク対応のミッションシステムを備えており、作戦のスペクトルにわたって前例のないマルチミッション能力を提供し、戦場の他の部隊にとって不可欠なイネーブラー(サポート部隊)となっています。
下図のコックピット後方のハッチが空いている部分は、STOVLによる推力を産んでいる部分です。
図3 F-35B:STOVL(Short Take-Off and Vertical Landing)
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
地上でも、空でも、海上でもF-35は運用できます。
STOVL能力は、F-35Bに様々な艦船、道路、最前線の戦闘地域に近い厳しい基地から運用するユニークな能力を与え、出撃率を大幅に向上させます。
F-35Bの比類のない基地は、陸上と海上を問わず、どのようなシナリオにおいても、より多くの雇用の柔軟性を提供しています。
ヘリコプターの様な運用ができるステルス戦闘機とも言えます。
シャフト駆動型リフトファン
STOVLの運転は、特許取得済みのシャフト駆動のLiftFan®推進システムによって可能になります。
下図では、機体後端部のノズルが下方に向いていることを確認できます。
図4 F-35B:スキージャンプ
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
F-35C:海軍(艦載機)
F-35Cの特長は、空母の艦載機です。
第5世代の能力をキャリアに
(Bringing 5th Generation Capability to the Carrier)
世界で唯一の第5世代の輸送機(キャリア)
米国海軍航空史上初めて、空母にレーダーを回避できるステルス機能を持つ艦載機が配備されました。
ステルス技術、高度なセンサー、超音速、武器能力、優れた射程距離を備えたF-35は、これまでの空母甲板で運用されてきた中で最も先進的な戦闘機です。
艦載機は空母への着艦、発艦時に機体に大きな負荷がかかります。着艦時は着陸というよりは激突に近い衝撃が脚部や機体にかかります。
下図は、主翼を情報に90度折り曲げた状態で、艦載機の特長の1つです。F-35Cは主翼が大きくなっていますが、主翼折りたたむことで空母格納時にスペースをかせぐことができます。
図5-1 F-35C:甲板での駐機
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
下図は、空母の格納庫内を移動中と推測してます。
人と比べるとずいぶん大きく見えます。脚も頑丈そうです。
図5-2 F-35C:空母の格納庫内
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
図6 F-35C:発艦
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
下図は着艦時で、アレスティング・フックが機体後端から延びているのが分かります。
空母での着艦時には速度を落としてはいますが限界があるため、甲板に設置されたアレスティング・ワイヤーにひっかけて機体を止めています。
図7 F-35C:着艦
引用先:USN(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から。
耐久性のある(頑丈な)ステルス機
F-35Cは、過去の航空機から学んだ教訓と技術的なブレークスルーを組み合わせており、最も過酷な艦載機として艦上にある場合であっても、最小限のメンテナンスでステルス効果を維持することができます。
F-35Cは、最も手ごわい脅威環境を生き延び、空中でも地表でも敵を圧倒する能力を備えた戦闘機です。
F-35A・B・Cの仕様一覧
F-35の主な仕様(2021.1.5現在)について下表に示します。
主な違いは、以下の通りです。
- F-35Aのみ機関砲を装備し、近接戦闘などでの最大荷重が大きい。
- F-35Bは、短距離離陸/垂直着陸(STOVL)可能
- F-35Cは、艦載機で翼面積が大きい。
一般的な話ですが、航空機の場合には機体の重量意外に搭載できる重さや容積が限られています。このため、運用に応じ適切な武装や燃料(増槽)を選択・装備しています。
簡単に言えば、重過ぎれば離陸できませんし、離陸できても着陸(着艦)できる重量に制限があれば使っていない武装を投棄しないと、着陸(発艦)時の衝撃で機体が壊れることもあるということです。
機種 | F-35A | F-35B | F-35C |
---|---|---|---|
導入先(米国) | USAF(空軍) | USMC(海兵隊) | USN(海軍) |
全長 | 15.7 m | 15.6 m | 15.7 m |
全高 | 4.38 m | 4.36 m | 4.48 m |
全幅 | 10.7 m | 10.7 m | 13.1 m |
翼面積 | 42.7 m^2 | 42.7 m^2 | 62.1 m^2 |
水平尾翼幅 | 6.86 m | 6.65 m | 8.02 m |
機体重量 | 13290 kg | 14651 kg | 15785 kg |
機内燃料重量 | 8278 kg | 6125 kg | 8960 kg |
武装積載量 | 8160 kg | 6800 kg | 8160kg |
標準武装 | 25 mm 機関砲 GAU-22/A | - | - |
AIM-120C/D 空対空ミサイル 2発 | |||
2000ポンドJDAM誘導爆弾 2発 | 1000ポンドJDAM誘導爆弾 2発 | 2000ポンドJDAM誘導爆弾 2発 | |
最大離陸重量 | 31700 kg クラス | 27200 kg クラス | 31700 kg クラス |
エンジン | F135-PW-100 | F135-PW-600 | F135-PW-100 |
最大推力(アフターバーナー) | 178 kN | ||
ドライ推力(アフターバーナーなし) | 111 kN | ||
- | 180 kn (垂直) | - | |
最大速度 | マッハ1.6 (~1931 km/h) | ||
作戦行動範囲 | 1093 km | 833 km | 1100 km |
航続距離 | 2200 km | 1667 km | 2200 km |
最大荷重 | 9.0 g | 7.0 g | 7.5 g |
GBU-12 レーザー誘導爆弾
下図は、レーザー誘導爆弾GBU-12を投下した時の写真です。
F-35では通常、ミサイルや爆弾は機体内のウェポンベイに収納されています。
図8 F-35A:GBU-12 レーザー誘導爆弾投下
引用先:HILL AIR FORCE BASE(米国HILL空軍基地)のWebサイト<HOME > NEWS > PHOTOS>から。
F-35の空中給油
F-35はもちろん空中給油にも対応しています。
下図は、KC-135R Stratotankerから空中給油をするF-35Aです。
- 給油口のカバーが開いています。
図9 F-35Aの空中給油
引用先:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>から。
F-35のビーストモード
F-35のステルス性を犠牲にして火力を増強(たくさんミサイルを搭載)するビーストモード(Beast Mode)というのがあります。
ビーストモードとは、F-35の左右の主翼下に各3個づつミサイル等の取り付け部を追加するもので、通常機体内のウェポンベイに搭載と比べると4倍の火力となるようです。
AIR EDUCATION AND TRAINING COMMANDのNEWSにF-35Aの訓練でビーストモードのF-35Aの写真(図8~10)がありましたので紹介します。
出典:AIR EDUCATION AND TRAINING COMMANDのHOME > NEWSの「63rd FS implements Beast Mode weapons configuration on F-35A」より(トリミングしています)。
図10-1 F-35Aビーストモード
図10-2 F-35Aビーストモードでタキシング中
図10-3 F-35Aビーストモードで飛行中
英国海軍のF-35でビーストモードのニュース記事がありました。リンクは以下の通りです。
参考:写真の引用先について
F-35の写真の詳細は、それぞれキャプションをつけていますが、リンク先をまとめておきます。
今回、米国の空運・海軍・海兵隊や米軍三沢基地、空自の三沢基地などでF-35の写真を探しましたが、自衛隊と米軍とでは同じ広報でも写真の扱いが大きく違うことに改めて気づきました。
何のために何を公開するのだとか、考え方も違えば、そのための人員についても違うのではないでしょうか。自衛隊は比べていませんが、陸・海・空でも違いがあるのかもしれません。
三沢基地(米軍と空自)
航空自衛隊三沢基地のWebサイトが、2020年4月1日にリニューアルされていました。
米軍三沢基地はこちらです。
米国空軍(USAF)
Home > News > Photos Air Force Photos
米国海兵隊(USMC)
Home > Photos Explore Photos
米国海軍(USN)
HOME > Resources Photo Gallery
航空自衛隊のF-35Aの主要諸元
航空自衛隊のF-35Aは、ミサイルが国産等の違いがあります。
- 全長:15.6 m
- 全幅:10.7 m
- 全高:4.4 m
- エンジン:F135-PW-100 1基
- 最大速度:マッハ約1.6
- 航続距離:約2,200 km
- 武装:
- 25mm機関砲
- 空対空レーダーミサイル
- 空対空赤外線ミサイル
図11 F-35A(航空自衛隊)
出典:航空自衛隊ホームページより(トリミングしています。)
まとめ
F-35は航空自衛隊にも導入されている最新鋭のステルス戦闘機です。
ステルスというと角ばったF-117ナイトホークのイメージでしたが、F-35は丸味を帯びた機体であり、コネクテッドというキーワードに象徴される運用方法も変わっている様なので改めて調べてみました。
ここでは、以下の項目で説明しました。
- F-35A、F-35B、F-35Cの違い
- F-35のキャッチコピー
- キャッチコピー はかせの解釈
- F-35A:空軍(F-35共通の強み)
- F-35Aの機体形状
- 圧倒的な航空戦力を提供
- 第5世代マルチロール・ステルス・ファイター
- リーサル、サバイバル、コネクテッド
- F-35B:海兵隊
- 世界で唯一の超音速・短距離離陸/垂直着陸(STOVL)・ステルス機
- 地上でも、空でも、海上でもF-35は運用できます。
- シャフト駆動型リフトファン
- F-35C:海軍(艦載機)
- 世界で唯一の第5世代の輸送機(キャリア)
- 耐久性のある(頑丈な)ステルス機
- F-35A・B・Cの仕様一覧
- GBU-12 レーザー誘導爆弾
F-35のビーストモード - 参考:写真の引用先について
- 三沢基地(米軍と空自)
- 米国空軍(USAF)
- 米国海兵隊(USMC)
- 米国海軍(USN)
- 航空自衛隊のF-35Aの主要諸元