B-1A:後にB-1B Lancerとなるマッハ2超えの戦略爆撃機

2021年現在、米国の戦略爆撃機は、B-52H Stratofortress、可変翼のB-1B Lancer、ステルスで無尾翼のB-2、さらに最新型のB-21の開発が進んでいます。

B-1B Lancerは、珍しい可変翼(トップガンで有名なF-14トムキャットも可変翼です)の戦略爆撃機です。このB-1Bの元になったのがB-1Aで、外観上はほとんど違いが分かりません。

ここでは、B-1Aは、B-52の後継機、長距離・高速(マッハ2.2)の戦略爆撃機として試作され、後にB-1B LancerとなるB-1Aについて、主にNASAのWebサイトからの情報を元に説明します。

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B-1AとB-1B Lancerの違い

1970年代、B-1Aは、B-52の後継機、長距離・高速(マッハ2.2)の戦略爆撃機として、4機の試作機が開発されました。

この計画は、生産に入る前の1977年に中止されましたが、飛行試験は1981年まで続けられています。

製造会社は、ノースアメリカン・ロックウェル社から、ロックウェル・インターナショナル社、そして現在ボーイング社となっています。

B-1AとB-1Bの違いは、外観からはほとんど分かりません。

機能的には、最高速度の要求が下げられた(といっても音速超えです)ことにより、空気取り入れ口が可変式のB-1Aはマッハ2.2、固定式となったB-1Bではマッハ1.25となっています。

写真で見るB-1Aの特徴

B-1Aについて、まずは写真で見ていきます。

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

なお、B-52からB-1Bまでの戦略爆撃機の開発経緯については、別の機会に紹介します。

写真で見る製作中のB-1A

B-1Aの主要部と使用されている材料が示されています。

B-1Aの構成:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A construction materials drawing for Air Vehicle No. #1 (from Feb. 12, 1974).

図1 B-1Aの構成:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

下図は、製作中のB-1Aです。

モノクロのせいもありますが、時代を感じさせる1枚です。

B-1Aの機体と写真右下の人とを比べるとその大きさが分かるかと思います。

製造中のB-1A:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A under construction. (U.S. Air Force photo)

図2 製造中のB-1A:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

下図は、試験中のB-1AでF-111(こちらも可変翼)との試験の1コマです。

F-111とB-1A:B-1A & F-111

Rockwell International B-1A takeoff with F-111 chase plane. This was the second flight of the B-1A on Jan. 23, 1975. (U.S. Air Force photo)

図3 F-111とB-1A:B-1A & F-111

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

写真で見るB-1A試作機の機体形状

B-1Aの写真では、機体色は白色の場合が多いのですが、迷彩色もあります。

下図は、B-1Aの主翼を広げた状態で、機首から主翼のある胴体中央部、そして胴体後方へと滑らかな機体形状であることが分かります。

機首左右の小さな補助翼(フロントウィング)を確認できます。

図4 B-1Aを上方から:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A during the B-1B flight test program. (U.S. Air Force photo)

図4 B-1Aを上方から:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

B-1Aを側面から見ると(下図参照)、胴体と主翼が滑らかにつながった形状であることが分かります。

垂直尾翼と水平尾翼との位置関係にも特徴があります。

B-1Aを横から:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A (S/N 74-160) in flight. (U.S. Air Force photo)

図5 B-1Aを横から:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

下図の主翼後部側にある高揚力装置の大きさが分かります。

B-1Aを前方から:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A. Note the test nose probe — Elephant Ears located above “Air” in the U.S. Air Force stencil — and the long nose gear drag strut. (U.S. Air Force photo)

図6 B-1Aを前方から:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

下図から、計4基のエンジンが、2基づつ搭載されていることが分かります。

また、機体下面がエンジンを除きフラットなことも分かります。

B-1Aを下方から:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A during the B-1B flight test program. (U.S. Air Force photo)

図7 B-1Aを下方から:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

写真で見るB-1A試作機の特徴

B-1Aの主翼を前方に移動させた(主翼幅を広げた)状態です。

離着陸の際にこの状態になりますが、高機動時などの場合にも主翼の後退角度は変化します。

B-1B Lancerの主翼が前方(低速時)の位置:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A (S/N 76-174) in flight with wings extended (25-degree sweep position). (U.S. Air Force photo)

図8 B-1B Lancerの主翼が前方(低速時)の位置:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

B-1Aの主翼を後方に下げた(主翼幅を狭めた)状態です。

高速時にこの状態になります。

機体が珍しく迷彩色で塗装されています。

B-1B Lancerの主翼が後方(高速時)の位置:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A in flight with camouflaged paint scheme. (U.S. Air Force photo)

図9 B-1B Lancerの主翼が後方(高速時)の位置:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

B-1Aの最高速度はM2.2です。この速度を達成するために、空気取り入れ口が可変式となっています。具体的にどのように動くのかは分からなかったのですが、F-15の例を見ると、単に空気取り入れ口の形状が変わるだけでなく、衝撃波対策などのため複雑なシステムとなっているようです、

なお、後にB-1Bでは、最高速度がM1.2となったことで、空気取り入れ口が固定式に変更されています。

B-1Aの空気取り入れ口:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A (S/N 74-160, the third B-1A built). (U.S. Air Force photo)

図10 B-1Aの空気取り入れ口:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

下図の通り、もちろん空中給油も可能です。

空中給油は、機首の両側にあるフロントウィングが効果を発揮するケースの1つです。

B-1Aの空中給油:Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A (S/N 74-0159) is refueled by Boeing KC-135A (S/N 62-3527) during the B-1B flight test program. (U.S. Air Force photo)

図11 B-1Aの空中給油:Rockwell International B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

新型戦略爆撃機について(NASA HISTORYから)

ここでは、NASAのWebサイトにあるNASA HISTORYの情報から、B-1Aに関する部分を紹介します。

なお、正確な内容を確認したい場合には、NASA HISTORYをご確認ください。

Quest for Performance: The Evolution of Modern Aircraft

Part II: THE JET AGE
Chapter 12: Jet Bomber and Attack Aircraft 
Search for a New Strategic Bomber

B-1Aへの要求:超音速での巡航

B-1Aには、亜音速およびマッハ2.2の超音速での高効率巡航飛行が求められていました。

はかせ
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高効率巡航飛行とは、アフターバーナーで一時的に超音速の飛行ができるだけでなく、超音速での長距離飛行ができることです。

その他にも、次の様な要求が求められており、ロックウェル社の提案では、可変翼を組み込むことで、次の様な要求を満たせるようになっていました。

  • 音速に近い速度での低空侵入能力
  • 地上での脆弱性を軽減し、SAC(Strategic Air Command)の大規模な基地以外の飛行場でも運用できるように、離着陸場の長さを短くすること

B-1Aの初飛行から開発中止

1974年12月、B-1Aの試作機が初飛行をしています。

Rockwell International B-1A

Rockwell International B-1A during the B-1B flight test program. (U.S. Air Force photo)

図12 B-1A

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像

1979年までに4機の試作機が作られ、4機目は電子システムを搭載した完全な運用機となりました。

しかし、B-1Aの生産計画は、カーター政権1年目の1977年6月に中止されています。

中止の理由は、B-1Aのコストが高いことと、敵の防衛線を突破する能力に疑問が残っていたことと言われています。

B-1プログラムの復活とB-1B誕生

その後、レーガン政権の初年度にB-1プログラムが復活し、よりシンプルで低コストのバージョンの生産が計画されました。これが、B-1Bです。

B-1Bでは、マッハ2.2の超音速巡航の必要性がなくなり、最高速度は高高度でのマッハ数1.2程度となっています。

B-1B計画は再開されたことは、21世紀に入っても米国の軍事力の最前線で重要な役割を果たすことが確実になったということでもあります。

B-1Bの詳細については、以下の記事をご参照ください。

戦略爆撃機:B-1B Lancer可変翼ステルスの長距離多目的超音速爆撃機
2021年米国の戦略爆撃機は、B-52H、可変翼のB-1B、無尾翼のB-2、さらに最新型のB-21が開発中です。B-1B Lancerは珍しい可変翼機で様々な誘導・無誘導武器を大量に搭載可能かつステルス性にも優れています。米国空軍とボーイング社の情報から紹介します。

B-1Aの特徴:可変翼と主翼の高揚力装置

B-1Aの特徴は、可変翼であることです。

可変翼の角度は、67.5度~15度で、対応するアスペクト比は3.13と9.85です。

B-52の35度に対し、B-1Aは15度であり、主翼の前縁と後縁の高揚力装置と相まって、短距離での離着力に貢献しています。

B-1Aの主翼を全身させた(広げた)場合と後退させた(閉じた)場合

B-1Aの主翼を全身させた(広げた)場合と後退させた(閉じた)場合

図13 B-1Aの主翼を全身させた(広げた)場合と後退させた(閉じた)場合

 

B-1の主翼前縁と後縁の高揚力装置(左:B-1B、右:B-1A)

B-1の主翼前縁と後縁の高揚力装置(左:B-1B、右:B-1A)

図14 B-1の主翼前縁と後縁の高揚力装置(左:B-1B、右:B-1A)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)

出典(右側):NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像(加工しています)

B-1Aの特徴:可変式の空気取り入れ口

B-1Aでは、超音速飛行の要求のため、可変式の空気取り入れ口となっています。

可変空気取り入れ口の例としては、他にF-14F-15があります。マッハ2程度を狙ってくると必要な機能なのでしょうが、当然部品数も増え複雑な構造になります。

B-1Aの可変式空気取入口

B-1Aの可変式空気取入口

図15 B-1Aの可変式空気取入口

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像(加工しています。)

B-1Aの特徴:機体形状(ブレンデッド・ウィイング・ボディ)

翼と胴体が滑らかに結合されたブレンデッド・ウィイング・ボディの様子が分かります。

B-1Aの機体形状(ブレンデッド・ウィイング・ボディ)

Rockwell International B-1A during B-1B flight testing program. (U.S. Air Force photo)

図16 B-1Aの機体形状(ブレンデッド・ウィイング・ボディ)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像(トリミングしています)

B-1Aの特徴:機首にあるフロントウィング

航空機の機首の両側にある小さな翼には、突風などによる機種の振動を空力的に減衰させる効果があり、低高度高速侵入ミッションなどで機体の姿勢が乱れる場合の乗員の疲労を軽減すると共に、武器運搬の精度(爆弾やミサイルなどの発射精度)が向上しました。

B-1A機首のフロントウィング(空中給油)

Rockwell International B-1A (S/N 74-0159) is refueled by Boeing KC-135A (S/N 62-3527) during the B-1B flight test program. (U.S. Air Force photo)

図17 B-1A機首のフロントウィング(空中給油)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(TM)(米国空軍)のWebサイト<HOME > UPCOMING > PHOTOS>からの画像(トリミングしています)

B-1Aの特徴:操縦装置

B-IAの通常の乗組員は、パイロット、副操縦士、攻撃システム・オペレーター、防御システム・オペレーターで構成されています。

従来の大型機とは異なり、パイロットには従来の操縦ハンドルの代わりに戦闘機用の操縦桿が装備されています。

パワーアクチュエーターによる操縦システムは、軽い操舵力と素早い反応特性を持つように調整されています。

B-1Aの特徴:脱出装置

最初の3機の試作機では、乗員の脱出が必要になった場合、乗員室全体をパラシュートで脱出・下降させることができました。

その後、機体コスト削減のため、4号機では個別の射出座席が設けられ、以降の機体ではこのタイプの脱出装置が採用されています。

B-1Aの特徴:搭載できる装備

B-1には銃は搭載されていませんが、電子戦用の装備は充実しています。

内部の3つのウェポン・ベイには、さまざまな種類の核および通常兵器を搭載できます。

さらに、外部兵器を搭載するための設備も備えている。

B-1Aの特徴:視認性(被発見性)

B-1のレーダー・シグネチャー(レーダー波による反射映像)は、B-52の約5%に過ぎず、初期の航空機に比べて敵のレーダーからの視認性ははるかに低い。

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まとめ

2021年現在、米国の戦略爆撃機は、B-52H Stratofortress、可変翼のB-1B Lancer、ステルスで無尾翼のB-2、さらに最新型のB-21の開発が進んでいます。

ここでは、B-1Aは、B-52の後継機、長距離・高速(マッハ2.2)の戦略爆撃機として試作され、後にB-1B LancerとなるB-1Aについて、主にNASAのWebサイトからの情報を元に以下の項目で説明しました。

  • B-1AとB-1B Lancerの違い
  • 写真で見るB-1Aの特徴
    • 写真で見る製作中のB-1A
    • 写真で見るB-1A試作機の機体形状
    • 写真で見るB-1A試作機の特徴
  • 新型戦略爆撃機について(NASA HISTORYから)
    • B-1Aへの要求:超音速での巡航
    • B-1Aの初飛行から開発中止
    • B-1プログラムの復活とB-1B誕生
    • B-1Aの特徴:可変翼と主翼の高揚力装置
    • B-1Aの特徴:可変式の空気取り入れ口
    • B-1Aの特徴:機体形状(ブレンデッド・ウィイング・ボディ)
    • B-1Aの特徴:機首にあるフロントウィング
    • B-1Aの特徴:操縦装置
    • B-1Aの特徴:脱出装置
    • B-1Aの特徴:搭載できる装備
    • B-1Aの特徴:視認性(被発見性)
はかせ

振動制御を学ぶことで実験・計測とCAE、モデリングに制御と幅広く学び、出会いとチャンスにも恵まれ工学博士になりました。
CAEが珍しくない今だからこそ、実験やリアルなモノづくり体験が必要だと考えています。

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