FEMを使うために必要な基礎知識:2つの応力、フォン・ミーゼス応力と主応力

製品設計でよく使われるFEM(有限要素法)によるシミュレーションが、応力解析です。

ここでは、応力解析によく出てくる2つの応力、フォン・ミーゼス応力主応力の基本的なことについて説明します。

応力や歪(ひずみ)については、以下の記事をご参照ください。

FEMを使うために必要な基礎知識:応力とは何か
有限要素法(FEM)による解析(シミュレーション)には、工学知識の中でも材料力学の基礎知識が必要です。FEMの解析結果を理解するために必要な応力に関する基本的なことについてまとめています。
FEMを使うために必要な基礎知識:歪(ひずみ)とは何か
FEM(有限要素法)による応力解析に必要なヤング率とポアソン比についての理解を深めるためには、応力と歪(ひずみ)についての理解が必要です。歪(ひずみ)とは何か、縦歪、横歪、ポアソン比、圧縮歪、せん断歪について基礎的な内容をまとめています。

4つの応力(垂直・曲げ・せん断・ねじり)と弾性係数との関係は、以下の記事をご参照ください。

4つの応力(垂直・曲げ・せん断・ねじり)と2つの弾性係数(縦横)
モノづくりの設計では材料を選び、形状を考え(設計)、設計を評価する際には弾性係数や応力を使います。ここでは、連結金具に加わるせん断応力の例、垂直(圧縮、引張)、曲げ、せん断、ねじりの4つの応力、縦と横2つ弾性係数について説明します。
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応力解析で得られる解析結果、変位と応力について

応力解析では、変位と応力の解析結果を得ることができます。

解析結果の変位からは、どの程度変形するか(変形量)が分かります。

これにより、

  • 変形により製品の機能に影響が出ないか
  • 設計範囲(想定した範囲)内に収まっているか

を確認することができます。

解析結果の応力からは、

  • 設計範囲内の応力(許容応力)以下となっているか
  • 弾性範囲に収まっているか

を確認することができます。

ここで弾性範囲について補足します。

弾性範囲とは、下図の青の斜線部分に示す範囲のことで、次の様な特性があります。

  • 弾性範囲内であれば、荷重を取り除くと元の形状に戻る。
  • 弾性範囲を超えると、元の形状に戻らない。つまり、これが変形です。
応力-歪(ひずみ)線図と弾性範囲(設計範囲)

応力-歪(ひずみ)線図と弾性範囲(設計範囲)

図1 応力-歪(ひずみ)線図と弾性範囲(設計範囲)

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応力の考え方(理論)について

ここでは、応力の理論について簡単に説明します。

材料の強度試験では、1軸方向、例えば上下に引張力を加えていき、材料に降伏や破断生じる力を調べます。

しかし、実際の製品では、1軸方向だけでなく、様々な方向に力が発生し、力同様応力も複雑です。

そこで複雑な応力を1軸に置き換えて評価します。

この様に、製品に発生する複雑な応力を一軸に置き換える考え方(理論)は、 「強度理論」 と呼ばれています。

ここでは、以下の3つの強度理論についてその概要を説明します。

  • 最大主応力説
  • 最大せん断応力説(トレスカの説ともいいます)
  • せん断ひずみエネルギー説

最大主応力説

最大主応力説では、部材の内部に発生する応力のうち、最大となる応力(主応力)が材料の強度に達した時、破損を生じると考えます。

主応力には、「大きさ」 と 「方向」 があります。

下図は、FreeCADの最大主応力と最小主応力の表示例です。

最大主応力の表示例

最大主応力の表示例

図2 最大主応力の表示例

最小主応力の表示例

最小主応力の表示例

図3 最小主応力の表示例

最大せん断応力説

最大せん断応力説では、材料に生じる最大せん断応力が、材料の強度に達した時破損を生じると考えます。

材料によっては、他の応力よりせん断応力の方が小さい値でも、破損することがあります。

下図は、FreeCADの最大せん断応力の表示例です。

最大せん断応力の表示例

最大せん断応力の表示例

図4 最大せん断応力の表示例

せん断ひずみエネルギー説

せん断ひずみエネルギー説では、材料に蓄えられる全ひずみエネルギーのうち、体積変化を伴わないせん断ひずみエネルギーが、材料の強度に達した時に破損すると考えます。

せん断ひずみエネルギーに比例する相当応力をフォン・ミーゼス応力といい、主応力のように方向を持たない応力となります。

下図は、FreeCADのフォン・ミーゼス応力の表示例です。

フォン・ミーゼス応力の表示例

フォン・ミーゼス応力の表示例

図5 フォン・ミーゼス応力の表示例

フォン・ミーゼス応力の補足説明

材料が弾性の限界を超えても破壊されず、引き伸ばされる性質をもつ材料を延性材料といいます。

延性材料 の破損は、

「最大せん断応力説」と「せん断ひずみエネルギー説」

で評価します。

「せん断ひずみエネルギー説」は、実験結果との対応(相関)もよいことから、FEMの解析結果を評価する際によく使います。

せん断ひずみエネルギーに比例する相当応力を、フォン・ミーゼス応力といいます。

フォン・ミーゼス応力は、方向を持たない応力となります。

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最大主応力の補足説明

鋳鉄(鋳物)などの脆い(もろい)性質を持つ「脆性材料」は、引張試験から得られる応力ひずみ線図がほぼ直線的で、降伏を示さずに破壊に至ります。

また、次の様な特徴があります。

  • 引張強さと比較して、圧縮強さのほうが大きい
  • ねじり強さは、ほぼ同じ

といった特徴があります。

そのため、脆性材料の解析には、「最大主応力説」が多く用いられています。

最大主応力は、引張応力、最小主応力は圧縮応力となります。

まとめ

ここでは、応力解析によく出てくる2つの応力、フォン・ミーゼス応力、主応力について、以下の項目で説明しました。

  • 応力解析で得られる解析結果、変位と応力について
  • 応力の考え方(理論)について
    • 最大主応力説
    • 最大せん断応力説(トレスカの説)
    • せん断ひずみエネルギー説
    • フォン・ミーゼス応力の補足説明
  • 最大主応力について
はかせ

振動制御を学ぶことで実験・計測とCAE、モデリングに制御と幅広く学び、出会いとチャンスにも恵まれ工学博士になりました。
CAEが珍しくない今だからこそ、実験やリアルなモノづくり体験が必要だと考えています。

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