モノづくりの設計ツールとして3D CADが使われることが珍しくなくなってきました。一昔前の設計ツールは、ドラフターを使い紙に製図でした。大学での実習で鉛筆を削ったり製図用のシャーペンをかったことを思い出します。
その後、製図ソフトウェア(2D CAD)が普及し、図面はデジタルデータになりました。
3D CADになると、図面のデータが3次元になっただけではなく、3Dの形状データによりCAEシミュレーションができるようになりました。3D CADにより新たな付加価値が生まれたとも言えます。
CAEにおけるシミュレーションでは、設計した部品や製品の強度を確認すること(強度設計)が思い浮かびます。
ここでは、3D CADでモノの形を作るだけのモデラーから設計者になるための基礎的な知識として、設計の1つである強度設計(シミュレーション)について、金属バットの変形と応力について説明します。
振動モード形は、ハンマリング試験により実験で比較的簡単に求めることができますが、応力は歪センサを数多く使用した実験となりますので、シミュレーションによるメリットが大きいと考えています。
なお、シミュレーションというメリットの反面、3D CADによる製図は2D CADによる製図に比べ工数がかかります。つまり、3D CADを導入するのであれば、シミュレーションを設計に利用しないと2D CADによる製図よりも実質的に設計時間(どの様な形状にするかなどを考える時間)が短くなることになります。
この辺の話については、以下の記事にまとめていますのでご参照ください。
FreeCADによる変形の表示例
ここでは、金属バットの解析データから変形と応力を表示例について説明します。
変形とはX、Y、Zの3次元での変位量になります。
下図は、変位の絶対値をカラーで表示(コンター)した例です。
- 下図における座標系は、X軸は左右方向、Y軸は上下方向、Z軸は奥行方向になります。
- 変位の大きい部分が赤色になります。
- FreeCADのバーションは、0.18を使用しています。
図1 FreeCADによる変位の絶対値の表示例
以下に、X方向の変位、Y方向の変位、Z方向の変位の表示例を示します。
図2 FreeCADによるX方向の変位の表示例
図3 FreeCADによるY方向の変位の表示例
図4 FreeCADによるZ方向の変位の表示例
図2~図3では、少々分かりにくいので、変位を拡大して表示したのが下図になります。
変位の表示設定では、係数を100にしていますので、表示にチェックを入れてスライドバーを最大(右端)にしたときの100倍で表示した例になります。
図5 FreeCADによるX方向の変位の拡大表示例
図6 FreeCADによるY方向の変位の拡大表示例
図7 FreeCADによるZ方向の変位の拡大表示例
FreeCADによる応力(フォン・ミーゼス応力)の表示例
設計検討の際には、設計形状による変形(変位)量と応力(フォン・ミーゼス応力)を検討します。
以下は、応力(フォン・ミーゼス応力)の表示例です。
図8 FreeCADによるフォン・ミーゼス応力の表示例
上述の変位の場合と同じように、変位を拡大表示すると下図の様になります。
図9 FreeCADによるフォン・ミーゼス応力と変位の拡大表示例
この様に形状を検討と併せて、材料を選択して、実際にはコスト(材料代や加工費)も含めて最終的な設計案に落とし込んでいきます。
3D CADによる設計工数増を補って余りある活用手段
図面を2Dデータから3Dのデータに変えただけでは、3D CADによる図面作成工数が増えるだけです。
しかし、上述のシミュレーションを含め以下の様な付加価値を利用することで設計そのものを改善することができます。
- 3Dモデルによるシミュレーションを使った設計検証(変形量、応力解析)
- シミュレーション結果を含めた設計ノウハウの蓄積と活用
- 3Dモデルの再利用による設計工数の削減
まとめ
3D CADは製図をするだけでは、図面を3D化するための工数が増えるだけでメリットがありません。3Dで作成した設計モデルによるシミュレーションを活用することで、設計工数を減らしたり、設計ノウハウ、設計データの再活用と言ったメリットが生まれます。
ここでは、以下の項目について説明しました。
- FreeCADによる変形の表示例
- FreeCADによる応力(フォン・ミーゼス応力)の表示例
- 3D CADによる設計工数増を補って余りある活用手段