2022年5月に公開された映画トップガン マーヴェリックの主役機は、F/A-18スーパーホーネットです。
1作目はF-14トムキャットでしたから時代を感じます。
「最強の戦闘機は何?」という質問に対し、最高速度やステルス性能などの仕様(数字)で比べることはできますが、そもそも空を飛ぶということは、環境条件(天候)1つとっても様々ですし、相手も飛んでいますし、運用の仕方(戦い方)でも変わってくるものです。
ここでは、現役の代表的な戦闘機として、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35ライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を選び最強の戦闘機について考えてみます。
比較する戦闘機の紹介
この記事では、「戦闘機」と呼んでいますが、多用途(マルチロール)機の意味合いを含め使っています。
比較する、F-15EXイーグルII、F-22ラプター、F-35ライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンについて簡単に紹介します。
私は仕様上の最強の戦闘機はF-22だと思っていますが、最強の戦闘機はF-15EXイーグルIIを推しています。
F-15EXイーグルII
下図が、F-15EXイーグルIIです。
図1 F-15EXイーグルII
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
F-15EXは、F-15のこれからの時代にも適応できるように機体構造から見直されており、外観上はさておき中身は従来のF-15と比べて別物です。
F-15EXイーグルIIのキャッチコピー:
More Capability. More Capacity. More Savings.
乱暴な意訳ですが、次の様なイメージでしょうか?
F-15EXイーグルIIは、
F-15の能力を高め、搭載容量を増やし、ライフサイクルコストを抑制
技術的にはマッハ2超えを実現する可変インテークが特徴です。
F-22ラプター
下図が、F-22ラプターです。
図2 F-22ラプター
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
F-22ラプターは、次の特徴を持つおそらく最強のステルス戦闘機です。
- 高いステルス性
- アフターバーナーなしでのスーパークルーズ(超音速巡航)
- STOL(短距離離着陸)が可能
F-22ラプターのキャッチコピー:
F-22ラプターは空を支配:Air Dominance(航空支配)
F-22ラプターは、機体性能云々ではなく、戦い方を変える戦闘機だということだと考えています。
技術的には、2次元スラスト・ベクトル・ノズルが特徴です。
F-35ライトニングII
下図が、F-35ライトニングIIです。
図3 F-35ライトニングII
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
航空自衛隊も導入しているF-35ライトニングIIは、空軍用のF-35A、海兵隊用のF-35B、海軍様のF-35Cと3タイプあります。
- 標準タイプが空軍のF-35A
- 垂直離着陸可能な海兵隊のF-35B
- 艦載機(頑丈で翼を折って格納できる)海軍のF-35C
F-35のキャッチコピーは、この戦闘機の特長をよく表しています(日本語に訳すと今一つピンときませんが)。
F-35ライトニングIIのキャッチコピー:
The World’s Most Advanced Fighter
Lethal. Survivable. Connected.
日本語では次の様なイメージでしょうか。キーワードはコネクテッドと考えています。
世界で最も先進的なF-35A戦闘機
リーサル、サバイバル、コネクテッド
しかも、ステルス機なのに、
ステルス犠牲に火力アップのBeast Mode(ビーストモード)
があったります。
F-16ファイティング・ファルコン
下図が、F-16ファイティング・ファルコンです。
図4 F-16ファイティング・ファルコン
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
戦闘機界のベストセラーがF-16ファイティング・ファルコンです。
戦力は量と質のバランスが重要です。F-15やF-22は高額なので数を揃えるのは現実的ではありません。また、運用上も例えばF-22で全て対応するのは現実的ではありません。
F-14、F-15、F-16の関係も航空戦力の運用視点で見ていくと、F-14は退役し、F-15はイーグルIIとして、F-16は戦闘機界のベストセラーとして現在もバージョンアップしながら運用されている理由が見えてきます。
最新のF-16 Block 70/72のキャッチコピー:
The World’s Newest and Most Advanced Production F-16
世界最新・最新鋭のF-16
相互運用性(同盟国や最新の機体)と先進技術を組み合わせ、
F-16Vをベースにした実績のある設計
最高速度の比較
F-15EX、F-22、F-16、F-35の最高速度を下図に示します。
最高速度を出すためには、空気抵抗が小さい方が有利なので、ステルス機であるF-22の方がF-15EXより有利になるなど、あくまでも最高速度というスペックの比較になります。
図5 最高速度の比較:F-15EX、F-22、F-35、F-16
F-15EX、F-22、F-16、F-35の最高速度と推力を下表に示します。
- F-15EXとF-22:エンジン2基
- F-35とF-16:エンジン1基
機種 | 最高速度 | 推力 |
---|---|---|
F-15EX | マッハ約2.5 | 約10,600kg(1基当たり) |
F-22 |
マッハ2クラス アフターバーナーなしでマッハ1.5(超音速巡航) |
15,876 kg(1基当たり) (2次元スラスト・ベクトル・ノズル付き) |
F-35 | マッハ1.6 | 18,150kg |
F-16 | マッハ2以上 | 13,000 kg |
最高速度はF-15EXが1番ですが、現実的にはアフターバーナーを使った瞬間的な最高速度なので、戦闘機としての最高速度という意味では、F-22のアフターバーナーなしでマッハ1.5が最速ということになると考えています。
アフターバーナーを使うことで最高速度を上げることは可能ですが、燃料消費が非常に大きいこと、燃焼温度も上がるのでエンジン自体へのダメージも大きいことを考えると、アフターバーナーは気軽に使うものではないと考えています。
エンジン回りの特徴として以下の2つがあります。性能向上の引き換えに、複雑な構造となっており、機体価格を上げる一因となっています。
- F-15EXは、マッハ2超えのため可変インテークが搭載されています。
- F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、機動性に貢献しています。
機体重量と推力の比較
戦闘機の運動性能比較の1例として、機体重量と推力を比較します。
単純比較はできませんが、機体と運動性能とには次の様な関係があります。
- 機体重量が同じなら推力が大きい方が運動性能や最高速度は上がる。
- F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルによる運動性能向上は大きい。
- 重量といっても、機体重量、搭載する武装の重量、燃料の重量があり、武装や燃料搭載量に変わる。
F-15EX、F-22、F-16、F-35の機体諸元と推力を下表に示します。
F-15EXとF-22は、エンジン2基を搭載しており、F-35やF-16よりも一回り大きい機体サイズとなっています。
機種 | 機体諸元 | 推力 |
---|---|---|
F-15EX |
全幅:13m 全長:19.44m 全高:5.6m 重量:20,411 kg(Advanced F-15E) |
約10,600kg(1基当たり) |
F-22 |
全幅:13.56 m 全長:18.90 m 全高:5.08 m 重量:19,700 kg |
15,876 kg(1基当たり) (2次元スラスト・ベクトル・ノズル付き) |
F-35A |
全幅:10.7 m 全長:15.7 m 全高:4.38 m 重量:13,290 kg |
18,150 kg |
F-16 |
全幅:9.449 m 全長:15.027 m 全高:5.090 m 重量:9,207 kg |
13,000 kg |
ここで、パワー・ウェイト・レシオで、上表の重量とエンジン推力で比較すると、次の様になります。
なお、F-15EXの重量は、Advanced F-15Eの重量を使っています。
- F-15EX:0.96=20,411/(10,600 x 2)
- F-22:0.62=19,700/(15,876 x 2)
- F-35A:0.73=13,290/18,150
- F-16:0.71=9,207/13,000
パワー・ウェイト・レシオを小さい準備並べると次の様になります。
F-22(0.62)>F-16(0.71)>F-35A(0.73)>F-15EX(0.96)
パワー・ウェイト・レシオが小さい方が加速性能が高くなりますので、この4機種の下では、次の様に考えています。
- F-22の加速性能は圧倒的に優れている。
- 小型のF-16とF-35Aの方が、F-15EXより加速性能に優れている。
さらに比較検討を進めます。
搭載する武装重量を同じとして4機を比べると、
- 機体内に武装を格納できるF-22やF-35Aの方が、機外に搭載するF-15EXやF-16より、武装搭載前後での加速性能の差が小さいことが推測できる。
F-15EX、F-22、F-16、F-35の機体重量のみのパワー・ウェイト・レシオ下図に示します。
図6 パワー・ウェイト・レシオの比較:F-15EX、F-22、F-35、F-16
武装なしの機体重量でのパワー・ウェイト・レシオの比較ですが、次の様に考えています。
- F-22ラプターの加速性能(運動性能)も優れている。ステルスだけではない。
- F-15EXイーグルIIは、パワー・ウェイト・レシオだけではない優位性があるから、最強の戦闘機と言われているのであろう。
まとめ
「最強の戦闘機は何?」という質問に対し、最高速度やステルス性能などであれば仕様(数字)で比べることはできますが、そもそも空を飛ぶということは、環境条件(天候)1つとっても様々ですし、相手も飛んでいますし、運用の仕方(戦い方)でも変わってくるものです。
ここでは、現役の代表的な戦闘機として、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35ライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を選び最強の戦闘機について、以下の項目で説明しました。
- 比較する戦闘機の紹介
- F-15EXイーグルII
- F-22ラプター
- F-35ライトニングII
- F-16ファイティング・ファルコン
- 最高速度の比較
- 機体重量と推力の比較