制御と言うと難しいイメージもあるようですが、制御は身近なところにあり、実際に使われています。
振動制御は、振動対策のために制御を利用するものと考えてよいかと思います。
また、振動制御では、
- 計測とモデリング
- 制御系設計とシミュレーション
- 実験(検証)
が含まれ、大学などの研究テーマで振動制御を選ぶと、これらすべてを自分でやることになるのでモノづくりを学ぶよい機会になったと考えています。
ここでは、振動制御の流れについて説明します。
身近にある制御の例
制御というと難しいイメージがあるようですが、意外に身近なところで使われています。
例えば、
- ビルやマンションの自動ドア
- 人が近づくと開く。解錠すると空く。
- 電車のドア
- ホーム側のドアのみ開く、閉じる。
- 自動車の窓(パワーウィンドウ)
- スイッチ操作で開く。モノが挟まると止まる、下がる。
- 自動車のエンジン、自動変速機、ハイブリッド車のパワーユニットなどは、制御のかたまりです。
- 家庭では
- エアコン、給湯器、お風呂など
振動制御とは
振動というととたんになじみがなくなり、ましてや振動制御となると、「振動制御ってなに?」とさらに分かりにくい、知られていないようです。
意外に振動制御は使われています。
例えば、超高層ビル、横浜のランドマークタワーなどでは、タワーの最上部に制振装置があり、風や地震などによるタワーのゆれを小さくしています。
高層階は眺望等の付加価値が高いのですが、振動からみると低層階よりも大きく揺れるのが高層階です。
ここで制振装置(振動制御)の出番です。アクティブ(積極的に)力を加えることで高層階の揺れを小さくします。
瀬戸大橋などの長大橋でも振動制御は使われています。
長大橋は完成するまでの間、橋を支える橋脚はタワーの様な状態で風や波などの影響で揺れます。この揺れを放置すると橋脚にダメージを与えるので制振装置が使われています。
基本的には長大橋が完成すると不要になりますが、せっかく搭載した制振装置なので完成後も使っていると聞いたことがあります。
振動制御の流れ
振動制御をする場合の流れ(プロセス)について説明します。
- 計測とモデリング
- 制御対象の実測データや設計(構造解析)データから対象物のモデルを作成します。
- 制御系設計とシミュレーション
- どのような制御をするか決めます(制御系設計)。
- 制振装置の設計データや実機から制振装置のモデルを作成します。
- 制御対象と制振装置の制御系設計モデルを作成し、実機でどのように制御するかシミュレーションで確認します。
- 実験(検証)
- 試作実験や実機のデータを確認して設計通りか確認します。
このように書いてみると難しそうなイメージがありますが、様々なツールがありますので、実際の作業はそれほど複雑ではありません。
逆にツールが良くなりすぎて、実際に何をしているか分からずモデリングや制御系設計をしているという弊害もあるようです。
シミュレーションや制御系設計の際にも、計測や実験を意識するように心がけることが必要だと考えています。
制御系設計と制御対象のモデリングについて私見ですが、
- 制御系設計(制御理論)に強い人がモデリングは難しいと言う。
- モデリングをする人は制御理論が難しいと言う。
どちらも聞いたことがありますが、
- 難しくないモデリングもある。
- モデルがあれば制御はかかる。
と考えています。ここで言っているのは、現代制御理論(LQ制御)による制御のことで、モデルがポイントになります。
まとめ
ここでは、身近にある制御と振動制御について、以下の内容を説明しました。
- 身近にある制御の例
- 振動制御とは
- 振動制御の流れ