航空機関連のWebサイト「博士による写真で見る軍用機と関連技術」を立ち上げました。
B-1Bランサーの情報は、以下をご参照ください。
2021年現在、米国の爆撃機は、B-52H Stratofortress、可変翼のB-1B、ステルスで無尾翼のB-2、さらに最新型のB-21の開発が進んでいます。
B-1B Lancerは、珍しい可変翼(トップガンで有名なF-14トムキャットも可変翼です)の戦略爆撃機です。米国空軍の保有する様々な誘導武器と無誘導武器を大量に搭載できるだけでなく、機体はブレンディッド・ウィング・ボディによる胴体設計であり、ステルス性に優れています。
ここでは、可変翼の戦略爆撃機B-1B Lancerについて、主に米国空軍とボーイング社のWebサイトからの情報を元に説明します。
写真で見るB-1B Lancer
まずは、米国空軍のWebサイトからの写真でB-1B Lancerを紹介します。
B-1B Lancerのイメージとサイズ感
B-1B Lancerは戦略爆撃機であるため大型でありながら、ステルス性と航続距離を活かした攻撃機のイメージが強いためか、私は下図がB-1B Lancerのイメージをよく表していると思います。
図1 警戒任務中のB-1B Lancer:Presence patrol
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、B-1B LancerとF/A-18スーパーホーネットの写真です。機体サイズの違いが分かりやすいかと思います。例えばなしですが、レーダーに映るサイズがB-1B LancerとF/A-18スーパーホーネットとで同じ程度だった場合、B-52Hのような戦略爆撃機とは違う運用も可能になってきます。
ステルス性については、F-22やF-35であればレーダーに映らないイメージですが、さすがに戦略爆撃機クラスの大きさになればレーダーに映らないのは現実的ではないようです。しかし、戦略爆撃機が小型機並みの機体サイズでレーダーに映るとなると話はずいぶんと変わってきます。
図2 B-1B LancerとF/A-18スーパーホーネット:Airpower summary
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
写真で見るB-1B Lancerの機体形状
それでは、B-1B Lancerの機体形状を写真で見ていきます。
ステルス性を考慮した機体形状となっています。機首にある補助翼、胴体の主翼部分から尾部にかけての特徴的な形状が分かります。
図3 B-1B Lancerを上方から:March 11 airpower summary: B-1Bs disrupt enemy plans
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-52Hと比べると薄い機体形状、翼と胴体が滑らかに結合されたブレンデッド・ウィイング・ボディの様子が分かります。主翼の全部と後部が下方に下がっていますが、これも特徴の1つです。
図4 B-1B Lancerを側方から:Nov. 30 airpower summary: B-1Bs provide overwatch
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
正面から見ると、主翼や垂直尾翼の薄さがよくわかります。エンジンの空気取り入れ口も横に長い形状となっています。
図5-1 B-1B Lancerを正面から(その1):B-1B adapts, remains effective for 25 years
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図もB-1B Lancerを正面からみた写真です。
インテークが左右2個づつあることが分かります。
図5-2 B-1B Lancerを正面から(その2)
後方から見ると、ブレンデッド・ウィイング・ボディにより、胴体から主翼や尾翼が滑らかにつながっているのがよくわかります。4基のエンジンから大型機であることが分かります。
図6 B-1B Lancerを後方から:B-52, B-1, B-2s participate in first integrated bomber operation in USPACOM AOR
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
機体下面の様子がよくわかります。広げた状態(前方に移動させた状態)です。
機首の補助翼、空気取り入れ口から4基のエンジンを介して排気口までのレイアウトが分かりやすいです。
また、機首から主翼、主翼から胴体尾部まで滑らかなデザインとなっていることが分かります。
図7 B-1B Lancerを下方から:Dec. 3 airpower summary: B-1B bombs enemy in Afghanistan
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
写真で見るB-1B Lancerの特徴
B-1B Lancerの特徴(その1):可変翼(主翼)
B-1Bの外観上の特徴が可変翼です。実用化された可変翼機ではF-14が有名ですが、B-1Bでは高速航行と低速(爆撃時)安定性を両立させるために採用されたようです。
可変翼の移動範囲は、15~67.5度のようです。
図8 B-1B Lancerの主翼が前方(低速時)の位置:Aug. 27 airpower summary: B-1B destroys enemy position
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図9 B-1B Lancerの主翼が後方(高速時)後方の位置:Bomber power
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの特徴(その2):機首の補助翼
機首の左右に小型の補助翼があります。
機首の補助翼は、離着陸、空中給油や一部の高高度兵器などで使われることから、機体の安定性を高める役割があるようです。
操縦席前方中央にあるのが空中給油口です。
図10 B-1B Lancer機首の補助翼(その1):B-1B Lacer conduct training in East China Sea
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
補助翼を横から見た写真です。
図10 B-1B Lancer機首の補助翼(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの特徴(その3):尾翼
垂直・水平尾翼は、ステルス性が考慮された配置となっています。
水平尾翼は、左右の尾翼全体が独立的に可動します。
図11 B-1B Lancerの水平・垂直尾翼:Oct. 7 airpower summary: B-1Bs strike anti-Afghan forces
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの特徴(その4):武器庫(weapon bays)
機体後方から見た武器庫(weapon bays)のハッチが開いた状態です。
様々な武器を機体内に格納することでステルス性を確保しています。
図12 B-1B Lancerの武器庫(weapon bays):Massive bomber overhead
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの特徴(その5):ステルス
B-1B Lancerのステルス性は、F-22やF-35とは意味あいが違ってくると考えています。
F-22やF-35などの戦闘機サイズであればレーダーに映らないイメージがあります。戦略爆撃機クラスの大きさ(旅客機クラス)になるとレーダーに映らないのは現実的ではないようです。しかし、戦略爆撃機が小型機並みの機体サイズでレーダーに映るとなると話はずいぶんと変わってきます。
下図は、電子戦に関する試験の様子です。
図13 B-1B Lancerの電子戦の試験:B-1B Lancer Undergoes Electronic Warfare Testing in the BAF
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの特徴(その6):空中給油
B-1B Lancerの航続距離は大陸間(Intercontinental)ですが、空中給油ができるということは、極論すれば乗員の体力的・精神的限界がくるまで飛び続けることができるということです。
図14 B-1B Lancerの空中給油:140923-F-YQ276-364
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancer
ここからは、B-1B Lancerの特徴や諸元を紹介します。
B-1B Lancerは、米国空軍の保有する誘導武器と無誘導武器の両方を搭載可能で、しかも通常兵器の最大の通常兵器搭載量(ペイロード)を持つ、マルチ・ミッション対応可能な米国の長距離爆撃機部隊の骨幹となっています。
B-1B Lancerの特徴
B-1B Lancerには次の様な特徴があり、長距離、機動性、高速性を実現するとともに、生存率(残存性)を高めています。
- 主翼と胴体の組み合わせ(ブレンディッド・ウィング・ボディ)
- 可変ジオメトリーの主翼
- アフターバーナー付きターボファン・エンジン
その他の特徴を列挙します。
- 機首にある前方翼は、離着陸、空中給油、および一部の高高度兵器使用時に使用します。
- 可変翼は、亜音速および超音速の高速飛行時に主翼が後退するほか、主翼を前方に移動させるとで低高度および高高度領域でのB-1Bの操縦性を向上させています。
- B-1Bの速度と優れた操縦特性により、混成部隊にシームレスに組み込むことができます。
- 大量のペイロード
- 優れたレーダー・ターゲティング・システム(スナイパー・ポッド)
- 長い滞空時間
- 高い生存能力
これらの特徴を備えたB-1B Lancerは、あらゆる統合・複合攻撃部隊の重要な位置を占めています。
B-1B Lancerは非常に汎用性の高いマルチ・ミッション対応システム
B-1B Lancerの合成開口レーダーは、移動する車両を追跡、照準、交戦することができ、自己照準や地形追従モードも備えています。
高精度の全地球測位システムを(GPS:Global Positioning System)搭載した慣性航法システムにより、地上の航法補助装置を使用せずに航行することができ、高い精度で目標を捕捉することができます。
Link-16を備えた完全統合データリンク(FIDL:Fully Integrated Data Link)により、戦場での状況認識力が向上し、見通しのきかない場所での安全な接続を実現しています。
限られた時間の中で、パイロットや乗員は複合航空作戦センター(The Combined Air Operations Center)や他の指揮統制資源(Other Command and Control Assets)から受信したターゲット・データ(目標情報)を使用して、迅速かつ効率的に新たなターゲットを補足・攻撃することができます。
B-1B Lancerの電子戦装備
B-1B Lancerは、次の様な電子線装備により、敵対空域への侵入をサポートする統合された強固な防衛システムを形成しています。
- 自衛用電子妨害装置
- レーダー警告受信機(ALQ-161)
- チャフとフレア・システム
- 曳航式デコイシステム(ALE-50)
また、ALQ-161の対電子戦システムは、敵の脅威となるエミッター(反射波)の全スペクトルを検出・識別し、自動またはオペレーター入力により適切な妨害(ジャミング)を実現しています。
スナイパー・ポッド
スナイパー・ポッド(Sniper Advanced Targeting Pod)は、長距離精密照準システムのことです。
B-1Bの専用装備ではありませんが、空対地の作戦支援において、広範囲のスタンドオフ・レンジから、ターゲットの特定、自律的な追跡、座標生成、精密な武器誘導を行い、B-1の任務を支援します。
図15 スナイパー・ポッド:Eye in the sky
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerの圧倒的なペイロードによる多様な武器の運用
通常兵器に限ってみても、様々な武器(爆弾やミサイル)の大規模な運用が可能です。
諸元に一例を記載していますが、目的に応じ様々な組み合わせで運用することができます。
図16 B-1B Lancerの投下試験:Lancer delivers payload
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図17 B-1B LancerにBomb Unit-31搭載:B-1 Lancers join 379th fleet
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図18 B-1B Lancerの投下試験:Dyess AFB demonstrates B-1B’s upgrades, combat capabilities
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図19 B-1B LancerのJASSM搭載:Dyess AFB demonstrates B-1B’s upgrades, combat capabilities
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
システムのアップグレード
B-1Bシステムや装備をベースに、次の様なアップグレードに対応可能です。
- レーダーの持続性と機能のアップグレードにより、より信頼性の高いシステムとなり、将来的には超高解像度機能と自動ターゲット認識機能を含むようにアップグレードされる可能性がある。
- Link-16とFIDLの追加と、それに伴うコックピットのアップグレードにより、乗員はより柔軟で統合されたコックピット環境を手に入れることができ、B-1は将来の速いペースで進む統合された戦場での運用が可能になる。
- 航空機の信頼性を向上させるために、老朽化してメンテナンスが困難な電子システムの交換。
B-1B Lancerの簡単な歴史
B-1Bのこれまでの開発や運用について簡単に説明します。
1970年代:B-1Aの開発と中止
B-1Aは、B-52の後継機として1970年代に開発されました。
長距離かつ高速(マッハ2.2)の戦略爆撃機として、1970年代半ばに4機の試作機が開発・試験されましたが、生産に入る前の1977年に計画は中止されました。
飛行試験は1981年まで続けられています。
1980年代:B-1Bの開発
B-1Bは、1981年に当時のレーガン政権で開発を開始したB-1Aの改良型です。
B-1Aとの主な変更点は、次の通りです。
- 積載量を33,565kg増やすための構造変更
- レーダーの改良
- レーダー断面積の桁違いの縮小
このレーダー断面積(RCS:radar cross section)低減の一環として、空気取り入れ口(インレット)形状が大幅に変更され、最高速度はマッハ1.2に低下しています。
1984年10月、量産型B-1B初飛行。
1985年6月、B-1B初号機納。
1986年10月1日、初期運用能力を獲得。
1988年5月2日、最後のB-1B納入。
1990年代:B-1Bの核ミッション廃止
米国は1994年にB-1の核ミッション(nuclear mission)を廃止しました。
2000年代:通常兵器への転換
米国空軍は核戦力を維持するための資金を一切使いませんでしたが、B-1Bは2007年まで核武装した重爆撃機とみなされていました。
2007年11月、旧START条約により通常兵器への転換開始。
2011年3月、新START条約により2011年3月に通常兵器への転換完了。
通常兵器への転換は、次の様に進められました。
- 1つ目は、B-1Bのパイロンアタッチメントの後部に金属製の円筒形スリーブを溶接することで、B-1Bに空中発射巡航ミサイルのパイロンを取り付けることができなくなった。
- 2つ目は、B-1Bの各ウェポンベイにある2つの核武装専用ケーブルコネクタが取り外され、プレアーム信号(アーミングできなくなった)が兵器に届かなくなった。
B-1Bの保有する世界記録
B-1Bは、速度、積載量、航続距離、上昇時間など、同クラスの世界記録を50近く保持している。
全米航空協会(The National Aeronautic Association)は、B-1Bは1994年の最も記憶に残る10の記録飛行の1つを達成したと評価しています。
最新の記録は2004年に公式に発表されました。
B-1B Lancerの諸元
B-1B Lancerは、1985年から米国空軍で運用されているボーイング社の長距離多目的超音速通常爆撃機(いわゆるマルチロールの戦略爆撃機)です。
ボーイング社のWebサイトの情報からB-1B Lancerのアップグレード版の特徴を紹介します。
- 統合バトルステーション:最新の近代化プログラムである統合バトルステーション。新しい乗務員用カラー多機能ディスプレイ、診断システム、デジタル・アビオニクス・インフラストラクチャ。
- 巨大なペイロード(TREMENDOUS PAYROAD):最大34,019 kgの多種多様な武器を武器庫に収納することができます。
-
ワールドクラスのデザイン:この機体は1976年に名誉あるコリアー・トロフィーを受賞しました。現在、このクラスの航続距離、速度、積載量、上昇時間で100の世界記録を保持しています。
- 高速で長距離:B-1Bは世界中に移動できます。
主要諸元を下表に示します。
全長 | 44.5 m |
---|---|
全高 | 10.4 m |
全幅(翼幅) | 最大:41.8 m、最小:24.1 m |
エンジン |
|
重量 | 86,183 kg |
最大離陸重量 | 216,634 kg |
燃料搭載容量 | 120,326 kg |
ペイロード | 34,019 kg(機体内) |
速度 | 1,448 km/h(海面上でマッハ1.2) |
航続距離 | 大陸間(Intercontinental) |
巡行高度 | 9,144 m以上 |
武装 |
|
乗員 |
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参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報を知りたい場合には、以下の情報をご参照ください。
- BOEING社のB-1Bの紹介ページ
- USAF(米国空軍)のB-1Bの紹介ページ
まとめ
2021年現在、米国の爆撃機は、B-52H Stratofortress、可変翼のB-1B、ステルスで無尾翼のB-2、さらに最新型のB-21の開発が進んでいます。
B-1B Lancerは、珍しい可変翼の戦略爆撃機で、米国空軍の保有する様々な誘導武器と無誘導武器を大量に搭載できるだけでなく、ステルス性にも優れています。
ここでは、可変翼の戦略爆撃機B-1B Lancerについて、主に米国空軍とボーイング社のWebサイトからの情報から以下の項目で説明しました。
- 写真で見るB-1B Lancer
- B-1B Lancerのイメージとサイズ感
- 写真で見るB-1B Lancerの機体形状
- 写真で見るB-1B Lancerの特徴
- B-1B Lancerの特徴(その1):可変翼(主翼)
- B-1B Lancerの特徴(その2):機首の補助翼
- B-1B Lancerの特徴(その3):尾翼
- B-1B Lancerの特徴(その4):武器庫(weapon bays)
- B-1B Lancerの特徴(その5):ステルス
- B-1B Lancerの特徴(その6):空中給油
- B-1B Lancer
- B-1B Lancerの特徴
- B-1B Lancerは非常に汎用性の高いマルチ・ミッション対応システム
- B-1B Lancerの電子戦装備
- スナイパー・ポッド
- B-1B Lancerの圧倒的なペイロードによる多様な武器の運用
- システムのアップグレード
- B-1B Lancerの簡単な歴史1970年代:B-1Aの開発と中止
- 1980年代:B-1Bの開発
- 1990年代:B-1Bの核ミッション廃止
- 2000年代:通常兵器への転換
- B-1Bの保有する世界記録
- B-1B Lancerの諸元
- 参考リンク