2022年12月2日(米国時間)、開発中のB-21 Raiderが一般公開されました。
B-21 Raiderは、米国空軍の爆撃機部隊の骨幹となるステルス性を備えた最新の長距離攻撃爆撃機です。
米国空軍のWebサイトで公開されたB-21 Raiderの情報を主に、既存の戦略爆撃機と比べながら説明します。
2022年12月、B-21 Raider一般公開
2022年12月2日、(米国時間)予告されていた通り、開発中の米国空軍の長距離攻撃型爆撃機(long-range strike bomber)B-21 Raiderが一般公開されました。
長距離攻撃型爆撃機の攻撃のため必要なのが、B-2を発展させたステルス性であり、戦闘機であればF-22の様なシステム更新だと考えています。
1つ前の戦略爆撃機はB-2なので、じつに30年以上の時を越えての新型機です。
大きさが分かりにくいのですが、B-2 Spritと同じと仮定すると、B-2 Spritの全幅が52.12 m、全高5.1 mとかなりの大きさです。
図1 B-21 Raider:2022年12月2日初公開(その1)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
公開されたB-21 Raiderは、開発中の6機のうちの1機です。
機体形状はB-2をリファインした感じですが、ノースロップ・グラマン社のWebサイトの記事では、「第6世代(Sixth Generation)」として紹介されており、F-22ラプターが第5世代と呼ばれるように、中身は全く別物になっているようです。
B-21 Raiderの設計・開発では、オープン・システム・アーキテクチャで設計され、フル・デジタル・モデルが使われているとのことなので、製造を含めてこれからのモノづくりのコンセプトが適用されていると考えています。
米国空軍のWebサイトの以下の記事から技術的な視点でB-21 Raiderを紹介します。
B-21 Raiderの位置づけ
B-21 Raiderは、これからの米国空軍の戦略爆撃機部隊の骨幹となります。
現在の米国の戦略爆撃機は、B-1BとB-2とB-52Hの3機種があります。これらを徐々に、B-21とB-52Hの2機種に置き換えていくため、B-21 RaiderはB-2の後継機というだけではなく、高性能かつ適応性の高い最新鋭機として設計されています。
1988年に初号機が公開されたB-2から、実に30年越しの新型の戦略爆撃機です。
現在では、米国空軍を中心とした米国軍だけでなく、同盟国なども含めたマルチドメイン軍として対応できることがB-21 Raiderには求められています。
設計要件からみたB-21 Raider
B-21 Raiderの設計要件(design requirements)から、次の様なことが求められています。
- 通常弾と核弾頭を混載できる
- 長距離
- 高生存率
- ステルス爆撃機
さらに、戦略的な要求(統合抑止力の発揮)から、
- ステルス性と対応できる任務への柔軟性
を発揮するために必要な能力が設計に加えられています。
開発状況と初飛行予定
2022年12月2日に公開されたB-21 Raiderは、現在生産中の6機中の1機です。
生産中の6機は試験機ですが、同じ生産ラインで同じツール、プロセス、技術者により製造されています。
この様な生産プロセスを適用することで、生産技術者(production engineers)や生産者(technicians)は、学んだことをそのままその後の生産機に反映させることができるため、複数の生産機における再現性、生産性や品質を重視することができます。
エンジニアとテクニシャン、日本で使われる場合の意味が違うことが多いので注意が必要です。テクニシャンはほとんど使われておらず、全てエンジニアと呼ばれているようです。
B-21 Raiderの初飛行については、予定日を決めてから間に合わせるのではなく、データとイベント(data and event)、おそらく、シミュレーションや試験結果から決定されます。
初飛行に間に合わせるという気持ちはあるのかもしれませんが、そうすることによるデメリットやリスクが大きいという判断があるのではないかと考えています。
B-21 Raiderの配備部隊
B-21 Raiderの就役日(米国空軍への引き渡し日)は不明ですが、
エルズワース空軍基地(Ellsworth AFB)への配備が決まっています。
他に、ホワイトマン空軍基地(Whiteman AFB)とダイス空軍基地(Dyess AFB)が選定されています。
B-21 Raiderの設計におけるプログラム・コスト・コントロール
F-22ラプターなどでも同様ですが、開発や運用・維持コストのコントロールも重要です。
このため、以下のバランスを取ることが必要です。
- 最先端の技術と能力を備えた爆撃機であること
- コストを抑えながら最大限の柔軟性を持たせること
このための対策として、
B-21 Raiderは、オープン・システム・アーキテクチャで設計することにより、将来的に迅速な機能統合を実現しようとしています。
B-21 Raiderの開発プログラムにおけるキーワードには、次の3つがあります。
- 革新的な製造技術(innovative manufacturing techniques)
- オープン・システム・アーキテクチャ(open systems architectures)
- アクティブ・マネジメント(active management)
これらを活用することで、新技術の成熟に合わせた機能統合やB-21 Raiderが将来の要求に対応できるようになるようです。
ぼんやりとしたイメージはできますが、言葉で説明するのが難しい概念だと考えています。
あえて例えれば、これを実現しているのはテスラのEVでしょうか。
B-21 RaiderとB-2との比較と現役の戦略爆撃機
B-21 Raiderの写真からB-2との比較と、現役の米国空軍の戦略爆撃機を写真で紹介します。
下図は、米国空軍のWebサイトで公開されているB-21 Raiderの写真です。
図2 B-21 Raider:2022年12月2日初公開(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、発表以降にUSAF(米国空軍)のWebサイトに追加されていた画像です。
空気取り入れ口の形状がB-2よりも薄くなっているように見えます。
図3 B-21 Raider:2022年12月2日初公開(その3)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図のB-2と比較すると、より薄く滑らかな機体形状となっているようです。
写真ではB-21 Raiderの機体形状が正しい形ではない(広角レンズのため?)ので推測ですが、両翼の空気取り入れ口が薄く、機体下部の膨らみも大きくなっている(搭載容量が増えた)ようです。
同じ条件での写真ではないので、比較するのに無理がありますが・・・。
図4 B-2:正面
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
現役の米国空軍の戦略爆撃機
B-21 Raiderは、B-2同様の無尾翼機の様です。
下図はB-2 Sprit、無尾翼機のステルス爆撃機です。
図5 B-2 Spritステルスボンバー:無尾翼の戦略爆撃機
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-52H Stratofortressはステルス機ではありませんが、今後もB-21 Raiderと共に運用されます。
図6 B-52H Stratofortress:成層圏の要塞ストラトフォートレス
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-1B Lancerは、可変翼の超音速爆撃機です。
戦略爆撃機ながら最高速度マッハ1.2です。
現在、B-1B Lancerの退役も進んでいます。以下は、米国空軍のWebサイトのB-1B退役とB-21に関するニュース記事へのリンクです。
AFGSC wraps up divestiture of 17 B-1B aircraft, moves toward B-21
図7 B-1B Lancer可変翼ステルスの長距離多目的超音速爆撃機
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
各戦略爆撃機の詳細は、以下の記事をご参照ください。
ノースロップ・グラマンのB-21レイダーに関する10の事実
以下、ノースロップ・グラマンのB-21レイダーに関する10の事実の中からいくつか意訳します。
ノースロップ・グラマン社のWebサイトでは動画が公開されています(以下のリンク先)。B-21 Raderの移動と共に車輪止め?を持った人が写っているのでその大きさがイメージしやすいと思います。
B-21 Raiderは、長い航続距離、高い生存性、ミッションに応じたペイロードの柔軟性(ミッションに応じた様々な積載物の選択が可能)を備えています。
これにより、世界中のあらゆる場所で精密な打撃(precision strikes)を行うために、厳しい防衛線を突破(penetrate)することができます。
B-21 Raiderは、最新の第6世代のステルス戦略爆撃機であり、
第6世代(Sixth Generation)
B-21 Raiderは、米国空軍の戦略爆撃機の次の進化形であり、30年以上にわたる実績による恩恵を受けています。
次世代のステルス技術、高度なネットワーキング機能、オープンシステムアーキテクチャを駆使して開発されており、最も複雑な任務を遂行する上で、重要な役割を果たすことになります。
ステルス(Stealth)
B-21 Raiderには、新しい製造技術や材料を採用し、継続的に技術を進化させています。
米国空軍のバックボーン(Backbone of the Fleet)
B-21 Raiderは、米国空軍の将来的な骨幹となります。
このため、データ、センサー、武器の高度な統合により、新たな能力と柔軟性を実現します。
B-21 Raiderの有効性の例には次の様な事ことがあります。
- 通常兵器と核兵器の両方を搭載可能
- スタンドオフ弾と直接攻撃弾の幅広い組み合わせが可能
デジタル爆撃機(A Digital Bomber)
B-21 Raiderは、はデジタル爆撃機です。
生産リスク軽減と最新のサステナビリティ(継続的持続性)を実現する技術
- アジャイルソフトウェア開発
- 高度な製造技術
- デジタルエンジニアリングツールの使用
フル・デジタル・モデルの利用など、設計・開発・製造のキーワードだと考えています。
クラウド技術
B-21 Raiderの地上システム・データのクラウド環境への移行を実証しました。
この実証には、B-21 の運用と維持をサポートする B-21 デジタル・ツイン(digital twin)を含む B-21 データの開発、配備、テストが含まれています。
クラウドベースのデジタル・インフラは、より低コストで維持可能かつ持続可能な航空機の実現に貢献します。
オープンアーキテクチャ
B-21 Raiderは、旧世代と異なりブロック・アップグレードを行わず、初日から迅速なアップグレードが可能なように設計されています。
これにより、新しい技術、能力、兵器は、機敏(agile)なソフトウェア・アップグレードと内蔵されたハードウェアの柔軟性によって、シームレスに組み込まれる予定です。
維持管理(Sustainment)コスト
B-21 Raiderプログラムの当初から、長期的な運用と維持のための手頃な価格は優先事項でした。
米国空軍との協力により、保守性をステルス性能と同様に重要な要件とし、より手頃で予測可能な運用と維持の成果を確実に推進しています。
グローバルリーチ(Global Reach)
B-21 Raiderは、米国の戦略的抑止戦略を支える極めて重要な機体です。
B-21 Raiderの設計では、高度な長距離精密打撃能力に加え、情報、監視、偵察、電子攻撃、マルチドメイン・ネットワーキング能力を提供する大規模システム群の主要コンポーネントとして設計されています。
まとめ
2022年12月2日(米国時間)、開発中のB-21 Raiderが一般公開されました。
B-21 Raiderは、米国空軍の爆撃機部隊の骨幹となるステルス性を備えた最新の長距離攻撃爆撃機です。
米国空軍のWebサイトで公開されたB-21 Raiderの情報を主に、以下の項目で説明しました。
- 2022年12月、B-21 Raider一般公開
- B-21 Raiderの位置づけ
- 設計要件からみたB-21 Raider
- 開発状況と初飛行予定
- B-21 Raiderの配備部隊
- B-21 Raiderの設計におけるプログラム・コスト・コントロール
- B-21 RaiderとB-2との比較と現役の戦略爆撃機
- 現役の米国空軍の戦略爆撃機
- ノースロップ・グラマンのB-21レイダーに関する10の事実
- 第6世代(Sixth Generation)
- ステルス(Stealth)
- 米国空軍のバックボーン(Backbone of the Fleet)
- デジタル爆撃機(A Digital Bomber)
- クラウド技術
- オープンアーキテクチャ
- 維持管理(Sustainment)コスト
- グローバルリーチ(Global Reach)