ここでは、バットの実験モード解析結果(伝達関数による簡易的に作成した振動モード形)を利用して、ホームランについて考察した例を以下の項目で説明します。
- バッティングについて考える(実現象を簡略化)
- バッティングの経験(体験)を思い出す
- 考察
それでは、ホームランについての仮説と検証を始めます。
ここでは、ホームラン(打球を遠くに飛ばす方法)について、振動モード形を使って考察してみます。
バッティングについて考える(実現象を簡略化)
バッティング、ピッチャーが投げたボールを打つこととは、どのような現象、動きなのか、ホームランはどのような場合に打てるのかについて考えてみます。
実際のバッティングは、ピッチャーが投げたボールをバッターが打つことなのですが、このままではホームランについて考察するための条件が多すぎます。
例えば、
- ピッチャーが投げるのは、直球、変化球、コース、スピード等様々
- バッターのスイングは、アッパースイング、ダウンスイング、水平などなど
そこで、ホームランとなる場合のバッティングをできるだけ簡略化します。ここでは、次のように考えています。
- ホームランは、静止したボールをバットで叩き、最も遠くに飛ばすこととする。
- 遠くに飛ばすには、バットがボールに接触(インパクト)する瞬間に、スイングにより発生した運動エネルギーを、バットを介して振動(エネルギーをロス)することなくボールに伝えればよいとする。
- バットを握ることによる影響(減衰が大きくなる等)は、無視する。
下図は、バッティングを簡略化したイメージです。
- ボールは静止している。
- スイングは同一平面内とする。
- ホームランは、スイングによるエネルギーが最も多くボールに伝わることとする。
バッティングの経験(体験)を思い出す
野球やソフトボールで、ホームランを打った(いい当たりだった)ときには、「バットにボールが当たった感じがしない」といったことを聞いたり、自ら体験したことがあるのではないでしょうか。
下図の「2.2.4 データ処理:簡易的な振動モード形状の作成」で作成した1次モードについて考えてみます。
振動モードの節で打つとホームラン?
バットの1次モードには、上図の4から5の間に振動モードの節があります。バットの1次の振動モードの節に力を加えた場合、1次モードは励起されない、つまり、バットに振動が発生しません。
したがって、バットの1次モードの節でボールをとらえることができれば、バットのスイングによる運動エネルギーが最大限ボールに伝わると考えることができます。
つまり、ホームランはバットの節で打っていると考えられ、「ホームランを打った時には打った感触がない。」という経験も説明できます。
振動モードの腹で打つとつまって手がしびれる?
1から2の間のグリップ上部は、1次の振動モードの腹があります。振動モードの腹をに力を加えると、そのモードが励起されます。つまり、バットが振動します。
「バットの根元にボールが当たると手がしびれる」という現象は、振動モード形から考えると、バットの腹で打った場合に発生すると考えられます。
「2.2.4 データ処理:簡易的な振動モード形状の作成」の2次モード、3次モードについても、1次モードとグリップ上部の同じような位置に各振動モードの節があることから、野球でつまった場合に手がしびれる経験とも一致していると考えられます。
考察
ここでは、バッティングという現象を簡略化し、バットの周波数応答関数から簡易的な振動モード形を作成し、考察することにより、次のことが分かりました。
- ホームランは、バットの節で打っていると考えることができる。打った感触がないという経験とも一致する。
- つまった場合は、バットの節で打っていると考えることができる。手がしびれる経験とも一致する。
以上、ホームランについて仮説を立て、実験で得た周波数応答関数から簡易的な振動モード形を作成し、仮説を検証しました。
まとめ
ここでは、ホームランについてバットの実験モード解析結果(伝達関数による簡易的に作成した振動モード形)を利用して考察した例を以下の項目で説明しました。
- バッティングについて考える(実現象を簡略化)
- バッティングの経験について考える
- 考察