1990年頃、車両の整備課程で学んでいた時の事です。
教官より、次の課題が出ました。
「ユニバーサルジョイントと等速ジョイントの違いをやさしく説明せよ」
やさしく説明する相手(対象者)は、現場のベテランの整備技術者です。当時の私の年齢よりも経験の長いベテランもいて、理論的なことや数式による説明ではなく、ベテラン技術者が感覚的に理解できるように説明して欲しいとの意図があったようです。
1990年代、インターネットと言ってもNTTの回線はISDNやADSL、メーリングリストやニフティのフォーラムが主流だった頃の思い出の1つです。
ユニバーサルジョイントとは
ユニバーサルジョイントがの使用例には、
- 自動車のプロペラシャフトやハンドルポスト
- ラチェットレンチ(ソケットレンチ)につけて斜めでボルトやナットを締める工具
などがあります。
下図は、ユニバーサルジョイントの1例です。
左側の軸を入力軸とすると、中間の軸を介して、右側の出力軸に回転が伝わります。
この時、入力軸と中間軸、中間軸と出力軸とのなす角度が同一である場合に、入力軸と中間軸の角速度(回転速度)が一致し等速で回転します。
図1 ユニバーサルジョイント(正しい接続例)
この様に、プロペラシャフトやハンドルポストの様に、回転軸の位置をずらしたい場合に使われています。
一方、ユニバーサルジョイントを図2のように接続した場合には、入力軸と中間軸、中間軸と出力軸とのなす角度が同一な場合でも、出力軸の回転速度は、入力軸の回転速度と90度位相がずれて回転することになります。
つまり、回転速度が同一ではなく、回転に伴う変動が生じることになり、ユニバーサルジョイントや軸に負荷がかかり、壊れる原因となってしまいます。
図2 ユニバーサルジョイント(誤った接続例)
ユニバーサルジョイントについての課題と回答例
ユニバーサルジョイントの使い方(取り付け方)により、出力軸が入力時と等速で回転したり、しなかったりすることを説明してきました。
ここで、記事冒頭のユニバーサルジョイントの課題を振り返ります。
教官から出された課題は、次の通りです。
「ユニバーサルジョイントと等速ジョイントの違いをやさしく説明せよ」
説明する相手(対象者)は、
- 現場のベテランの整備技術者
- 全くの初心者(同年代の文系)
でしたが、当時の私の年齢よりも実務(整備)経験の長いベテランも含まれ、理論的なことや数式による説明ではなく、感覚的に理解できるように説明して欲しいとの意図があったようです。
等速ジョイントについては、
「入力軸と出力軸とが等速で回転するジョイントのことで、構造的に等速になるように設計されている。」
という回答として、
「ユニバーサルジョイントを介すと、なぜ回転数が変わるのか?」
という問いに置き換えます。
言葉で説明するとややこしいので、下図を使い説明します。
下図は、ユニバーサルジョイントの回転軸を簡略化したイメージ図です。
図3 ユニバーサルジョイントの回転軸のイメージ
上図左側の軸(入力軸)は水平方向の軸です。
ユニバーサルジョイントを接続して、入力軸を右下方に傾けます。
上図において、
- 入力軸の断面は円形
- ユニバーサルジョイントを介すと、軸の断面は上図の青い楕円形
になります。
つまり、入力軸を一定速度で回転させた場合、ユニバーサルジョイントを介して右下方に傾けると楕円状に回転することになります。つまり、回転速度が変化することになります。
ユニバーサルジョイントによる傾きを、円柱の断面を斜めに切断した図に置き換えています。
入力軸と中間軸、中間軸と出力軸とのなす角度を同一にした場合には、左側の1個目のユニバーサルジョイントで生じた回転速度の変化を、右側の2個目のユニバーサルジョイントで打ち消すことになります。
つまり、1個目のユニバーサルジョイントによる回転の変化が、2個目のユニバーサルジョイントによりちょうど逆の変化と打ち消しあうため、入力軸と出力軸との回転速度が一致することになります。
当時は、この内容で伝わったのですが、今の時代ではどうなんでしょうか?
参考:ユニバーサルジョイント
ユニバーサルジョイントがどんなものか知りたい場合には、株式会社 三好キカイ様のWebサイトが分かりやすかったので紹介します。
下図の「製品紹介>設計及び取り扱い説明(青枠の部分)」です。
※下図にリンクを貼っています。
まとめ
ふと、1990年頃、整備課程の学生だった頃に、ユニバーサルジョイントが等速で回転する理由について説明するという課題のことを思い出し、まとめてみました。
立体的に考える力、イメージ力があまりないことに気づいたのもこの頃のような気もします。
ここでは、ユニバーサルジョイントについて、以下の項目でまとめました。
- ユニバーサルジョイントとは
- ユニバーサルジョイントについての課題と回答例
- 参考:ユニバーサルジョイント