振動や騒音というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?
騒音であれば、自動車や航空機などの乗り物の騒音、工場(今の工場はかなり静かになっていますが)や工事現場などがあります。
一方で、振動の例と言われると、地震を除くと他に思いつくものがないかもしれません。
ここでは、身近にある振動、振動現象の例と、音と振動の関係についても説明します。
なお、身近にある振動対策や振動問題における実験とシミュレーションについては、以下の記事をご参照ください。
スポーツと振動:スイートスポット(sweet spot)
スポーツと振動の例をいくつか列挙します。
- 野球
- ホームランは、手に打った感触が残らなず、澄んだ打音。
- つまって、ボテボテの内野ゴロの時には手がしびれる、鈍い打音。
- テニス
- スマッシュが決まった時には、野球同様手に感触はなく、スパーンといったイメージ。
- フレームで打ってしまった時には、手がしびれるというか痛いほど。
- ゴルフ
- ドライバーでナイスショットは、手ごたえはなくきれいな打音
- アイアンでダフルと、手がしびれる
といったことを体験したり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。
野球のホームランやつまったときのシビレについて、振動解析の1つ実験モード解析について、以下の記事にまとめています。
家電製品:回るもの(モーター)が付いている
回るものつまりモーターがついていると、モーターの回転音やうなりが上げられます。
- エアコン
- 今のエアコンはぶいぶんと静かになりましたが、急冷時や風量を強くすると部屋の中では風切り音、室外機のコンプレッサ音も気になります。
- 洗濯機
- 昔の二槽式の洗濯機は分かりやすかったのですが、脱水をかけると少しうるさくなりますが、ある程度脱水槽回転が速くなると静かになりました。脱水が始まり脱水槽の回転1次の共振に近づくと音と振動が増大し、共振を超えて静かになったと考えることができます。
- 昔の二槽式の洗濯機の脱水側で洗濯物が偏っているとびっくりするような音がでました。今の全自動洗濯機では、洗濯水を利用してドラムの振動を抑えているものもあります。
- 掃除機(モーターや吸い込み音)や冷蔵庫(コンプレッサ音)
- 冷蔵庫のコンプレッサ音は、庫内温度が上昇すると冷却が始まりコンプレッサが動き出しブーンという音がする。音がしているということは、どこかが振動しているということになります。
デジタル家電:部品が鳴く
家電製品にもモーターがついています。
- デジタルビデオカメラのズームレンズ
- 高速ズームレンズは、レンズが高速に動くということで、レンズ駆動用のモータも高速に動作します。マイクの感度が高く小さい音まで拾うため、デジカメに内蔵されているズームレンズの駆動音が出ないように、拾わないように設計されています。
- デジカメのシャッター音
- デジカメの場合、特に一眼レフタイプでは、シャッター音を聴かせる音としてチューニングしているという話を聞いたことがあります。
- 大画面で薄くなった液晶TV
- コンデンサなどの電子部品の音が問題になることがあるそうです。TVを見ていないときに聞こえてくるジーといった音です。高級オーディオでも対策されているそうです。
OA製品:回るものが多い
会社で使われているOA製品にも音や振動はあります。業務用ということで高速化されているので、家庭用とは違った対策がされているそうです。
- 複合機の印刷やスキャン時の駆動音や振動
- パソコンのハードディスクの振動や冷却ファンの音
- パソコン用プリンタであれば、家庭用のインクジェットプリンタは、印刷時うるさいですね。
高層ビルや長大橋
高層ビルや長大橋は、自然による揺れが分かりやすいかと思います。
- 建築物、建造物
- 風で揺れる。地震で揺れる。
- 高層ビルやタワー
- 例えば、横浜のランドマークタワー。高層階は付加価値が高いため、展望台や眺めの良いレストラン、ホテルになっています。高層になるほど、風の影響を受けて大きく揺れるため、振動制御の技術が使われています。
- 長大橋
- 例えば、瀬戸大橋などの長大橋は、建設中の制振、風などによる揺れで壊れるのを防ぐためにも橋脚に振動制御の技術が使われています。
乗り物:陸、海、空
乗り物にも、電車、新幹線、飛行機、ヘリコプター、客船などいろいろあります。
乗り物に搭載されている、エンジンやモーターは動力として必須ですが、同時に振動源や騒音源でもあります。
乗り物の振動や騒音対策は、用途により様々な要求があります。
例えば自動車の場合、
- F1やラリーのようなレースでは、静かであるより高出力
- 乗用車、タクシー、バスのような移動手段としては、燃費や乗り心地
- スポーツカーであれば、運転を楽しめるようエンジンを聴かせるとか
- トラック、トレーラーのような輸送手段では、騒音や長時間運転のための対策
といったように、同じような振動や騒音でも何を優先するかが変わってきます。
家庭での異音体験
- シャワーホースの異音(ビビリ音)
突然、浴室のシャワーからビビリ?音が出るようになりました。シャワーの水量を増減させても変化がありません。
原因は何だろうかと考えながら、最近何か変わったことはないかと思い返しているうちに半年前にシャワーホースを交換していたことに気づきました。
早速確認したところシャワーホースを水栓に接続するナットが緩んでいましたので増し締めしたところ、異音は出なくなりました。
そう言えばシャワーホース交換の際、水栓用のスパナが見つからずプライヤーで締めたことを思い出しました。ナットに合った工具は重要です。
- エアコンの異音(ポコポコ音)
2020年の夏、エアコンのスイッチを入れて2時間ほどするとポコポコと眠るにはうるさい音がすることがありました。
最初の2回は、エアコンの風量を変更したら異音が消えましたが、3回目は効果がなく、キッチンの換気扇を止めたら異音が消えました。
原因と対策についてまとめています。
目立つ振動、目立たない振動
振動の見方を変えてみると、目立つ振動と目立たない振動があります。
- 目立つ振動
- モータなどの回転機器を備える製品は、固有振動と一致すると共振現象が起こり、破損することもあります。
- 見落としがちな振動
- 共振の他にも、加振状態が続いた場合(繰り返し荷重)に、製品の特定箇所に力(応力)が集中して、疲労破壊を起こすこともあります。
- 24時間稼働している施設から出ている低い周波数の音や振動が近隣住民の健康被害の原因と言う場合もあるそうです。
振動解析や応力解析には、FEM(有限要素法)によるシミュレーションも有効です。振動解析の1つ固有値解析(モード解析)については、以下の記事で紹介しています。
振動と騒音の関係
騒音がある、音が出ているということは、どこかが振動していることでもあります。
つまり、音と振動との関係は非常に深い関係にあるのですが、その関係性は必ずしも分かりやすいものばかりではありません。
例えば、騒音を発見した場合には、
- 騒音の特定
- 騒音や振動の解析
- 対策
を行います。
ここから先は、今でもなかなか難しいのが現実ではないしょうか。
- 振動と騒音の相関
- 設計への反映(類似の問題が発生しないような設計をする)
振動・騒音と対策のトレードオフ
振動・騒音の対策にはコストが必要なため、様々なトレードオフがなされています。
例えば、乗用車エアコンの騒音対策をする場合、
- 高級車(コストをかけても対策する)
- 対策(遮音材、吸音材)をして、付加価値を上げる。
- 普通車(コスト増は基本NG)
- 例えば防振材を付加することはコスト増になるため部品側で対策する。
まとめ
ここでは、身近にある振動・騒音について、以下の項目について説明しました。
- スポーツと振動:スイートスポット
- 家電製品:回るもの(モーター)が付いている
- デジタル家電:部品が鳴く
- OA製品:回るものが多い
- 高層ビルや長大橋
- 乗り物:陸、海、空
- 家庭での異音体験
- 目立つ振動、目立たない振動
- 振動と騒音の関係
- 振動・騒音と対策のトレードオフ