航空機関連のWebサイト「博士による写真で見る軍用機と関連技術」を立ち上げました。
F-15EXイーグルIIについては、以下もご参照ください。
F-15イーグル、日本での初号機納入は1981年、約40年のライフサイクルとは驚きです。
2020年7月、F-15EXの導入契約が米空軍及び航空自衛隊でも結ばれましたが、F-15EX導入はなくなっているようです(2022年11月現在も、正直なところ正確な情報がないのでよく分かりません。)。
映画トップガンの2作目が2021年に公開延期となっていますが2022年公開となりました。1作目の主役機はF-14トムキャット、今回はF-18スーパーホーネットですが、どちらも機能美あふれるカッコよさがあります。
さて、F-15イーグルは、ボーイング社の戦闘機です。これまでにも近代化改修が行われていることは知っていたものの、F-15EXとしてこれからも使われることに驚き、ボーイング社などの情報を元にまとめました。
2022年2月現在、相変わらず予算については厳しいような情報もあるようですが、運用試験は順調そうです。
2021年2月、ボーイング社からF-15EXの初飛行成功のニュース
2021年3月、米国空軍F-15EX初号機受領
2021年4月、米国空軍F-15EXイーグルII、2号機受領
2022年1月、初の実弾AIM-120D空対空ミサイル発射試験成功
2022年7月、試験中のF-15EXイーグルII~EGLIN AFB Webより
2023年4月、F-15EXの配備先が決まったようです。
F-15EXイーグルIIについては、以下のカテゴリにまとめています。
F-15の開発開始からF-15EX導入
兵器(自衛隊では装備品と呼ばれる)の寿命、ライフサイクルは自衛隊ではなくても長いものですが、F-15イーグルは、初飛行からおよそ半世紀を経て、今なお現役の戦闘機としてリニューアル(近代化)されるとは驚きました。
写真1 F-15イーグル
出典:航空自衛隊ホームページ(ホーム > 主要装備 > F-15J/DJ > 写真ダウンロード)
F-15は、米マグネダル・ダグラス社(現ボーイング社)が、1976年に開発を始め、航空自衛隊では1981年から導入を始めています。
2020年7月ボーイング社と三菱重工業が、日本では、航空自衛隊のF-15J戦闘機の近代化改修としてF-15EXの契約を結んだとの発表がありました。
2021年3月、米国空軍が初号機を受領しました。
写真2 F-15EX
引用先:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>から。
上記サイトで写真をダウンロードすると拡張子が「*.jfif」となります。JPEGの標準形式の1つのようです。
ちなみに、ボーイング社のF-15EXのキャッチコピーは、次の通りです。
More Capability. More Capacity. More Savings.
乱暴な意訳ですが、次の様なイメージでしょうか?
F-15EXを導入すると、
- F-15の能力を高め
- 搭載容量を増やし
- ライフサイクルコストを抑制できる
F-15EX初号機の初飛行の写真を以下に示します。
私には、外観のどこが違うのか、変わっているのか分かりません。
図3 F-15EX初号機の初飛行(その1)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図4 F-15EX初号機の初飛行(その2)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
米空軍のF-15EX導入について
2020年7月に米空軍とボーイング社とでF-15EXの最初のロット8機の契約が結ばれました。
以下、上記の記事を意訳してみます。
なお、以下の内容は上記記事の正確な和訳ではありません。私が読み取った内容なのでご注意ください。
F-15EXの契約内容
F-15EXの契約には、戦闘機だけではなく、飛ばすための全てが含まれています。
- 設計、開発、統合(インテグレーション)、製造、試験、検証、認証、出荷、保守と改修
- スペアパーツ、サポート機器、トレーニング資料、技術データ、テクニカルサポートを含む。
F-15EXで交換される対象と計画については、
- 最も旧型のF-15C/DがF-15EXに更新されます。
- 2020年度予算では、8機のF-15EXが承認されています。
- 21年度予算では12機が要求されてており、5年間で合計76機のF-15EXが導入される予定です。
F-15EX導入メリット
F-15EX導入メリットは、
- 老朽化したF-15C/Dを更新し、武器の搭載量を増やす最も手頃ですぐに実現できる方法です。
- 製造ラインから出る(ラインオフ、工場から出荷される)とすぐに戦う準備ができています。(信頼性が高いという意味だと思います。)
- 2人乗りの戦闘機で、豊富な最新の武器を搭載できます。
- パイロットと整備員は、最小限の移行トレーニングと追加人員により、設備変更をほぼ必要とせずに任務を継続できます。
といった様に、高い完成度や信頼性をもつようです。
F-15EXと旧型のF-15との最も大きな違い
旧型とF-15EXとの最も大きな違いは、Open Mission Systems(OMS)アーキテクチャ(基本概念)にあるようです。
OMSアーキテクチャは、最新の航空機技術の迅速な投入を実現するもので、F-15EXには、次の様な機能も搭載されます。
- フライバイワイヤーのフライトコントロール
- 新しい電子戦システム
- 高度なコックピットシステム
- 旧型のF-15で利用可能な最新のミッションシステムとソフトウェア機能
フライワイバイヤーは、F-15のエンジンと最新の技術を詰め込んだF-16で実現されているものですが、F-15は保守的、正統派の設計・開発となっているためF-15EXを待たねばならなかったのかもしれません。
旧型とF-15と最新のF-15EXの外観上の違いはほとんどないか、あっても非常に小さい変更のようですが、機体含め中身は別物のようです。
参考:Open Mission Systems(OMS)とは
Open Mission Systemsの目標は、
- 手頃な価格の技術的な更新と導入、
- 簡素化されたミッションシステムの統合、
- サービスの再利用と相互運用性、
- ライフサイクル全体での競争
を可能にする、
- 非独占的なミッションシステムアーキテクチャ標準に関する業界の合意
を築くことです。
OMSの定義は、以下のページをご参照ください。
OMSによるF-15EXのメリットには、次の様な点があります。
- F-15EXのデジタルバックボーン、オープンミッションシステム、および寛大なペイロード容量は、将来のネット対応戦闘のビジョンによく適合する。
- システムを継続的にアップグレードし、システムが共同軍全体でどのようにデータを共有するかは、高度な脅威に対抗するために重要であり、F-15EXはアップグレードできるように設計されている。
F-15イーグルとは
順番が逆な気がしないでもありませんが、F-15イーグルについて簡単にまとめてみます。
- アメリカ合衆国のマクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)の制空戦闘機
- 航空自衛隊の主力戦闘機、2020年の今約200機ある。
初飛行から半世紀、今でも現役で飛んでいる理由は、
- 基本設計が優れている。
- レーダーなどの電子機器や搭載装備の近代化が進められてきた。
- 能力的にバランスのとれた信頼性の高い戦闘機
だからだと考えています。
以下、ボーイング社のWebサイトからF-15の特長を列挙します。
- F-15イーグルは高速・高機動、および、長射程空対空ミサイルの運用能力と、高性能レーダーを持つ双発の大型制空戦闘機です。
- マッハ2を超える高速性・加速力と高い旋回能力、長い航続距離、多くの兵装を搭載できます。
- 最先端の統合アビオニクスとデータリンクにより、他機種等と情報を共有化して、優れた情報認識を行うネットワークセントリック(情報を情報ネットワークにより伝達・共有し、意思決定の迅速化と運用を効率的に行うこと)なオペレーションが可能な機体です。
- F-15の優れた機動性と加速力は、大きな主翼による低い翼面荷重と、機体重量より高い双発エンジンが支えることで、高い旋回能力と速度が失われにくい、強力な格闘戦闘能力をも有しています。
- ヘッドアップ ディスプレイ 、高性能レーダー、慣性航法装置、データリンクにより、早期警戒管制機(AWACS)と連携して高度な迎撃能力を発揮します。
- 敵味方識別装置、レーダー警戒受信機、電子戦警戒装置、電子妨害装置等が自動統合化された電子戦システムも装備しています。
兵装(武装)に関しては、次のように多くの種類に対応しています。
- AIM-120発展型中距離空対空ミサイル
- AIM-9L/M短距離 空対空ミサイル
- 20ミリ ガトリング機関砲
- 日本製のミサイル
F-15には単座型と複座型があります。
- F-15C(航空自衛隊は、F-15J)は単座型
- F-15D(航空自衛隊は、F- 15DJ)は複座型
以下は、F-15が高額になる理由もでありますが、実戦性能を最優先する使用者側としては重要です。
- 余裕を持たせた設計により、近代化改修が図られ、米空軍をはじめ、日本を含む世界の空軍で第一線任務に運用されています。
- 派生型であるF-15Eストライク・イーグルは、米空軍だけでなく海外でも採用され、現在も生産を続けています。
F-15の機体仕様
F-15の主な使用を列挙します。
- 乗員:1名または2名(単座、複座)
- 全幅:13m
- 全長:19.44m
- 全高:5.6m
- 最高速度:マッハ約2.5
- 航続距離
- フェリー:3,450km
- 落下型増槽:4,630km以上
- 密着型増槽(CFT):5,750km以上
- エンジン(2基)
- P&W製100-PW-100,200
- アフターバーナー付ターボファンエンジン
- 推力:約10,600kg (1基当たり)
ライフサイクルについて
戦闘機(航空機全般に共通かと思います)のライフサイクルについて考える際、次の様なことに考慮が必要です。
- 改修(性能向上)は、機体の外形、重量への影響を最小限にする
- 基本構造の変更や再設計は、新規設計よりもコスト増になることもある。
- エンジン換装は、開発初期段階で考慮しておかないと機体設計がムダになる。
- 機体の強度や運動制御にも大きな影響がある。
- コストパフォーマンスは、機体だけの話ではない。
- パイロットはもちろんのこと、飛ばすためのメンテナンス要員、メンテナンス設備、予備部品も必須。
- 新旧の機体が混在することによる影響
- 旧型を維持するより改修型導入の方がコストパフォーマンスがよいこともある。
ライフサイクルマネジメントの思い出
2000年前後の頃の話だと思うのですが、CALSというものがありました。米軍の兵站(ロジスティック)の考え方の1つで、設計、製造、保守といったライフサイクル全般にわたる情報を共有する考え方だったような覚えがありますが、記憶があいまいです。
CALS:Continuous Acquisition and Life-cycle Support
このCALSからどう理解すると出てくるアイディアなのかは当時も今も分からないのですが、陸上装備(例えば戦車)のメンテナンスマニュアルを電子化してPCに入れて使うという話を聞いたことがあります。
戦車のメンテナンスマニュアルが、電子装備化などの影響もありもはや百科事典のようなボリュームになりつつあったようなのですが、電子化してPCに入れたところで、次の様な疑問が浮かびました。
- 戦車の中でPCをどうやって広げてみるの?
- 工具を手にして作業するだけでもすでに十分狭いし
- 2人1組でやればできそうだけれど、メンテナンス要員も少人数化の流れに逆行していない?
その後2010年頃かと思いますが、VR(バーチャルリアリティ)が使えるようになってくると、同じような提案を聞き、
- 運転(操縦訓練、操作訓練)やメンテナンスの教育では使えるかも。
と思ったものです。
まとめ
F-15は日本での初号機納入が1981年、これまでにも近代化改修がされてきましたが、2020年7月にF-15EXの導入が米空軍、航空自衛隊でも決まりました。
驚きのライフサイクルです。ここでは、以下の項目でまとめました。
- F-15の開発開始からF-15EX導入
- 米空軍のF-15 EX導入について
- F-15EXの契約内容
- F-15EX導入メリット
- F-15EXと旧型のF-15との最も大きな違い
- 参考:Open Mission Systems(OMS)とは
- F-15とは
- F-15の機体仕様
- ライフサイクルについて
- ライフサイクルマネジメントの思い出